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第11回演奏会 〜プログラムについて

当団にとって「吹奏楽」をプログラムとして取り入れるのは、昨年10月の軽井沢公演以来2回目ですが、ここまで本格的に「吹奏楽ステージ」として取り入れたのは初めてとなります。
今回の選曲の大きなコンセプトは、「吹奏楽は知っているが、管弦楽にはまだ馴染みのない子供たちに、”楽器を続けているといろいろな可能性が広がっている”ことを体感してもらいたい」という思想から来ています。
私自身も経験がありますが、普段から見知っている楽器なのに、演奏されるジャンルによって異なる個性が発揮されることに気づき、そこで改めて楽器への理解や愛が深まる瞬間があります。
とくに中学、高校は楽器との出会いの時期。しかし、別れが多いのも事実です。なので、なるべく自分が扱う楽器には思った以上の可能性が広がっていることを知っておいて欲しいという気持ちがあります。
今回は、その可能性の一部だけでも感じてもらいたいと思ってプログラムを組みました。例えば、"吹奏楽でよく見る楽器だけど、オーケストラの中だとどう活躍する?"など、いろいろな視点で楽しんでいただけると嬉しいです。

まずは、国内外の吹奏楽オリジナル曲の傑作から

そもそも日本における吹奏楽、あるいは吹奏楽部の人気は、世界的に見て突出していると言えるでしょう。ゆえに、日本人作曲家は意欲的に作品を発表していきますし、世界の有名な作曲家も日本と親交を持ちたびたび来日します。日本人作曲家にとって世に出るチャンスの一つが、毎年全日本吹奏楽連盟によって委嘱・選定される「コンクール課題曲」でしょう。3-4分という制約がある中で、これまでに多くの傑作が生み出されています。今回はその中でも最新である2021年度の課題曲を軸に、「吹奏楽ステージ」をお送りします。

開幕はアルフレッド・リード「春の猟犬」。リードといえば吹奏楽の大家で、「アルメニアン・ダンス」などでも有名な大作曲家です。スコア(総譜・指揮者用の楽譜)の冒頭には、作曲のきっかけとなったと言われている詩『キャドリンのアトランタ(Atalanta in Calydon)』の一節が書かれており、雪解けの中を颯爽と駆ける猟犬たちの様子を想起して作曲されたことがよくわかります。
続いて課題曲Ⅰ〜Ⅳの4曲を順に演奏します。コンクールでは、これらの中からどれか1曲+自由曲で計12分という枠の中で賞が争われます。今年もどれも素晴らしい曲ですが、注目はⅢの宮川彬良「僕らのインベンション」。作曲者は少し前にNHK教育の人気番組「クインテット」に出演していたので、演奏家としての知名度も高いですが、ミュージカル作品やドラマ、映画音楽を手掛ける作曲者としても非常に著名で、今回の作品もその粋が凝縮されています。

本人による解説動画も

「吹奏楽ステージ」の締め括りは、樽屋雅徳「マゼランの未知なる大陸への挑戦」。大航海時代をモチーフとした雄大な作品で、管楽器だけでなく、多くの打楽器、ハープ、ピアノなどが活躍します。いわゆる”樽屋作品”は吹奏楽界でも絶大な人気があり、多くの委嘱作品を含む人気曲が多数ありますので、他の曲も気になったらぜひ聴いてみてくださいね。

吹奏楽の方が演奏機会多い?ファリャの「三角帽子」

"三角帽子" と聞いて、「吹奏楽の曲でしょ?」と思われる方も少なくないのではないでしょうか。半世紀以上前から吹奏楽コンクールの定番曲として愛されており、今でも人気が衰えない作品の一つです。直近では2016年の全国大会で伊奈学園総合と習志野高校の2校が取り上げていました。
原曲はバレエのために作られた作品で、当初は小編成向けのオーケストレーションが、作曲者本人によって大編成向けに改編された、という経緯を持ちます。スペイン出身のファリャらしく、リズムに特徴のある、全体的に軽快な曲調となっています。今回は第2組曲と呼ばれる、バレエでいうと第2幕に該当する部分の「近所の人々の踊り」「粉屋の踊り」「終幕の踊り」を演奏します。もっぱら、吹奏楽では「終幕の踊り」がフォーカスされますが、今回はそこまでにつながるドラマも楽しんでいただければと思います。
(全3曲。演奏時間約20分)

オーケストラの定番曲、「チャイ5」

チャイコフスキー交響曲第5番、の略。オーケストラ業界ではもっぱらこの愛称で呼ばれます。チャイコフスキーといえば、一般に「白鳥の湖」、「くるみ割り人形」などのバレエ曲で有名ですが、交響曲も6つ残しており、特に第4、5、6番は代表曲として現在でも演奏機会が多い作品です。
叙情的でロマンチックな旋律を、煌びやかなオーケストレーションで表現しており、オーケストラの魅力を伝えるには持ってこいの曲だと思います。1楽章のA管クラリネット(通常の管より少し長い)のユニゾンにから始まるメロディが曲全体の重要なモチーフとなっており、あらゆる場面で登場します。2楽章冒頭のホルン・ソロは、ホルンの代名詞とも言える有名なメロディ。そのほか、弦楽器、管楽器、打楽器、いずれも見せ場が多い曲となっています。お気に入りのポイントをぜひ見つけてくださいね。
(全4楽章。演奏時間約50分)

(K.T.)


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