最近、空気質測定器で商業施設の空気を測定していたりするのですが、その結果として気になるのが『アルコール消毒』の影響。
アルコール(エタノール)の毒性については、一般的に酒等で経口摂取している人が多いこともあり、『空間中の蒸気程度であれば無害も同然』と思ってしまうところ。
そして、コロナがフェードアウトしつつある今でも、お約束としての『アルコール消毒』は多くの施設で行われ続けています。しかし、『マスク』とは異なり特に懸念されていません。
果たして大丈夫なのか?
なかなかこれと言った情報も無いのですが、今回参考になりそうな論文を見ましたのでご紹介します。
◆『揮発性有機化合物への曝露が少ないにもかかわらず、ネイル技術者における酸化ストレスおよびDNA損傷のマーカーの調節障害』
論文は以下です。
研究の対象はポーランドのネイルサロンです。
超ざっくりまとめると『曝露量が基準より大幅に低いのに健康被害はあるっぽいけど?大丈夫?』という感じです。
気になった箇所を抜粋引用します。
◆まとめと所感
論文中では『曝露量が少ない』とされていますが、これは『ポーランドのTLV』との比較において、ということです。
上記はエタノールに絞った場合、以下となっていました。
・空気中濃度、測定結果中央値:3.60 [mg/m^3]
・TLV(閾値限界値):1900 [mg/m^3]
TLV高すぎ!と思わなくもないですが、一体どのような基準で決まったのでしょうかね。理由はわかりませんが、世界的にこの程度の基準値のようです。
◇◇◇
論文中では、これだけの差があっても『ネイル技術者の酸化ストレスと DNA 損傷のバイオマーカーの調節異常の証拠を提供することができた。』としています。
また、健康被害として『皮膚、目、上気道粘膜の刺激、頭痛、筋骨格系および生殖器系障害、喘息』にも言及しています。
エタノール単体でどれほどの影響があるのかは不明ですが、気になるところです。
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ちなみに、ポーランドのネイルサロンの実績である『中央値:3.60』という数値は、個人的にとても高いものだと思います。
私がこれまで測定したHCHOがすべてエタノールだったと仮定しても、商業施設での最高値は『2.0』未満でした。
とはいえ、慢性曝露におけるリスクを考えた場合、安全かというと個人的にはどうにも怪しいと思っています。(妄想です。)
◆おわりに
コロナ騒動後、私たちは『アルコール消毒』の機会が圧倒的に増加しました。
たまにやる程度なら問題なさそうな気がしますが、今回の論文で示されたように『低い濃度でも慢性的な曝露が健康被害に繋がる』ということはあるのではないでしょうか?
もし酸化ストレスとDNA損傷が起きているとしても、それは直接的な健康被害を自覚出来るものではありません。そのようなものこそ、慎重な評価が必要だと思います。