小川糸『ツバキ文具店』 感想文
人に想いを伝えるという行為の中で、手紙ほどその工程が多く、人となりを表すものはないと思う。
それはー①道具を用意し、に始まり⑧投函する、に終わる。そして「想い」は認めた瞬間のまま時間が停止し、何年もそこに存在するのだ。
差出人の存在が消えた後もー。
先代である祖母の跡を継ぎ、鎌倉で「ツバキ文具店」を営むポッポ(雨宮鳩子)は文具店の店主をする傍、本来の仕事である代書屋をおこなっている。代書屋はその名の通り、代筆を生業とする職業である。代書屋の元にはなんらかの事情で自ら