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人生で初めてお酒を買って飲んだ時の話

人生で初めてお酒を買ったときのことを覚えているだろうか?
僕は鮮明に覚えている.

父親が毎日ビールを飲むタイプの人間だったので,特にお酒を飲むことに対してかっこいいといったポジティブな印象は持っていなかったし,逆に周りの大人はみんなお酒を飲んでいたため,ネガティブな印象も持っていなかった.そのため,なんとなく自分も成人したら飲むようになるのだろうとは思っていた.

20歳の誕生日の午前0時ちょうど,近所のコンビニに入った.当時の僕は逆張りをするタイプだったので,絶対に自分の初めてはほろよいや氷結のような缶チューハイにしないと決めていたし,ストロングゼロでは逆に普通すぎると思った.5分ほど迷った後,ある白いパッケージの缶チューハイを手に取り,レジへと向かった.

初めてのお酒の購入は,思っていたよりもあっさりと終わった.レジで支払いを済ませ,コンビニを出るとすぐにプルタブに手をかけて開けた.口をつけて缶を傾けると,中身が溢れ口に入った.甘いものが好きな僕の舌には,ずいぶんと苦く感じた.アルコールは苦いと聞くし,お酒はこういうものなのだろう.あまり美味しくないし,こういうものにハマるというのは想像もつかないなというのが,僕が人生で初めてお金を払ってお酒を買って飲んだときの,お酒への感想だ.

それから,昼間より明らかに人通りが減っている夜道を,缶チューハイ片手に歩き回った.初めてお酒を買って飲んでいるという高揚感,深夜に徘徊しているという,小さい頃には許されなかった行為に対する背徳感.連日の睡眠不足と空きっ腹にストロング缶を入れているための酔いの強さも相まって,自分でもわかるぐらいに気持ちよく酔っていた.

澄んだ冷たい空気,雲ひとつない夜空には星々が散らばり,きれいに輝いていた.普段夜空なんてほとんど見ない.帰宅中はただひたすら一刻も早く家に着くことだけを考え,イヤホンで好きな曲をガンガン鳴らし,ただ前だけを向いて早歩きをして帰ることを繰り返す日々.まともに夜空を見ることがない.もしかしたら普段から夜空は,僕の想像以上に綺麗なものなのかもしれない.しかしその時の僕は,昼間やシラフでは見られないその光景に,感動を覚えた.

その日以来僕は,毎週金曜日の夜,コンビニでストロング缶を買い,缶を片手に飲みながら夜空を仰ぎ帰るようになった.初めてのときほどではないけれど,毎回ずっと感動は薄れない.一年以上そんな生活を続けていたが,最近はあまりできていない.複数人での会食があまりよくないとされている昨今,あえて原点に帰って一人で夜道を歩きながらストロング缶を飲んでみようかと,この記事を執筆しながら思っている.


ここから下は,あとがきというか,この記事を書いたきっかけというか,本筋と逸れた話.

仲良い女友達からLINE通話がかかってきた.たくさん色んなことを喋りあった後,相手がカシスオレンジを飲み始めた.喋っている相手が飲み始めたのだから当然,僕もお酒を飲みたくなり,冷蔵庫からお酒を取り出した.アルコールが入った僕は,ふと突然思い立ち,テキーラローズを飲みつつ,友達と通話しながらこの文章を書いている.今飲んでいるのは,あのときのキリン・ザ・ストロング ホワイトサワーではなく,テキーラローズストロベリークリームだし,ストゼロは嫌だと20のときに思っておきながら,普通に今ではストゼロを飲んでいて,この記事の見出し画像はストロングゼロだし,今はもうすでに酔っ払って何を書きたいのかよくわからなくなってきて,文章もおかしくなり始めてきたので,このあたりで終わりにしようと思う.