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第二次予選 2日目 (ライブ映像後追い感想レポ)

(トップ画像提供:ピティナ)

大変熱く、聴きごたえある第二次予選でした。既に結果は出ていますが、26人のコンテスタンツの素晴らしい演奏はぜひともアーカイブで何度も見ていただければと思います。
コンテスタンツに敬意と感謝を込めて、非常に個人的な感想になりますがライブ映像を追いかける形で、第二次予選2日目のレポートとしてまとめてみました。


♦︎演奏番号15番 柏 匡之輔さん

<ショパン/エチュード ハ長調 Op.10-1〉背後からのカメラで見ると迫力満点。柏さんの右手がスケールを築きながら上下に走り抜ける様に圧倒されます。<リスト/ピアノソナタ ロ短調 S.178 >は疾走感ある出だしから惹きつけられました。轟くような動機からの音の奔流、緩徐パートでは美しい弱音のメロディが明確に伝わってきます。優しく労わるようなメロディは熱を帯び次第にほとばしるカンタービレに。この壮大な物語を柏さんは端正かつエネルギッシュに表現しました。

☆終演後インタビュー


♦︎演奏番号16番 鈴木 愛美さん

<J.S.バッハ/平均律クラヴィーア曲集第2巻 第22番 変ロ短調 BWV891>痛みを感じるプレリュード、悩みをモザイクのように重ねていくようなフーガからの救いに感動しました。そこからの<ショパン/エチュード 変ト長調 Op.10-5 「黒鍵」 >、その鮮やかさに目の前がパッと開けた気持ちに。謎めいた不思議な香り漂う<シマノフスキ/メトープ Op.29 より 第1曲「セイレーンの島」>で表されるのは船乗りを惑わす魔女。ラストは<ブラームス/8つの小品 Op.76 より 第1、2、5、8番> 多彩に変わる場面を鈴木さんは万華鏡のように映し出していました。

☆終演後インタビュー


♦︎演奏番号17番 稲積 陽菜さん

<J.S.バッハ /トッカータ ニ長調 BWV912>遠くに見える明かりをひたすら求めるような清明な音色と、強い力に満ちたコーダが心に残りました。< ショパン/エチュード 変ト長調 Op.10-5 「黒鍵」>は稲積さんの鮮やかな手の動きが素敵です。情感たっぷりな <ショパン/舟歌 嬰ヘ長調 Op.60 ><ドビュッシー/12のエチュード より 第11番「組み合わされたアルペジオのために」>では、稲積さんが白いキャンバスに刷毛をさっと走らせ様々な色を次々と描いたかのように、切れ目なく色が湧いてくるカラフルな演奏でした。

☆終演後インタビュー


♦︎演奏番号18番 髙尾 真菜さん

<ラモー/新クラヴサン組曲集第1番(第4組曲) より 「サラバンド」> で高尾さんが奏でる装飾音の美しさにハッとしました。その雰囲気を引き継いだような<ドビュッシー/映像 第1集 >も水滴が落ちて波紋が水面に広がるような美しさ。高尾さんの繊細なタッチがその波紋を大きく揺るがせたり、凪の静けさを見せたり。さざなみはそのまま<ショパン/エチュード 嬰ハ短調Op.10-4> で大きな波へと変わります。<スクリャービン/ピアノソナタ第2番 嬰ト短調 Op.19 「幻想ソナタ」>の静けさは、最初のラモーやドビュッシーの清涼な美しさを思わせます。時代を超えた繋がりを感じさせるプログラムでした。

☆終演後インタビュー


♦︎演奏番号19番 加藤 亜咲美さん

あるピアニストが「春を思わせる」と評したアルマンドから始まる<J.S.バッハ/フランス組曲第5番 ト長調 BWV.816> は純真で素朴な明るさに満ちていました。個人的には特に第5曲ブーレや終曲ジーグの可憐さに胸キュンでした。優雅な<ショパン/エチュード 変ニ長調 Op.25-8>を経ての<バルトーク/ピアノソナタ Sz.80>はワイルドでダイナミックな演奏。最初のフランス組曲も舞曲、このバルトークも民族音楽や舞曲を取り入れた作品。そんな繋がりが感じられるプログラムが素敵です。

☆終演後インタビュー


♦︎演奏番号20番 三井 柚乃さん

三井さんがインタビューで「知っていただきたい」と仰っていたウクライナの作曲家<ボルトキエヴィチ/クリミアのスケッチ Op.8 より 第1番「ウチュ=コシュの岩山」 >からスタート。感傷的な場面から雄大な場面までドラマティックに展開する素敵な演奏でした。<ショパン/エチュード 変ホ長調 Op.10-11 >は岩山の間のお花畑のよう。<ベートーヴェン=リスト/連作歌曲「遥かなる恋人に」 >は個人的に最近コンサートで聴いたばかりなので親しみが湧き心に響きました。<J.S.バッハ=ブゾーニ/無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番 より 「シャコンヌ」 ニ短調> は重厚感ある感動的なラストです。

☆終演後インタビュー


♦︎演奏番号21番 国本 奈々さん

<J.S.バッハ/平均律クラヴィーア曲集第1巻 第4番 嬰ハ短調 BWV849>祈りの込められた静謐な演奏。< ショパン/エチュード イ短調 Op.25-11 「木枯らし」>のスケールは迫力に満ちていました。<チャイコフスキー=プレトニョフ/演奏会用組曲「くるみ割り人形」 Op.71>有名なフレーズがたくさん出てくるバレエ音楽は聴いている方も大変楽しい! 幼い頃にバレエも習っていたという国本さんらしい選曲。特に昔踊りたいと思っていたという「金平糖の踊り」を弾いている時の国本さんはとても楽しそうに見えました。

☆終演後インタビュー


♦︎演奏番号24番 嘉屋 翔太さん

<スカルラッティ/ソナタ ニ長調 K.119>嘉屋さんの素晴らしい同音連打や手を交差してのトレモロなど耳目両面で楽しい曲。<ドビュッシー/12のエチュード より 第5番「オクターヴのための」>は鍵盤いっぱいにオクターヴが上下に移動していくダイナミックな曲。華やかな<ショパン/エチュード 変イ長調 Op.10-10 >は余裕すら感じられました。<プロコフィエフ/ピアノソナタ第3番 イ短調 Op.28 「古い手帳から」>は思わず手に汗を握る迫力で魅せてくれます。<リスト/巡礼の年第1年「スイス」 S.160 より 「オーベルマンの谷」>の精神性に満ちた内容から感動的なラストまで目を離せない熱演でした。

☆終演後インタビュー


♦︎演奏番号23番 前川 愛実さん

<ショパン/バラード第4番 ヘ短調 Op.52 >という大曲からのスタート。私の推しはこの曲を「深緑色のイメージ」と仰ったのだが、前川さんの演奏を聞いていて、私はなぜか薄紅色の紙を一枚ずつ重ねていくようなイメージを思い浮かべていました。前川さんの<ショパン/エチュード イ短調 Op.25-11 「木枯らし」>は地の底から這い上がってくるような音とハラハラと舞い落ち続ける木の葉のような音の対比がとても美しかったです。< リスト/巡礼の年第2年「イタリア」 S.161 より 「ダンテを読んで -ソナタ風幻想曲」>はまさに疾風怒濤の力強さ、生きる喜びを感じさせてくれる演奏でした。ダイナミックに展開する3曲を大胆に組み合わせたプログラム、なかなか攻めていると思いませんか。

☆終演後インタビュー


♦︎演奏番号24番 橋本 崚平さん

<J.S.バッハ /平均律クラヴィーア曲集第1巻 第13番 嬰ヘ長調 BWV858>開始からすぐに訪れた静謐な時間。手の中に包み込んでおきたいほど清らな音に胸衝かれました。<ショパン/エチュード ホ短調 Op.25-5 >を演奏する時に橋本さんがうっすら幸せそうな笑顔だったのが印象に残りました。<スクリャービン/ピアノソナタ第4番 嬰ヘ長調 Op.30>はまるで夜の移動遊園地のような楽しさとワクワク感に満ちながらも気品が漂う橋本さんの演奏。<リスト/バラード第2番 ロ短調 S.171 >も見所聴き所が多いのですが、天国のような穏やかな世界と地獄のような混沌との対比や嵐のようなオクターヴの高速移動、連続スケールは凄いの一言です。

☆終演後インタビュー


♦︎演奏番号25番 平間 今日志郎さん

<ガルッピ/ピアノソナタ ハ長調 T.27 第1楽章>の可愛らしさ! この可愛らしいメロディを平間さんは口ずさみながら演奏。<シマノフスキ/変奏曲 変ロ短調 Op.3>は初めてお聴きしましたが、冷静と情熱の間にあるような変奏と平間さんの美音に心えぐられました。< ショパン/エチュード 変ト長調 Op.10-5 「黒鍵」>では手の動きに見入ってしまいました。柔らかなニュアンスからの展開で感動的な黒鍵でした。 <リスト/ハンガリー狂詩曲第2番 嬰ハ短調 S.244/2(ラフマニノフのカデンツァ付き)>テンポや強弱など現代的でカンタービレ! ぜひ手元の見えるカメラでカッコ良い手さばきを見ていただきたいです!

☆終演後インタビュー


♦︎演奏番号26番 神原 雅治さん

<ブラームス/4つのバラード Op.10>第一音から立ち上る世界観。胸の奥に壮大な世界への憧れを秘めているが、今はまだ窓辺で少し白んだ外をそっと眺めているような情景が脳内に浮かびます。重層的で思索に耽るような神原さんの演奏が美しく胸を打たれました。音が緊密に連携し合うような<ショパン/エチュード ハ長調 Op.10-7 >で高まる緊張は<バルトーク /ピアノソナタ Sz.80>に引き継がれます。神原さんのリズムの際立たせ方や絶妙なニュアンスに引き込まれました。プログラム全体も不思議な空気感に包まれていて、神原さんの魅力が生かされていますね。

☆終演後インタビュー


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これで二日間にわたる二次予選26人の演奏が全て終わりました。
既に三次に進んだコンテスタンツも発表されています。おめでとうございます!
26人のコンテスタンツの演奏はどの方も本当に素晴らしいものでした。特にプログラム全体にその方の個性が感じられ、個々の演奏はもちろんのこと、プログラムの意図や伝えたいことなどでも楽しませてくださいました。

二次予選で演奏された皆様、ありがとうございました。


☆二次予選2日目のアーカイブはこちら



☆三次予選プログラムと演奏順








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