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南アフリカの蟻にトラウマを植え付けられた話

部屋の中にいたら、
怖いより怒りが出てくるのが蟻。
体についてたら、
嫌悪感より怒りがこみ上げるのが蟻。
しかし、外にいる分には
何の感情も向かないのが蟻。

私の母は、家に蟻がいたとき、私が中学高校で母を怒らせたのを合計した怒りより怒り、そして憤怒の鬼になります。
家出の一歩手前になります。

リビングで蟻を偶然数匹見つけたとき、母をお風呂に行かせ、その間にこっそり弟と2人で処理した夜もありました。
我が家の平和を守るために、

また、ある時
これといった特産品がない地元に思いを馳せた20歳の私は、

「長崎はじゃがいもの生産が日本2位って習ったし、昆虫食が最近話題だから」

と、幼馴染の後輩2人を真冬に呼び出し、公園で蟻探しをさせて

ポテトチップス 蟻塩味

なるものを作ろうとしていたときもありました。(あの時はごめんね)

それらのことがあったからか、なにやら私は蟻界隈で恐れられる存在になっていたそうな。

この記事は、
そんな私と南アフリカの航空学校に生息する蟻との仁義なき戦いの話です。
(蟻が苦手な人は、閲覧注意)


戦場の舞台は寮の部屋

まず私の部屋を紹介させてください。the寮の部屋という間取りをしています。
シングルベッドー勉強机ークローゼットー荷物棚

トイレとシャワーだけでなく、
冷蔵庫と電子レンジと電気ポットを5人と共同。
火を使った自炊は禁止されているけど、電子レンジ料理やカップラーメン等は作ってもよい。

つまり、生肉や魚はないけれど、果物やジュース、テイクアウト商品を5人がたくさん冷蔵庫に入れてる状態です。
だから、誰に言われたわけでもなく、それぞれがお菓子やインスタントヌードル系は勉強机の横にある棚に入れておくのが当たり前になっていました。

航空学校に通うアフリカ人たちは、ほとんどが若いし実家がある程度お金持ちばかり。
だから、皿洗いとか苦手なのかな?
一人暮らしとかしたことないのかな?
キッチンの洗い場はいつもこんな感じ。

火は厳禁だから、何もない

そして、誰かが洗ってくれるのを待っているかのように乱雑した洗い場。

ごちゃごちゃ

そして、よく見るとそこら中に蟻

みえるかな?

集団

お皿や袋に残る食べ物の匂いを察知しているのか。壁のすき間からえっちらおっちら毎回やってくるのです。
まるで蟻を皿洗い担当として雇っているかのように。

私はもちろん、使ったものはすぐ洗っていたので小さなクリーニングスタッフに自分の食器を触らせたことはありません。

ですが、こういったことは日常茶飯事。
蟻嫌いの母の影響もあって、最初こそかなり抵抗あったものの、1ヶ月も経つとだんだん感覚が鈍ってきて
「ま、俺の食器じゃないし。俺の食べ物じゃないし別にいいか」
と、一時休戦を結んでいました。


寮のご飯の時間

蟻が蔓延る状態にあっても、多くの学生が火を使わない自炊方法を確保していたわけは、寮の食事時間が理由の1つとしてあげられます。

朝は、6時半~8時
昼は、12時~14時

問題は夜!
16時半~18時

あまりにも早すぎる!!18時以降にお腹すくなんてザラにあるし、フライトの関係でご飯の時間を逃したら、次の時間まで空腹で待つのはしんどい。

だから、ほぼ全員が食料をある程度ストックしているのが普通でした。

私の予備保存食は、果物(りんごとバナナ)、辛ラーメン、スープ、チョコレート、そしてポテトチップス。
果物は冷蔵庫に、
他の食料は勉強机の横の棚に保管していました。

事件当日

ポテトチップス120gで200円くらい。1回で食べきれる量じゃないから、いつものように半分だけ食べて、残りを輪ゴムで縛って棚に入れていました。

その日は、フライトが昼にあったから、ランチを食べれずじまい。
お腹が空いた状態で、部屋に戻ってきました。

「夜ご飯までまだ2時間ある。フライトで疲れたし、お菓子でも食べながらだらだら過ごすか」

フライトの制服を脱いで、ダル着に着替え
中田敦彦のYoutube大学を再生し
左手でバナナを頬張りながら、右手で机の棚を開けてポテチを探します。

日本では見たことがない、スウィートビネガー味。甘さと酸っぱさが新しくて、最近のお気に入り。

目と耳は中田の授業に集中していて頭がよくなってる気分に浸りながら、輪ゴムを外し袋を開けて、ポテチを1枚口に入れます。

ポリポリ

これこれこの味!!
疲れた自分を堕落させる悪魔的上手さ。

また1枚、ポリポリ

右手をぽりぽり、なんか痒いな。

また1枚、ポリポリ
また1枚、ポリポリ

やっぱり、右手が痒いな

違和感が無くならないので、おそるおそる目線をスマホの画面から右腕に移してみると、大量にほくろが増えていました。


いや、動いてる‥?

目の前の光景を信じられなず、現実を受け入れられない。

「そんな、まさか・・・?
俺に限ってそんなことがあるはずない。
嘘だと言ってくれ!!」

鳥肌が全身を駆け巡ります。というよりは、血の気がなくなる感覚でしょうか。
思考は完全に停止していたため、私の全てがそれらを認知するのに数秒かかりました。


そうです。
腕には数え切れない蟻がいました。
小さい黒点が私の右腕で暴れまわっていました。
半袖を着ていた私は、指から手のひら、手首、二の腕に広がり肩あたりにまで差し掛かろうとしている蟻たちをただただ見つめることしかできませんでした。
雪山で熊と遭遇したときのように、
船から人喰鮫を見つけたときのように、
南アフリカで右腕に蟻の大群がいるという衝撃はすさまじく、体が動きませんでした。

そうです。
私はあの時、一度死んだのです。心がね。


「ふふふ、俺の腕には食べ物なんて隠れてないよ」
「も~、くすぐったいって、あははは」


「はっっ!!俺は何をぼーっとしてるんだ、、、動けよ、体!!死ぬぞ!!!」

目が覚めるように一瞬で飛び起きる体。
脳みそがやっと働き始めます。

「とりあえず、外に行って蟻をはたいて、ポテチを捨ててこよう」

そこからの私は、迅速でした。
過去、母のために秘密裏に邪魔モノを処理してきた子ども時代の名残か
テリトリーに侵入してきた哀れな黒きモノ達に待っていたのは、悲惨な運命だけです。

夏の外でTシャツを脱いで上裸のまま体についた蟻を見つけては叩くその仕草は、
さながらジャングルのダンサー
問題のポテトチッブスの袋を部屋の外にあるゴミ箱に勢いよく叩き込む姿は、
さながらMBAのバスケットボーラー
勉強机の棚に隠れていた蟻の補給部隊、行列を潰す親指は、
さながらロンドンのジャックザリッパー

怪物退治もひと段落していくにつれて、私は蟻たちに敬意に似た恐怖を感じて始めていました。

棚は名探偵コナンの映画で密室と比べても遜色ないにも関わらず、その後いくら蟻が通ってきたであろう穴を探しても見つからない。

「こっちもHPをぎりぎりまで削られてて、はっきり言って満身創痍だよ。だが、しかし、そちらもかなりの損害が出ているんじゃないかい、蟻の女王よ。
どうだい、ここらで痛み分けとしないか?」

私の中のハンター協会会長ネテロは、原作ほど戦闘力をもっていなかったよです。
心の中で敵のボスに語り掛けて、こちらが下手で出るふりをして直接攻撃は避けると同時に、
敵の巣ごと化学で滅ぼす商品を次の日、スーパーに買いにいこうと誓いました。
その矢先、ふとあることを疑問に思います。

「私が蟻を発見した時は、もう右腕にたくさんいた。棚の中にもたくさん蟻を発見した。
つまり、やつらは食べかけのポテトチップスを見つけて巣に持って帰ろうと食べていた。
一方、私は蟻に気づかず、ポテチをいくつか食べてしまっていた。
いくつか食べてしまっていた。
ということは、、、、?」


いや、そんな無粋な想像はやめておこう。
うん、やめよう。真実は胃袋の中だし、誰も幸せにならない。
長崎に住んでいたおかしな少年が過去に考えたあの特産品じゃあるまいし、ハハハ。

火傷しそうになったとき、脳みそが理解するより早くに脊髄で反応して体を守る作用が、条件反射

10000年後の私の子孫には、蟻が襲ってきたときに思考停止せずに反応できる条件反射がついていますようにと、祈りと憤怒をDNAに刻むのでした。


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