マガジンのカバー画像

読書感想文

21
読んだ本の読書感想文を中心に公開しています。 あくまでも主観・雑感で、作者様の意図するところとかけ離れている場合もありますのでご了承ください。
運営しているクリエイター

#村上春樹

二十年間思い違いをしていたことについて(再考:ノルウェイの森)

 前回、J.D.サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』について思うところを書いた。  初読が同時期にあたる作品に、村上春樹氏の『ノルウェイの森』がある。  こちらの作品に関してはおよそ3〜5年に一度のペースで読んでおり、個人的には殿堂入りを果たした作品でもある。  当作品については読み返すたびに共感する人物が移ろい、自分自身の成長も伴い見えなかった一人一人の考えや思いが色を帯び、リアリティが増してくる。  奇しくも今年、冒頭のボーイング747の機内で『混乱』した主人公

村上春樹『アンダーグラウンド』 感想文

本書を読むにあたり、いくつかの戸惑いがあった。 1)この分厚い本を果たして読了できるだろうか? 2)個人的な話ではあるが、私は物語にある種の追体験をしてしまう傾向にあるため、ここに記されたリアルに対して自分の心を保つことができるだろうか? 3)1)〜2)を踏まえた上で、そもそも読むこと(知ること)に意味はあるのだろうか? ということである。 1995年3月20日、私はテレビの中継で事件を知った。四半世紀近く前の記憶なので完全に一致しているとは断言できないが、「オウム」「地下