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マスク着用は鼻腔のマイクロバイオームへ悪影響なのか?

どうもこんにちは。
マスクオタクです。

前回の記事でマウスウォッシュの使用が口腔内細菌叢のバランスを乱す可能性について書いた。

そして細菌叢について考えるなかで『マスク着用は鼻腔内細菌叢に悪影響ではなかろうか?』という疑問が湧いた。マスクはとにかく蒸れるからだ。

調べたところ悪影響とする論文が見つかったが、読んだ私の結論としては『保留(わからない)』という感じ。そのあたりを今回の記事でまとめておく。

なお、記事中で『細菌叢(マイクロバイオーム)』は『mb』と略している。


◆論文引用

取り上げるのは中国の研究。鼻腔mbのバランスが変化したのはマスクが原因であると推測している。

引用部は以下リンクから。2024.06.12 時点のもの。www.DeepL.com/Translator(無料版)で翻訳した。

Front Immunol. 2023; 14: 1266941.
Published online 2023 Oct 16. doi: 10.3389/fimmu.2023.1266941

中国・上海におけるCOVID-19パンデミック時の若年成人の鼻腔内微生物性状にマスクの長時間着用が変化した

要旨

背景
フェイスマスクは、多くの国でコロナウイルス感染症2019(COVID-19)の流行時によく見られるようになった。しかし、長時間のフェイスマスク着用が健常人の鼻腔微生物叢に及ぼす影響については十分に理解されていない。

研究方法
本研究では、COVID-19パンデミック前に募集した同じ学校のマスクを着用していない同級生172人と、長期間フェイスマスクを着用していた若年成人82人の鼻腔微生物叢を16SリボソームRNA遺伝子配列決定により比較した。2群間の鼻腔内細菌叢の多様性、組成、および機能を解析した。鼻腔内に定着している常在菌の有病率は、培養ベースの分析により決定した。

結果
長時間フェイスマスクを着用している人は、2018年からマスクを着用していない対照群と比較して、鼻腔内微生物の特徴と代謝機能が有意に異なることが観察された。具体的には、長時間のマスク着用者の鼻腔微生物叢は、ブドウ球菌、シュードアルテロモナス、コリネバクテリウムなどの存在量の増加を示した。一方、Bacteroides属、Faecalibacterium属、Agathobacter属を含むいくつかの属の存在量は減少していた。さらに、COVID-19の感染歴は鼻腔内細菌叢の構成に大きな影響を与えないことが観察された。さらに、培養に基づく解析から、マスク長期着用者の鼻腔では、黄色ブドウ球菌とコリネバクテリウム・アコレンスが増加し、表皮ブドウ球菌が減少していることが明らかになった。

結論
全体として、本研究は、長時間のフェイスマスク装着が鼻腔内細菌叢を有意に変化させることを示唆している。


◆所感

mbに変化が見られたのはそうなのだろうが条件で気になる点が多数ある。以下のような感じ。

・比較対象群はコロナ前のもの(過去データ)。
・年齢層に偏りがある。
・新型コロナ感染者を多く含む。
・ほぼすべてがワクチン接種者。

これらの懸念がありながらマスクが原因とするのは乱暴ではなかろうか。

◇◇◇

特に、研究期間である2023年1月くらいは中国でのゼロコロナ政策終了による大流行期で、当時現地の方のレポを読んだ限りでは『おそらく全員感染した』みたいな感じだったと記憶している。

マスク群には『58.54%(48/82人)のCOVID-19回復者』が含まれるが、少なくとも直近での感染者は除外するべきだろう。そのような配慮がされたのか不明だ。

ちなみに、コロナ感染によるmbへの影響は『なかった』としているが、もし大部分が感染していたとしたらその結果に不思議はない。

なお、『コロナ感染は鼻腔mbを変化させる』と示唆する論文は軽く調べたくらいで5つ見つかった。たとえば以下。

・SARS-CoV-2感染は上咽頭マイクロバイオームの年齢および性別による変化と関連する

やはり、この手の調査ではコロナ感染者を除外するのが大前提になるんじゃなかろうか。

◇◇◇

また、マスク群は『97.56%(80/82人)がCOVID-19不活性ワクチンを少なくとも2回接種していた』としているが、その影響は考慮されていないようだ。

以前の記事で『ワクチン接種による呼気VOC変化』を取り上げたが、ワクチンが鼻腔mbへ影響を与えている可能性があるかもしれない。mbが変われば代謝により排出されるVOCも変化するだろう。


◆おわりに

個人的に『マスクは鼻腔mbへ悪影響』という結論であっても不思議はないと推測している。マスク着用による以下の変化は明らかだろう。

・鼻腔内が高温高湿になる。
・自ら排出した新鮮な飛沫等を吸う割合が増える。

逆に良い影響(他者の飛沫等を吸う割合が減る)もあるだろうが、総合して見ればリスクが上回っている可能性はある。

とはいえ、今回取り上げた研究は条件が怪しい。おそらくコロナ感染の影響が強かったと推測する。

◇◇◇

マスク着用のリスクについては『食品加工業などで長年産業利用されてきた実績』から大きな心配はしていない。

しかし、マスク関連の詳細な研究がコロナ前に大規模で行われてきたとも思えないので、これからデメリットが確認される可能性はあるだろう。

今後の研究に期待したい。

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