「魔法にかかるまで、あと5分」 フィリップ・ドゥクフレ / カンパニーDCA 『CONTACT-コンタクト』公演手記

 2016年10月22日・23日、りゅーとぴあ劇場は迷宮と化した。フィリップ・ドゥクフレという男の仕業だ。80年代のヌーヴェルダンスの黎明期にデビューし、フランス革命200週年記念祭パレード、アルベールヴィル冬季オリンピックのセレモニー、パリのキャバレーCRAZY HORSEの演出などを手掛ける、フランスが誇る才能だ。彼の最新作『CONTACT-コンタクト』が新潟にやって来たのだ。

 バウハウスを想起させる幾何学に制御された空間。そこに躍動する肌の色の違うダンサー。Nosfellが奏でる無国籍でエモーショナルな音楽。ゲーテの『ファウスト』をモチーフにした現代人のささやかな欲望のストーリー。ドゥクフレ自身が愛したアメリカンミュージカルへのオマージュ。万華鏡のような映像美。全てが完成された、極上のイリュージョン・スペクタクル。きっと忘れられないであろう、煌めく時間。カーテンコールでの舞台と客席の一体感、それは熱かった!

 私がこの作品を通じて伝えたかったこと、それは「文化とは多様性に対する寛容力である」ということでした。彼がパリ近郊の街サン=ドニにスタジオを構えたのは、80年代の都市の荒廃政策にアートが活用されたという背景がありました。そこで彼が実践して来たのは、アラブやスラブなどの異文化と、古き良きフランスの文化との融合でした。そして、サン=ドニは2015年同時多発テロの標的となりました。

 ひとりのアーティストが世界を俯瞰し、人間にとって大切な何かを私たちに見せてくれる。

 魔法にかかるまで、あと5分。

2017/3/7


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