駄文 #14


 ゴキゲンヨウ!

時刻は午前9時、メジャーリーグオールスターの試合開始に向けて自宅のリビングで待機しているところだ。野球の試合を自ら見ようなどと思ったのは何年ぶりだろうか。記憶している限りで最後にしっかりと見た野球の試合は、夏の甲子園決勝、モモクロバカとハンカチ王子による、手に汗握る投手戦だ。確か再試合になった記憶があるが、両方見ていて、そのどちらも素晴らしく見応えのある試合だった。野球において見応えのある試合というものは、とりわけ投手とその他の選手の不平等さが際立つような試合のことである。あのひと夏は何故かよく甲子園を見ていた。眺めていたという方が近い。雨が降って試合が中断する度、スポンジでグラウンドの水を吸引する泥臭い高校球児達の映像が映し出される後ろで、KUMACHIというミュージシャンのGood Bye High School Days(うる覚え)という曲が流れていて、それがすごくいい曲だったので個人的にはCDを探し出して聴いたりしていたのだけど、いまいち有名にはならなかった。お、始まった。


 今オータニサンの1打席目が終わったところだ。この場で試合内容について触れるのはやめておく。ここのところ、このnoteというアプリを使って頻繁に毒にも薬にもならぬ見事な駄文を書き散らかしているが、PCから投稿した文章を携帯の方で編集すると、空白や改行が反映されないという不具合が発生している。原因不明なのだが、よって度々読み辛い状態になっている場合があることを謝罪する。気づいた時点で編集し直しているので、もしクラスター文の状態で目にした心当たりのあるものは、ひとたび見直すことをすすめたい。言い回し等も多少いじったりしている。


 オータニサンはどうしようもなくすごいのである。わざわざ改めて言うのが恥ずかしいくらいにすごいのである。私が少年時代に愛読していた野球解説の漫画には、度々ベーブ・ルースが登場した。陸上で言うところのカール・ルイスであり、ジャズで言うところのルイ・アームストロングであり、お笑いで言うところの初代林家三平のようなイメージがある。つまり、自分が物心つく以前の偉人だったので、当時の私にはその凄さがいまいちピンとこなかった。そんなことを言ったら高校球児はエースで4番で連投ではないか、ぐらいなことを思っていた。もちろんプロの世界でそんな無茶は通用しないのだろう。出来たとしても、やはりいずれかに集中して結果を残すべきで、ベーブ・ルースは特別だったのだ、と言う風潮を拭えなかった。それを押し切り、今オータニサンが活躍してくれていることで、ベーブ・ルースという偉人の存在が、ようやく私の中で多少のリアリティを持ち始めたのだ。


 実は私も野球をやっていたが、見るのもやるのもそんなに好きではなかった。パワプロは大好きだった。とりわけ守備練習に興味を持ち、バッティングは重たいバットを振るのが疲れるから嫌いだった。そもそも、あんなものは練習しなくてもそれなりに当たるものだと思っていた。中学時代、トスバッティング練習の時間になると、自分の番は全て後輩に譲っていた。それで私は何をしていたかというと、縄跳びに精を出していた。同期の3〜4人で円を作り、時計回りに二重跳びを行う、次に跳ぶものは前の人よりも多く跳ばなければならないというシンプルな遊びだ。皆がバッティング練習に行ってしまうと、今度は一人後ろ二重跳びの練習に移行する。後ろ跳び系を練習すると運動神経が良くなると本気で信じていた。今も信じている。ちなみにこのサボリ縄跳び、後に高校の体育の授業でちゃんと結果を残すこととなる。そして、顧問が校舎二階の職員室からこちらを見張っているのに気付くと慌ててバットを握り、素振りしているフリをするのだ。

 そんな私が近頃足蹴くバッティングセンターに通っている。きっかけは、友人数名と思いつきで汗を流しに行った時のことであった。球が、バットに、当たらないのだ。現役時代、あれほど容易かったことが、今の自分の全マインドを行使しても出来ない。しかも1打席でもうバテバテになってしまう。今になって当時のサボりのツケが回ってきたとでもいうのだろうか、まあ今更回ってきたところで笑い話で済ませればいいのだが、私はこれを許さないことに決めた。出来ていたことが出来なくなるのは悔しい、老化の兆候である。実は似たようなことが野球を辞めて5年後くらいの時にもあった。そこからさらに10年ほど経っているから、セカンド童貞になってしまって当然といえば当然、もはやホームラン童貞と言ってもいい。何度か通って少しずつ当たるようになってはきたが、それでも日々の素振りの成果がそのまま出ているとは言えない。少し調子に乗ると、途端にバットとボールの間がスイカ3つ分くらい開いて、もう二度とやるものか!という気になる。それでももうしばらく続けてみよう、継続は力なり。要するに暇なのだ。


 自分がやるようになると、嫌でも野球の話題が耳に入る。オータニサンに関して言えば、こうなっていなくても同じくらい気になっていたとは思うが。こんなものを見せられたら、俺もやってやるぞ!という気になってプロ野球で二刀流を目指してしまう、目指すのは自由である。あのダルビッシュも、"大谷に出来るなら俺にも出来ると思って"。と以前よりも本格的にバッティング練習に取り組んでいるらしい。野球をやるに限らず、皆が何らかの形で影響を受けているに違いない。ありがとうの一言に尽きる。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?