風花雪月無双ネタバレ有り感想後半(各章感想、批評パート)
後半は各章の感想及び個人的に本作に対する考察、不満点を書いていこうと思います。まず注意として私は紅花の民なので、可能な限り公平な視点で語ろうとは思いますがどうしても帝国(エーデルガルト)を贔屓した記述が多くなりますのでご了承下さい。
◯赤焔の章
評価点
・闇に蠢くものたちとの決着をつけられる
『風花雪月』本編ではED後の後日談で片付けられていた闇うごと直接対決出来ます!最終章ではタレスとレアをまとめてやっつけてめでたしめでたし!終わり!閉廷!以上みんな解散!(なんか求めてたのと違うんだよなぁ?)
・ヒューフェルの『帝国の双璧』
これは文句無しに熱いパートです。元々エーデルガルトの懐刀として活躍していたヒューベルト。主君のためには己の父さえも手にかける彼とは対照的に、腐敗してしまった『エーギル公』としてのあり方は断罪すべきと考えていたものの、やはり親子の情で幼き日尊敬していた父を正しく法の下で裁くことを求めてフェルディナント。そんな彼が謀反を起こした父に対して、帝国軍の将として討つ覚悟を決め言い放った「父上…いや、逆賊ルートヴィヒ」。その姿はまさに彼が常々口にしていた『貴族』としてのあり方を体現していました。
・モニカが可愛い
正史時空ではクロニエが化けて出ていたモニカですが今作では本人が登場。一体どんなキャラなのか期待していましたが出てきたのはエーデルガルト大好きっ子。(多分)有能参謀タイプのキャラなのだがそのポジションには既にヒュー君が居るのでイマイチその能力を活かし切れていないのも不遇かわいい。ヒュー君は他の章ではあまり出てこないので実質副官ポジションを貰ったりと本編と比較すると大出世した子。やったね!
不満点
・物語の盛り上がりに欠ける
レトレスの神祖の力の覚醒からなし崩し的に戦争を始めたと思われる正史時空と比べ本作では闇うごの排除、前エーギル公含む不満分子の粛清等を早々に進め南方教会を復興。その上で軍務卿、内務卿に2年準備をさせるなどしっかりと戦争準備を整えています。
そのお陰かエーギル公のクーデターなどはあったものの同盟と連合を組んだこともあり、対王国教会相手には横綱相撲を見ているような「まあそりゃ勝つよな」と言った感じで良くも悪くも印象に残らないと言ったのが素直な感想です。
◯青燐の章
評価点
・闇堕ちしないディミトリ、王道のシナリオ
正史ではダスカーの悲劇の裏でタレスと炎帝(エーデルガルト)が暗躍していたことを知り、復讐者としての面が強く描かれていたディミトリ。
今作ではそう言った面は影を潜め(それでも時折垣間見えますが)民の命を大切にし自分の命を投げ出そうとするなどよく言えば理想主義、悪く言えば青臭い人物としての面が強く押し出されていますがフェリクスやロドリグ、ドゥドゥーなどの仲間の支えにより王としての覚悟を決めて成長していく王道FE主人公として描かれています。物語も風花雪月本編を含めても1番王道のFEやってるので(紅花民でなければ)爽快感があって楽しめる内容になっていると思います!
不満点
・アリアンロッドの悲劇(突然の覇骸化)
先に赤焔の章をクリアしていて帝国軍がかなり優勢であるのは知っていたので、どうやって戦況をひっくり返すのかなぁと色々予想しつつも迎えたアリアンロッド攻防戦。悲劇は唐突に起こります。
王国内の内乱の隙に皇帝直属軍の強襲を受け陥落の危機に陥るアリアンロッド。セイロス騎士団の奮戦とディミトリ率いる王国軍が救援に駆けつけ防衛に成功するも、そこにエーデルガルト率いる皇帝直属軍本体が到着し国王と皇帝との直接対決が発生。
ここで皇帝を討ち取られた帝国軍は指揮系統が乱れ、同盟と連合を組んだ王国軍が東西から挟撃。帝都に巣食う闇に蠢く者たちを討って物語はハッピーエンドに…
こんなめちゃくちゃなシナリオならまだよかった。素直に彼女を退場させて欲しかった。だが現実は無情である。
公式「帝国強いしエーデルガルトいる限り落ちないだろうなぁ…なら傀儡化させればいいのでは?」
よくないのである。確かに物語の設定的に帝国の優勢をひっくり返すにはこうでもしないと仕方なかったのは分かる。でもこれはやってはダメ。仮にこの作品が『風花雪月』という物語がない単体の作品でエーデルガルトを完全な悪役として描き切っているならまだ許されるかもしれない。ただ彼女と歩むルートを用意し彼女に思い入れのあるプレイヤーがいる中でやっていい行為ではない。
よりによってやったことが『覇骸化』。正史時空ではグロンダーズの決戦に敗れ、同盟軍も救出された上アランデル公(闇に蠢くものたち)を失い戦力的にも追い込まれた際の最後の逆転の一手として、元に戻れないことを覚悟しながら自らの身に施した改造であり彼女の覇道の果てである『覇骸化』。
それを本作では窮地に追い込まれてもいなければ自らの意思でもなくタレスによって無理やり行わせ物語の舞台から退場させたのである。これに関しては本当に援護のしようがないシナリオ担当の愚行であると個人的には思わざるを得ない。
・ヒューフェルの動き
前述のようにタレスによって覇骸化させられ、前エーギル公の傀儡とされたエーデルガルト。これによって帝国領内は混乱し領内は略奪と殺戮が繰り広げられ荒廃し、それにより王国同盟双方に押し返される形となる。だがこのような惨状を帝国の双璧たるヒューベルトとフェルディナントが黙って見過ごしていることに違和感を禁じえない。
フェルディナントはアリアンロッドの戦いで負傷、ヒューベルトも直前まで同盟領の対処に当たっていたという話とその後の拠点会話では2人が中央から遠ざけられているという話も出ているもののその後の登場は一切なし。青燐ルートだからと言ってしまえばそこまでだがエーデルガルトを助けるために動く描写があった方が自然な気が個人的にはします。
・最終章でのエーデルガルトの扱い
嫌な予感を隠し切れない中迎えた最終章。ガルグマクを攻める王国軍とそれを迎え撃つ帝国軍。大修道院入り口を守るヴァーリ伯を撃破し中で待ち構えていたのは闇に蠢くものたちの首魁であるタレスとエーデルガルト。戦闘中タレスはエーデルガルトを盾として扱い体力が尽きようが回復させてはまた力尽きるまで盾として使い潰します。
再度の言及となりますが彼女は『風花雪月』という作品の主人公の1人です。例え他のルートだからと言ってこのような扱いをするのはいかがなものかと思いますし、正直シナリオ途中で覇骸化したのだからラスボスは覇骸化したエーデルガルトにトドメを刺すのかと覚悟していた中、結局再度覇骸化することもなくタレスを討つのみで呆然と座り込むエーデルガルトには手を下さずに立ち去るエンディング。何だこれ?これならシナリオ中盤で覇骸化させた意味あったか?誰か教えてくれ
黄燎の章
評価点
・「卓上の鬼神」クロードの実力
正史でも帝国の侵攻を5年もの間諸侯同士の小競り合いを起こし巧みに防いでいたクロード。その策略家っぷりが今作でも遺憾なく発揮されます。
どのような状況になろうが領主として自領の民を優先するグロスタール伯(ローレンツ父)の性質を見抜き、“くせ者”同士の阿吽の呼吸とでも言うべき手法で帝国軍を包囲、潰走させその上返す刀でベルグリーズ領に一撃を加える戦いはまさに卓上の鬼神。
その後は有事の際に迅速な行動を可能とすべく同盟というあり方を解体し、王となるクロード。その知略と集権化によって得た軍事力で王国、帝国、教会を翻弄しフォドラのあり方を変えていく様はまさに風雲児でした。
不満点
◯正史と比較した際のクロードのキャラブレ
前項で評価しておいてなんですが『風花雪月』本編とのクロードのギャップが個人的にはあまり受け入れられませんでした。
本作では同盟を解体して集権化、国王になったり自軍の損害を減らすためとは連合を組んでいる帝国将を見殺しにするなど目的のためには多少の犠牲には目を瞑るリアリスト的な側面が強く描かれています。
そこは別に個人的には許容出来たのですが、1番気にかかったのがクロードの行動が場当たり的なものに見えたことです。
彼はその出自ゆえ偏見や凝り固まった秩序を嫌っていることは正史時空でも語られていましたが、本作では現行制度を徹底的に否定する“壊し屋”として描かれており、エーデルガルトよりも苛烈に中央教会の存在を否定するキャラクターとして描かれています。彼の目指す“野望”は見えるのですが中央教会が無くなることへの混乱や戦後の後処理などその野望が実現に至るまでの道筋が見えてこず、策略家のクロードにしては杜撰に見えます。
要は「そんな教会憎んでいたか?」って言うのと彼らしからぬ機会主義的な行動が正史のクロードとは大分ギャップがあって個人的に戸惑いました
『風花雪月無双』としての考察、不満点
◯ラルヴァとは一体何だったのか?
シェズの中に宿る謎の存在ラルヴァについて本編内で見られる情報を元に考察していきます。
単刀直入に言えばラルヴァの正体はエピメニデスのバックアップ用の核であり、エピメニデスの本体は正史時空のネメシスと同様にシャンバラで保管されており、その魂を肉体に移し替えてソティスに対する復讐の機会を伺っていたのかと思われます。(『魂の循環を君で途絶えさえてはならない』と言う発言から既に何度か移し替えは行なっている模様)
ただ本編開始時エピメニデス本体の魂の移し替え時に何らかのトラブルが発生し、急遽バックアップ用の核として用意されていたラルヴァの魂が起動し主人公に宿ったものの事故による起動であったために記憶を失っていたと推測されます(覚醒の邪竜ギムレーの時間遡行によって魂に器が耐えきれずルフレが記憶喪失になったのと同じパターン?)
またラルヴァが闇うごに近い力をもつも闇うごからは認知されていない微妙な立ち位置になっている理由も前述のようにエピメニデスがシャンバラの民の1人であり対ソティス用の決戦戦力としてネメシス同様シャンバラにて保管されていたものの事故によりオリジナルを喪失。
その力は失われたと思っていた矢先、主人公がエピメニデスの力を使ったことでラルヴァの存在を知らない闇うご陣営との戦闘時「その力どこで⁉︎」と毎回驚かれていたのかなと考えると個人的には納得がいきます。
◯シェズとラルヴァの扱いに関して
正史が「人」の守護者であり神祖ソティスの器であるレトレスが主人公であるのに対して、本作が「ヒト」の世界を取り戻そうと魂の存在となったラルヴァ(エピメニデス)の器であるシェズを主人公に据えると言った構図はとても面白いと思います。
ただ3ルート+ラルヴァ外伝をザッとプレイした限りではラルヴァの目的や正体を掴みづらく、もっとメインに据えてストーリーで深掘りするのかと思いきや終章の前2章で片付けるなど拡げた風呂敷を回収しきれなかった感は正直否めません。
あとシェズに関しても士官学校編も1月で終わりそれほど絆も深まっていない中で突然の戦争編のスタート。ゲーム内では2年間の時があったとはいえシェズが各級長の隣に立って戦う相棒ポジションに収まることに違和感を感じずにはいられませんでした。
素材としてはかなり面白い要素が多かったのでもっと上手いこと調理出来たのではないかと個人的には残念に思ってしまいます。
◯ルート分岐に関して
1週目にこの選択肢が出た時は大いにワクワクしたのを覚えています。実際ジェラルトを倒すルートを選ぶとそれぞれの陣営の中心人物が殺されたりレトレスと決着を着ける場面が追加されたりします。
ただストーリー的には3ルート共通でラルヴァ関係の2章が終章前に追加されることを除けば赤焔のアリルがグロンダーズ化することくらいで特に大きな変化もなく、その追加される2章の内容もどのルートでも共通。正直3周も同じやり取りを見させられると飽きると言わざるを得ません。
個人的には青燐の章では正気を失っているエーデルガルトがザラスの闇に飲まれた時には正気を取り戻しているので、終章に変化があってもよかったのではないかと思ってしまいます。
◯そもそもの『風花雪月』の魅力
私は『風花雪月』の最大の魅力はどのルートを選んでも後味の悪さがあることだと思っています。
各学級の級長がそれぞれに絶対に譲れない思いを秘めていて、決して交わらぬそれぞれの道が交差した結果多くの民の命を犠牲にする侵略者として非難を浴びようが、時には見知った友を手に掛けることになろうがその理想を実現させるために前に進み続ける姿にどうしようもない魅力を、そして彼ら彼女らを導き「共犯者」として罪を共に背負っていくことにどうしようもないカタルシスを感じます。
それが今作ではどうでしょうか?一部の敵は流石に手に掛けることになるものの基本的には説得可能。級長同士の殺し合いもない。戦争の行く末も結果こそ明確に描かれていないものの正史と比較し軟着陸することが予想出来ます。
正直に言って何もかもが中途半端です。
スピンオフ作品である以上本編から大きく逸れたことは出来ないという制約があることを考慮しても、既存のファンからの批判を恐れて中途半端に丸くした結果『風花雪月』の最大の魅力の「シナリオ100点道徳0点」とまで言われた戦争の凄惨さが殆ど描かれていない。これ風花雪月を題材にしてやる必要ある?
上に引用させてもらったのは風花雪月のディレクターである草木原氏のインタビュー記事であり開発側も『風花雪月』に大団円は最初から想定しておらず、だからこそプレイヤーも自分で地獄を選ぶ覚悟とそれ故の楽しさがあったんだと個人的に思います。
今回もその地獄を期待してプレイしたプレイヤーには中途半端で物足りないものになったのではないかと思います。
最後に
私はFEシリーズも好きですし勿論原作の『風花雪月』も大好きな作品です。そしてこの『風花雪月無双』も色々と欠点は目立つ作品ですがファンディスクとしては十分楽しませてもらいましたし買ってみて損はない作品だと思います。
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