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2022/5/1 金子勝子門下生&門下出身生による 55周年記念コンサート「音の調べ」

はじめに

そもそもこちらのコンサートに伺わせていただけるなんて、思いもよりませんでした。

金子先生が55年(実際には57年、本来2020年に開催予定だったのがコロナ禍で延期となったため)をかけて紡いできた、日本のピアノ教育界の、まさに集大成ですよ? 

それを私のような、ピアノを習ったこともないような外部の者が聴かせていただけるなんて。感激です。

まずは何よりも、2022年皐月の佳き日に記念のコンサートが開催できましたことを心からお祝いしたいと同時に、聴かせていただける機会を与えていただいたことに感謝したいと思います。


本日のお席

会場は四ツ谷にある紀尾井ホール。
クラシック専用でシューボックス型の、暖かい木目とシャンデリアが美しい、格式高いホールです。

これが自由席なんですよね(笑) 
関係者の方を差し置いて良席に血眼になるわけにいかないと思いつつも、満席だしせっかくなら…と言う思いとの狭間で悩みながら、開場1時間ほど前に列に並びました。

お近くにいらした御高齢のご夫婦が「勝子ちゃんスゴイわねぇ〜こんな立派なコンサートが開けるなんて」と。

……あのですねっ、生徒さんの中には本当に世界的アーティストもいらしてですねっ、そりゃおそろしいほどの人気なんですよっ、ソロコンサートで5000席がほぼ即日SOLD OUTだったんですよっ、とノドまで出かかりましたが(笑)

なにせあの金子先生を「勝子ちゃん」とお呼びになってる…! 
きっと今日は一般のコンサートと異なり、あくまで身内の発表会にお邪魔する感覚のほうが正しいのだろうなと、まったく外部の者ながら感慨深く思いました。

会場に入ると、1階席中央から後ろが関係者席だったので、必然的に前(か、2階席)になるのですが、一度5列目あたりに座ったものの、
そこは自由席、ふと右手バルコニーが空いていたのでそちらに移りました。自由に席を選べるなんて嬉しい。手元はまったく見えないけどお顔はばっちりの席。ピアノの音もこちらのほうがいいらしい? フラットな中央よりも全体が見渡せて、デハケまで見える素敵な席でした(ヘッダーの写真参照)。

本日のプログラム

出演者は全部で17名。
中学2年生から社会人まで、そのうちプロピアニストが4人。

芸大生/院生が多いですが、麻布高校や慶應義塾大学、東京大学大学院の方もいらして、めちゃくちゃ高学歴…この中にいると角野さんの学歴でさえ、異次元に見えないのがスゴイ…社会人の方も、長年検事をやっていらしたり。

こうやって、ピアノだけでなく学業やキャリアと両立させて指導していらっしゃる金子先生の力量が素晴らしいのだなと思い知らされました。

皆さんの演奏、音がキレイなんですよね…とくに中瀬智哉くん(高2)!

以前テレビの取材を受けているのを見たことがあって、その時「角野隼斗さんみたいな音を出す子だ」と本当にびっくりしました。なので今日生で聴けるのを楽しみにしていました。きっと高校生の頃の角野さんもこんな感じだったのだろうな〜と思いを馳せながら聴いた「スペイン狂詩曲」、明快で美しく表情豊かで素晴らしかった…また機会があったらぜひ聴いてみたい、将来が楽しみな演奏者でした。

https://www.tulip-tv.co.jp/news/movie/movie4215.mp4?rnd=1620463258

ショパンコンクールに出場した今井理子さん、おだやかながら華麗なポロネーズ。ずっと女性陣は華やかなドレスだった中、パンツルックがとてもお似合いでした。

角野未来さんのバラード2番や花火も素敵だった!
休憩中トイレに並んでいたら、小学生くらいの女の子2人が「角野未来ちゃん可愛かったー」って。憧れなんでしょうね〜だって本当に可愛い!のに、演奏はキッパリカッコよくて。
今回は手元がまったく見えない席で残念でしたが、渋谷LIVINGROOMでの「花火」のグリッサンドは本当にしびれました。

村松海渡さんのシューマンも柔らかくて素敵だったなぁ。

演奏中、舞台袖の窓から覗くふわふわな髪が見えたような。ipadを持つ手も見えたけど…次に演奏する角野さんが楽譜を確認していたのかどうかは定かではありません。

角野隼斗さんの演奏

そしてお待ちかね、角野隼斗さん。
この方、昨日までブルーノート東京でイケ散らかしていた方ですよね…?(笑)

見事に別人でした! 若干緊張気味。

5年に一度の金子先生の記念コンサート、4回目だという角野隼斗さん。ここではアーティストHayato Suminoではなく、なんだか小学生のはやとくんも、高校生の隼斗くんも、大学生の隼斗くんも同居しているような雰囲気でした。

こちらは前回の「音の調べ」2015年の演奏。まだ20才?大学に入って、サークルで浪岡さんを怖がってた頃でしょうか…?

後ろにも先輩プロピアニストがまだ2人控えているし、少し遠慮もあるのかな?なんて思いましたが、弾き出すとやはり。

はっきり言って同じホール同じピアノで、16人が、
ピアノ“を”弾く中、
ピアノ“で”弾いてたのは、彼だけでした!

さすがにこのために準備する時間が足りなかったとみえて、ミスタッチもありました。
でも彼の「ノクターン13番」は、ホール全体と、会場の観客までを楽器にしていました。

ちょうど一年前のStand Up Classicやショパンコンクールでは、まるで慟哭に聴こえた13番だけれど、今日はもう少しあっさり。次の「死の舞踏」のフィクション性とのつながりを意識した演奏のように感じました。

「ノクターン13番」ラストの和音、一番高音がミ♭で、ポーンポーンポーンと終わってからの、
「死の舞踏」は半音下がって、レの音でポーンポーンと、午前0時の時計の音が鳴り響く…

この流れ、最高! 
同じ『Hayatosm』に入ってる2曲なのに、どうして気づかなかったのかと!

そしてもうここから先は、かてぃんランドのアトラクション、ホーンテッドマンションですよ! 私の職場です(笑) 皆さん心臓を落としてしまうので、拾って届ける係をこの2年ほどやってます(大嘘)

思わず天井のシャンデリアを仰いでしまったほど、ホール全体を呑み込む音。シャンデリアの脇には白いものがフワフワ見えた気が…彼が召喚した骸骨の幽霊。

ああ、これだった!

ここ最近、彼のコンサートに行きすぎて、これがあたりまえのような気になってたけど…、やっぱり普通じゃありませんでした!(笑) また連れて行かれてしまった。

16人の皆さんの演奏、本当に素敵だったんですよ! うち14人はアマチュアだなんて信じられないくらいのレベルの高さ。

私の耳はちょっと気難しくて、正直言ってもっと著名なピアニストさんでも、どんな超絶技巧であっても、私の耳が受け付けてくれないピアノもあります。

でも金子先生のお弟子さんたちのピアノは、美しいだけでなくて明朗。
もしお一人お一人に「どうしてここでこの音を出したのですか?」と質問したら、きっとそれぞれ明快な答えが返ってきそう。

テクニックも皆さん素晴らしいんだけど、曲全体の背景とか流れとか「音のゆくえ」とか、緻密な分析がまずあって、それを可能にする「指セット」があって、
そして何よりきっと、金子先生の豪放磊落で愛情深い指導から、生徒さんのワクワクの心が引き出されて、一人一人の魅力と曲の魅力が相まったところに、演奏が乗る感じ。

……その中でもやっぱり角野隼斗さんは突出していました。
金子先生の指導だからこそ、生まれた音だということも納得しました。

余談ですが、私のお隣に座っていたご夫婦のダンナ様のほう、ずっとプログラムを指でカサカサカサカサ…
かすかな音ですが、ちょっと気になってました。なにせ4時間に渡るコンサートですから、奥様に付き合わされていらしたのかなぁ?それなら仕方ないかも、なんて思ってましたが。

でも角野隼斗さんの演奏の後は、膝を打って
「いやぁ〜さすがだね!スゴイ」と! 

…ですよねー!(笑)

プログラムにあった角野隼斗さんの金子先生へのメッセージが泣けたので、引用させていただきます。

金子先生と出会ったのは、僕が6歳の頃でした。 当時ピアノの椅子に 「よじ登る」ように腰掛けていたんだよ、という話をたびたび僕にしてく れます。 自分の成長は、 常に金子先生と共にありました。 5年ごとに開催されるこの記念コンサートも、今回で出演させて頂くのは4回目。 人 生を刻むアルバムのようで、5年間の成長をふと振り返る良い機会でもあります。 この5年間で様々な出来事がありました。 金子先生から数 わったことは本当に数知れません。 そして自分が音楽を本気でやりたいと気付かせてくれたのも、一番僕の可能性を信じてくれたのも金子先生でした。 そんな先生に恩返しをすべく、「よじ登り」精神で自分の音楽を追求していきたいという想いです。

以前コンサートのMCで、音楽の世界でも先人の積み重ねに何か一つでも新しいことを付け加えたいと、

「巨人の肩の上に立つ」

というニュートンの言葉を引用しておっしゃっていたことがありましたが、

角野さんにとって金子先生もその巨人のお一人なのだなと、
あらためて角野隼斗さんの原点を見せていただいたような、とても貴重なコンサートでした。拝聴させていただきましてありがとうございました。

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