駄文 ♯17


 家の近くの池に来ている。全身筋肉痛、その中に紛れて後にも残りそうな痛みが多少。大好きなカモ達は近頃住処を移しており、また次の季節まで待たねばならない。さっきから目の前でシオカラトンボのカップルがよろしくやっている。初夏からご盛んなことこの上なし。昆虫ですら相手がいるというのに、という風には私は思わない。むしろ、昆虫こそそうであれ。足元では白地に赤と黒の斑模様をした大きな鯉が悠然と遊泳している。申し訳ないがエサの持ち合わせはない。それにしても見事なピーカンである。これほどの日差しを不快に感じないのは、早くも身体が夏になっているからで、元来冬派の私が8月を待たずして暑さが心地よいと思えているのはとても幸運なことだ。これだけ日光浴すれば体内のビタミンDの生成、表面のメラニンの合成、共に大変良好なことだろう。あとは葉緑体さえ持っていれば、環境に貢献することすら出来たのに。とはいえ、本格的に日射病になりそうなので、場所を移動する。

  昨日は今週の疲労が全集中した。身体からはギシギシという擬音が本当に聞こえるようで、動け!と命令形で伝達したときにのみ、ぎこちなくも動きはした。 待ち合わせる友人が誰であろうと、友人という生き物は遅延をする。だから、私が遅れた時も許して欲しい。 バイトが早く終わって、待ち合わせ時間を待たず先に1人で滑っていた私は、待ち人の来訪を待たずして満身創痍となり、先に帰宅する旨を連絡しようと近くのコンビニのフリーワイファイを頼った。そうすると、今着くとこ、というお気楽な返事が返ってきた。待ち合わせから2時間ほど経とうとしていた頃合である。帰るに帰れないではないか、やむ終えず公園へと引き返すことした。今日の私には雷神丸(自転車)がいない、友人の馬車を頼る他ないのだ。公園戻ってもまだ友人らは来ていなかった。もう一人では頑張れないので、朝の出勤みたいにゆる〜く何周か滑っていたら、聞き覚えのある駄会話が遠くからだんだんと近くなって、私の前で止まった。"会えた!本当に会えるもんなんだね!!"友人達は合流出来たことそのものが奇跡かのように興奮していたが、確かにそんな気になるほど、夜の公園は広くて暗いのだ。

初心者3人でしばらく戯れる。1人は結婚しており、もうすぐ子供も生まれるため、この大変素晴らしい趣味は、奥さんからいい顔をされない。もう1人はすでにボードを売り払ってしまっていた。2人とも最初は恐る恐るという感じであったが、過去にやっていただけあって、すぐに勘を取り戻していた。一通り滑ったら腹が減ったので、ボード売却野郎の車でコンビニへ行くことになった。彼は車を公園の外のわかりづらいところに停めており、そこまで辿りつくのもちょっとした冒険だった。公園は広くて暗く、大通りと脇道、遊歩道と舗装された道とが混在していて、ふさわしい出口を見つけるのも一苦労する。10代の頃はよくこのメンツで心霊スポットなどを回っていた。こうして深夜の公園をふざけながら歩いていると当時のことを思い出し、そのやっていることの変わらなさに憂いと引目を感じる一方で、大変な居心地の良さを感じる。2人もそうだったに違いない。

無事車を見つけ、コンビニで飯を買い外で食べていると、もう1人の友人がやってきたが、ここで待ち合わせはしていない。彼はモノを分解する癖があり、前にまたスケボーをやろうと話した時は、今バラバラで組み立てるのがめんどくさいなどと言って渋っていたが、どうやら組み立ててきたらしい。売却野郎が帰って彼と入れ替わり、公園に戻ってまた少し滑った。我々の中では分解野郎が最も何かと勘が良い。今回も少し滑っただけで何か掴みかけていたが、引きこもりなので体力の限界が先にきたようだ。私に関しては、ボードに乗ったまま寝そうであった。最後の力で30分ほど爆走した後、分解野郎の馬車で帰路についた。

 久しぶりにぐっすり眠れた、それはもうぐっすり。起きると全身筋肉痛、その中に紛れて後にも残りそうな痛みが多少。身体からはギシギシという擬音が本当に聞こえるようで、動け!と命令形で伝達したときにのみ、ぎこちなくも動きはした。 目覚めはよく、ブーブーと鳴る携帯を見ると、明日約束している友人から、間違えて今日現地入りしてしまった、といういたたまれない連絡が入っていた。俺も行きましょうかと準備に取り掛かろうとするのを堪えて、"下見ご苦労様です"と送るに留めておいた。 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?