リーガルテック見聞録と法務ポエム2篇
これは、法務系 Advent Calendar 2018への投稿ノートです。(#legalAC)
タンザニアネコ(Tnatz2010)さんからバトンを受け取りました、みねメタルと申します。師走のひと時、どうぞよろしくお願いいたします。正直、ドーンとハードルが下がった感じがしないのですが…
これは私がドーンとハードルを下げよというお告げと受け取りました。
昨年はエントリを読んだ友人から「長文すぎる!」とのお叱りを頂戴してしまい、大変恐縮した次第です。このことをとてもとても真摯に反省し、今年は、短文かつトピック別でポエムを書いてみたいと思います。
1 法務キャリア論
2 リーガルテック雑感
3 法務パーソン論
1 法務キャリア論
キャリア論として述べるほどのことではありませんが、今年は久しぶりに転職を経験しましたのでそのご報告です。といっても今回は法務職から法務職ですので、他の方のように営業職やコンサル職に転じるといった劇的な変化はありません。
とはいえ、
というように、業種や規模、部門の位置づけなどは大きく異なりますので、法務パーソンとして求められる内容も自ずと異なることになります。結果論ではありますが、そういった場を求める気持ちが自分の中にあったことが転職の契機であったのかもしれません。
タンザニアネコさんの
もう、やりきったな
という感覚、とても共感しました。
さて、法曹資格を有さない普通の法務パーソン(無資格法務という言葉は侮蔑的と思っているので避けますが。)としてのキャリア論としては、kataxさんのこちらのエントリが大変整理されていて参考になるところです。また、keibunibuさんのこちらのエントリでも紹介されているようにGC論も流行っておりますし、今後の法務パーソンは、GCやCLOのような役職を目指すこともありえるのかもしれません。
キャリア形成はある意味で運やご縁によるところが大きかったりもしますので、過度な期待や不安を抱く必要はないのだと思います。キャリア論には、計画された偶発性理論(Planned Happenstance Theory)なるものがあるようで、明確な目標への筋道を計画するより、偶然に働きかけるように計画するのも意外とよいのかもしれません。
ところで、kaz_miyashitaさんのこちらのエントリを読んでいて、ふと、kashiwooさんのこちらのエントリを思い出しました。法務パーソンとしてPM能力を身につけることは結構重要なことだと思っています。まあ、そのような意味でコントラクトマネージャー職を設置できる組織は多くはないと思いますが、多くの法務部でも案件に応じてそのような役割を求められることは多々ありますので、やはり重要だと思います。残念ながら私は持ち合わせてはいませんが、キャリア形成の中でPM能力を磨いていくのもよいかもしれませんね。
2 リーガルテック雑感
法務業務の効率化という観点でここ5年ほどリーガルテックの進展を眺めていますが、今年も興味深い展開が見れました。
ひとつには、AI-CONやLegalForceといったAIを利用した契約法務支援ツールが提供されはじめたことでしょうか。PDFやxlsx、多種多様な非典型契約、英米法系の契約法を反映した和文契約書への対応など、さらなる開発を期待したいです。
電子契約サービスもサービス数が増えてユーザとして選択肢が増えてきています。ただ、大手SIerからITベンチャーまで数が多く、レッドオーシャン化しているようなので、ユーザサイドとしてもどこが優れているのか、長期的に見てどこならば安心できるのかなど検討が難しくなってきている側面もありますでしょうか。
そのなかで、AOSリーガルテックが発表したスマート電子契約はブロックチェーンを本格的に採用しているようで、いよいよ本命の技術が契約手続に導入されるのかとわくわくしております(他のサービスでもブロックチェーンを利用したり利用検討をされているものもありますが、こちらは発想が少し異なるように思われます。)。
また、契約業務用のワークフローとして提供されているRICOH Contract Workflow Serviceはサービス内容が拡充されており引き続き期待したいですね。この分野では類似サービスを見かけないのですが、ニーズがないんですかね? 個人的には一番欲しいところですが(笑)
ただ、ワークフロー系のシステムは、場合によっては二重の手続や二重の管理が必要になる恐れがありますので、業務効率化の観点からは慎重に導入しなければならないと思います。
その意味では、ワークフロー系は必要最小限の記録用として、コミュニケーションを含めた通常の業務は、チャットツールを使うようにして、集計や記録が必要なデータの移動といった作業はRPAでつなぐのがよいのかもしれません。
ビジネスチャットツールという点では、ChatworkかSlackかというのが主要な選択肢と思っていたのですが、ここにきて、Microsoft Teamsというかなり強力なツールが出てきています。なにせ他のマイクロソフト製品との連携がスムーズに行えるので、法務パーソンの大好きなワードとの連携も容易です。
ただ、リーガルテックの進展は著しいものの、何をどう導入すれば業務効率化できるのかなかなか解答が出ません。ROIを示して稟議書を書くとして、なかなかいい感じの数字はでないんですよね。
3 法務パーソン論
法務パーソンの役割について、昨年のエントリでは、
会社の事業という視点からすると、縦串の役割というより横串の役割を担っている面が強い
ということを述べたのですが、引き続き、法務パーソンとしては横串のスキルを磨いていくべきだよなあと思っています。
具体的には、カタリスト戦略とでもいえるのでしょうか。カタリストとは触媒という意味ですので、大雑把に言うと、ビジネスを推進するうえで様々な人をつなぐ触媒になるということで法務パーソンとしての価値向上を図る戦略ということにでもなるでしょうか。
法務パーソンってカタリスト型人材らしいよ~
なんかよいイメージ(笑)
でも、カタリスト型人材って何なのでしょうね。
おそらくそれは、バウンダリースパナーということなんだと思います。
バウンダリースパナー。ちょっと聞きなれない言葉ですが、境界連結者という意味だそうです。たとえばこちらでは次のようにまとめられています。
そのようにして、多様な価値観を受け入れながら、組織や部門の「境界を超える人」を経営学では、「バウンダリー・スパナー(Boundary Spanner)」と呼ぶ。ハーバード・ビジネススクールの教授、マイケル・タッシュマンが1977年に発表した論文で広まった概念で、近年も研究は盛んに行われている。例えば、2008年に設立されたアップルの社内研修プログラム「Apple University」で、スティーブ・ジョブズの命を受けて初代学長を務める社会学者ジョエル・ポドルニーは、就任前の06年にバウンダリー・スパナーに関する論文を発表している。
こちらでは、早稲田の入山教授がこのように説明されています。
ある分野の境界を飛び越えて、違う分野と行き来できる人ですね。
どうも、法務だけでなくいろいろな分野のことを理解していないといけないようですね。
じつは成功する人にはバウンダリースパナーがけっこう多いんですよ。
勉強になります。
バウンダリースパナーとしてのコンピテンシーはなにか。ちょっと研究してみたいです。
さて、法務パーソンとは。
ある方の言葉ですが、
法務の定義を自らDesignしていくことが重要
同感です。
自分なりの定義をもって仕事をしていきたいですね。
この点でバウンダリースパナーという理解はとても有用だと思っています。ゆるい感じで人と人をつなぐことはビジネスパーソンとしても重要な点ですし、ゆるい感じで組織内の法と社会の法をつなぐことは法務パーソンとしてはとても重要な点だと思います。そのつなぎ方にその人の個性や価値観が出るかもしれません。
そういえば、とある会で面白い実験に接しました。ある事例の妥当性について各自の見解を述べる場面があったのですが、結論として、若手ほど経済的利益の視点を重視し、年齢の行った人ほど情や倫理の視点を重視していました。どちらがよいなどという正解がある話ではありませんが…
ところで、法務パーソンとして重視すべき価値は何なのでしょうね。
明日は、お馴染みのms-utenaT(msut1076)さんです。
どうぞよろしくお願い致します。
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