人気投票とムゲンノカノウセイのすれ違い

1:はじめに

 皆様、ごきげん麗しくございますでしょうか。初めましての方に自己紹介をいたしますと、わたくしは「芋煮“a.k.a.芋にお嬢様」( @ERR66856734 )というアカウント名で「I=MGCM」及びTwitterを嗜んでいる芋煮と申します。以後、お見知り置きいただけますと幸いです。
 また、イツメンの皆様におかれましては、本稿にお目通しいただけることに感謝を申し上げます。

 2022年7月10日現在、I=MGCM公式主催による人気投票が行われておりますことは、この記事をお読みになっている諸兄姉におかれましてはご承知おきのことと存じます。
 この人気投票の開催に付随して起こった様々な事象に関わることで、わたくしから是非・善悪・良し悪しに関して語るべき事柄は一切ございません。
 しかしながら、何がゆえ、はらからたるマジカ民にこの様な不和が生じたのか。
 そのことについて、わたくしの考えの至る限りにおいて言を尽くし、ただ現象を前に憎み合う行く末を回避すべく本稿を立ち上げました。
 冗長かつ迂遠な文章ではございますが、お時間とご興味の許す範囲でお付き合い願えますと幸いです。

2:人気投票とは

 そも、I=MGCMの登場キャラクター達の人気投票というイベントが発表された時点で、Twitterのマジカ民にはある種の動揺がありました。人気投票自体は何ら特殊なイベントではなく、いわゆるアイドルの総選挙から始まり、スポーツ選手、ゲーム機、自動車、音楽から犬種に至るまで、その人気に順位を付けることは至極一般的ですらあります。
 6月2日の『マジカミ「半生」放送』及び6月11日の『本気マジフェス』にて広報イシハラ様より「抱き枕の発注の関係上、4名分しか商品化できないため、ランダムトーナメント型の人気投票形式として、1試合1試合が偶然と熱量が織りなすお祭り的なイベントとしたい」という趣旨説明もあり、是々非々がありつつも、実際ある程度は承知された形での開催になったのではないかと思います。
 広報イシハラ様の説明で安堵し、1人につき複数投票が可能であると分かった時に発生した不満は何であったのか。
 我々は人気投票というイベントを前に感じていた、ある種の居心地の悪さは何であったのか。
 わたくしは今回の一件を、マジカミというコンテンツが持つテーマと、人気投票というイベントの本質において、根本的な齟齬があったために発生した事故であると考えています。

 「人気投票とは何か」を考えるために辞書を紐解きますと、意味として「一般から投票を集め、票数により人気の順位を決めること(精選版日本国語大辞典)」とあります。
 あまりにも目にする機会が多く、我々はその行為に自覚的ではないかも知れませんが、それはキャラクターの人気を決する……ひいてはキャラクターの優劣を明確にする行為であると言い換えもできますでしょう。
 様々な漫画やアニメの人気投票でもある種の是々非々がありますが、マジカミにおいて––少なくともマジカミユーザーの中でもTwitterを使用して発言を可視化できるユーザーにおいて––強く現れた忌避感の元になったのは、その優劣を付けるという点にある。
 わたくしはそう考えております。

 マジカミというコンテンツが第1部から現在まで持ち続けているギミックの中に「無限の可能性」という物があるのは、皆様ご案内の通りでございます。
 現在も新規ガチャで「Paradoxいろは」が発表されているのをご覧になった通りに、マジカミでは1人の人間が持つストーリーを直線的でシリアルなものとして扱わず、複数が並行して存在するパラレルなものとして表現しています。それはゲームの中のガチャという要素を表現する単純なギミックという意味だけではなく、ユーザーの二次創作をも肯定する広い意味での「無限の可能性」を示唆しています。
 マジカミ運営からの言外のメッセージは明確です。
 あなたはあなたの好きなものを愛し、あなたはあなたの好きな表現し、そしてそれを発言して共有して良い。
 それは多様性という、近年人口に膾炙するようになった概念に合致するテーマであったと思います。
 アダルト要素を省いた健全版があるとは言え、その多様性への強烈な肯定をアダルトゲームであるマジカミがユーザーと共有したことは画期的でさえあったでしょう。
 元を辿ればDMMの(そしてFANZAの)ゲームであるMGCMが3年という歳月を経てなお現存し、熱心なユーザーに支持され、マジカ民と呼ばれるユーザーが盛り上がり続けているのも、1つはユーザーや人間に対する多様性への寛容さが挙げられることでしょう。

 ここに、明確な齟齬を見ることができます。
 マジカミは多様性を認め、それを推奨さえしているのですが、人気投票は優劣を明確にするイベントです。
 マジカ民は自身が好きなキャラクターに優劣を付けることなく、それをパラレルな状態に置くことを許されていました。しかし、突然に公式からそれをシリアルにするとお達しが出れば、忌避感を抱くことも無理はありません。
 それが、今回の人気投票における不破の原因の主たるものであると、わたくしは考えております。

 無論、広報イシハラ様の説明を拝聴すれば分かる通り、マジカミ運営の意図した人気投票が「キャラクターの優劣を決定する」ためのものではなく、あくまで「抱き枕化するキャラクターを決定する」ためのものである事は明確です。
 しかしながら、人気投票というイベントの本質が人気の優劣を決定するものである限り、マジカミというIPが持つテーマと合致しない事は明らかでありますでしょう。

3:正しさのコンフリクト

 マジカ民……Twitterにおいて積極的にプレイや創作を共有できるアクティブなユーザー全員が、そのことを明確に意識していたかと問われれば、それが言語として明確なものではなかったでしょう。しかしながら、その中でもいくつか安心を担保する要素はありました。
 人気投票がある種のお祭りであり、キャラクターの優劣を決定付けるものではないこと。
 ランダムに抽選されたトーナメント戦であること。
 ユーザーの熱量を反映するファジーなイベントであること。
 こういった要素は明確な優劣の決定をぼかす一因となり、ユーザーは安心感を得て本気マジフェスでの抽選に盛り上がりを見せることができたと思います。
 しかし、人気投票の投票形式によって、ユーザーは再び漠然とした不安と危機感を抱えることになりました。
 投票はTwitterに特定のタグを付けたツイートを投稿することによって行い、ツイートの投稿回数に制限は設けない。
 このことは、人気投票の持つ本質的な意味と相まって、ユーザーに決定的な危機感をもたらしたと考えます。

 人気投票がキャラクターの優劣を決定するものであることは前段にて述べました。例え、それがランダムな対戦表であれ、お祭りであれ、ファジーであれ、投票と勝敗がある以上その本質が変わる事はありません。
 そうであるならば、キャラクターに多様性を求めてパラレルな状態にあることを望むユーザーが求める事はただ一つ。
 公平性です。
 ユーザーの投票によってキャラクターに上下が生まれてしまうのであれば、せめて経緯が公明正大なものであって欲しいと願う心理は、理解できるものと思います。
 しかし、投票が1人で複数回可能であることによって、今回の人気投票にはある種の衝突が生まれました。
 公平性としての正しさ。
 そして、人気投票としての正しさです。

 公平性としての正しさは、既にある程度述べました。
 すなわち、ユーザーの投票によってキャラクターに上下優劣が発生する以上、その上下優劣は程度には公明正大であるべき、という正しさです。それはマジカミが持つ多様性というテーマに惹かれているユーザーであればこそ、人気という指標でキャラクターを縦割りの状況に置くための根拠として公平性は欠かすべきではない要素であり得ます。

 人気投票としての正しさは、システムとしての正しさです。
 今回の人気投票の趣旨がキャラクターの優劣を決定するためのものではない事は、広報イシハラ様によって説明されています。そうであるならば、お祭りとしてのファジーな投票形式として、1人のユーザーの意欲やキャラクターに対する思い入れを指標とする事は間違いではないでしょう。
 今回の人気投票においては、それを計る方法は投稿回数とすることが運営によって決定されました。
 この投票形式が採用された場合、その意欲や思い入れを表現する手段は投稿する回数によって表現されます。システム上、その方法は制限されていないため、最上の表現方法は投票に用いられるTwitterに規制されない回数の投稿となります。
 ルールに則った上でキャラクターへの思い入れや愛を最大限に表現する方法を取ることは、何ら間違ったことではあり得ません。あるいはTwitterに規制されることを承知で投票すること、運営が集計すると予想される形であらゆる手段を尽くすことは、思い入れが強ければ強いほど当然のことやも知れません。

 今回は、この2つの正しさによるコンフリクトが発生したのだと、わたくしは考えています。
 マジカミの持つテーマによって公平性を求めるユーザーと、キャラクターへの思い入れよにって勝利を求めるユーザーは、明確に言葉にされていない互いの背景の食い違いを意識しないまま衝突し、ただ双方の正しさをぶつけ合うことになりました。
 マジカミという同じコンテンツを熱烈に愛するが故に、その熱量が衝突してしまったことは不幸な事故という他にありません。

 運営がそれを完全に放置したのかと言えば、わたくしはそうであるとは考えたくはありません。
 この3年間を振り返り、そして今回の衝突を俯瞰してみても、マジカ民はそれぞれ極めてアクティブなユーザーであり、どうあっても熱量と意志と愛のある人々でした。
 これはわたくしの希望的な見解を多分に含みますが、今回の一件で純粋な悪意による投票行為というものはなく、ただマジカミへの思い入れと熱量が異なるベクトルで衝突しただけなのだと解しております。
(または、それだけ同じユーザーであるマジカ民の熱意を信じ、そうあれかしと願う気持ちがあります)
 ユーザーへの信頼に重きを置いた運営に対して、今回の不意の事故の非を問うというのも、また余りにも酷な事であるとは感じております。

4:行く末

 現在、マジカミ人気投票は15回戦を迎えており、第3位の決定戦の最中にあります。
 その結果は、またマジカミ人気投票の首尾不首尾などはこれから決定される事柄です。
 今回の衝突について様々な意見があり、そのスタンスややり方によって、見え方も捉え方も異なり、その結論も異なる事でしょう。
 しかし、そこにあるのは溢れんばかりのマジカミへの愛であり、それが故に起こった不幸な事象があるばかり。
 このことに是非や善悪や良し悪しがあろうはずはありません。
 ただひたすらに、願わくば、マジカミという多様性の中で出会った素晴らしい人々において、互いの愛と熱意の食い違いが解され、再び和する来ることを心より望んでおります。

 ここまでお目通しくださったあなたへ、尽くしきれない言葉と感謝と愛を込めて。

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