【先取り】スプリンターズステークスコース論
まずはじめに、今週の重賞は神戸新聞杯・オールカマーの2レースですが、まずオールカマーに関しては下記の記事をご覧ください(先週のセントライト記念と同一の記事で、内容的にほぼ一緒になるため1記事にまとめさせていただきました)。
神戸新聞杯の阪神2400mについては、元々開催レース数全体が非常に少なく、加えて多頭数での開催となるとそれこそ殆ど過去レースが見つからないことから、コース論として取り上げる意義が薄いと判断し、省略させていただきます。ご了承ください。
代わりに、来週行われるG1レース・スプリンターズステークスの舞台である、中山芝1200mのコース論を先取りで解説したいと思います。
このコースはクラス問わず開催が非常に多い上、今週も2歳OPカンナSを含む3レースが開催されるため、こちらの方がより有意義になるはずです。
また、1週早く取り上げることで、当日まで余裕をもってコース論を参考にしながら自身の予想に取り組むことも期待できると思います。
当コース論が、予想の一助となれば幸いです。
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スプリンターズステークス(中山・芝・1200m)
コースデータ
・右回り
・スタートから3コーナーまで 275m
・最終直線 310m
・高低差 約3.5m
・最終直線坂 2.4m
(残180m~70m間で2.2m上り、残70m~ゴール間で0.2m上り)
特徴
・スタート地点は外回りコースの2コーナーを曲がってすぐのところ
・スタートから3コーナー途中まで下り
・3コーナーの途中で内回りと合流、3コーナーは平坦で推移
・4コーナーの途中から若干の下りがあり、下り切った後は最終直線1F弱で再びの2.4mの急坂
このコースを使用するOP以上の競争
G1
スプリンターズS(3上)
G3
オーシャンS(4上)
L
春雷S(4上・ハンデ)
ラピスラズリS(3上)
OP
カーバンクルS(4上)※ハンデ競争の年とそうでない年が共にある
カンナS(2歳)
クリスマスローズS(2歳)
コース考察
○状況によって傾向が変わる
いわゆるトラックバイアスに左右されやすいコースであり、全パターンをひとまとめにするとある程度均一化されるため特に目立った傾向がないように見える。
実際のところは、例えばコース区分であったり、開催時期、馬場状態そのた諸々で細分化すると偏りが見えてくる。
以前このコースを取り扱った時は季節ごとで分けたが、今回はコース区分ごとで見ていきたい。
Aコース
Aコースが使用されるのは主に2回開催(春開催の前半)と5回開催(12月)。
1着と馬券内とで傾向が異なり歪になっているが、その原因を生み出している馬券内の8枠を考慮しなければ外枠が有利といって差し支えなさそう。
使用される時期的に馬場が温存されていることが多く、感覚的には活き活きした内ラチ沿いを使える内枠が有利に思えるので、この結果は少々意外かもしれない。
8枠が馬券内で数字を大きく落としてしまっている理由は、単純に人気のない馬が多く入りがちになってしまっているからであろう。
或いは8枠だと外すぎて逆にきつくなっているか。
Bコース
Bコースが使用されるのは主に3回開催(春開催の後半)と4回開催(秋)の前半。
Aコースよりもコース全体が若干外に膨らむ関係かAコースの時に見られた外枠優位はなくなり、一方でAコースの時と同様内枠の状況が継続された結果、中枠が極端な有利を描いている。母数がAコース・Cコースに比べて少ないためか数字が暴れてはいるものの、4枠と隣接する3枠・5枠の数字も悪くないため、中枠が有利或いは内も外も不利と見る方が堅実。
温暖な季節のため、極端に掘られ続けるということがない真ん中あたりは美しい馬場状態を維持しやすいのだろうか。
Cコース
Cコースが使用されるのは1回開催(年明け)と4回開催の後半。スプリンターズSはCコースでの開催。
1回開催は前年5回開催からのロングラン、4回開催後半は当然それまでも使われていることから馬場がすでにある程度傷んだ状態であり、それが特に勝ち馬において歪んだ結果を生み出している。
極端なレベルな外枠有利は内ラチ沿いの馬場が傷むことで、相対的に走りやすい馬場の外を使える枠が良い、ということだと思われる。
5枠が極端な不振に喘いでいる理由はよくわからない。
仮説としては、JRAで使用されるゲートは10番枠と11番枠の間に繋ぎ目のようなスペースがあるが、これはある意味10番枠までと11番枠からを分断しているとも見えなくもない。よって9・10番枠は比較的綺麗な馬場を使いづらい内枠勢に実質的なカウントが為されているのかもしれない。
余談だが、20年スプリンターズS勝ち馬のグランアレグリアは5枠10番から勝っている。
やや距離を選ぶ馬ではあるが、個人的にはここ4,5年で一番強い馬だと思う。
○後方からでも勝負になる
中山といえば小回り急坂で立ち回り重視というのが大枠としての傾向になるが、この距離はやや事情が異なる。
外回りを使用していることからコーナーが比較的大回りで、追走力に乏しい馬も後半にスピードアップしながら強引に直線へ向くことができるため、大味な競馬でも捲ってきやすい。
逆に逃げ馬は苦戦を強いられている。序盤が下りになっているためオーバーラップを刻んでしまいやすいのかもしれない。
各コースごとの傾向は以下。
Aコース
Bコース
Cコース
いずれの場合も差し・追込が先行勢と互角かそれ以上に戦えている。
Bコースの場合のみ互角だが、AコースとCコースに関しては決め手が差しという馬の方が馬券内に多く入り込んでいる。
コース的に先行するには非常に高いクオリティが求められるのだが、必ずしもそれが奏功するわけではないということがここからご理解いただけるだろう。
最後方からでも全く勝負にならないわけではないところは注意したい。
過去のスプリンターズステークスラップ推移
流石に短距離路線の頂点を決める戦いなだけあって、特に前半の時計の早さは目を見張るものがある。
いくらスタートから下り続けるコースとはいえ、新潟開催の14年を除く過去9年のテン3F平均が33.2前後なのはかなり早く、直近5年のうち4年が33.0を上回る非常に早い速度の先行争いが繰り広げられている(半分以上はモズスーパーフレアによるものだが)。
ただし、近年はあまり見られていない傾向とはいえ必ずしも前半が早いと差し決着になるわけでもなく、06年は豪州のテイクオーバーターゲットがテン3F32.8で逃げて完勝。07年も3歳牝馬アストンマーチャンが不良馬場の中33.1で逃げ、粘り切っている。
逃げは勝つのが難しいだけで粘ること自体はそこそこできるのだが、一方でペースが早くなっても遅くなっても苦しいのが後方一気の馬たち。
20年こそ32.8-35.5という超前傾ラップに乗じてグランアレグリアとアウィルアウェイがそれぞれ1着と3着に突っ込んできたが、それ以外の8年で3着に2頭(15年ウキヨノカゼ・22年ナランフレグ)が来た以外は全て馬券外に散ってしまっており、非常に厳しい戦いを強いられている。
これは根本的なコースの形状によるものと考えられ、いくら前後半でペースが急変しやすいといっても、中山の短い直線だけで勝負することは厳しいということ。G1級ともなればただ追い込むだけではなくそれ以前の段階での下準備も非常に重要となり、結果G1としては位置取り能力の問われるレースになっている。
位置取りができないからと安易に足切りをするのも悩ましいが、少なくとも差し切れる馬はグランアレグリアやデュランダルのような深く考えなくても強いと言えるような馬になるので、馬券に打点の高さを求めるのであればやはり嫌ってもよいかもしれない。
まとめ
非常に取り扱いが難しいコース。頑張って色々書いてはいるものの、結局のところ蓋を開けて見ないと何とも言えない部分が多く、露骨にこのコースはこうだ、と断言できる程度の大きな傾向は出ていない。
展開面については距離の関係である程度の流れは予測しやすく、それが速いか遅いかを考えれば済む話だが、結局どの馬が最終的にやってくるかという部分は別のアプローチを混ぜた方が良いかもしれない。
スプリンターズステークスというレース単位で見る時には、そもそも中山開催の直近9年で勝ち馬はあまり荒れていないというところは気にしたい。
22年こそ単勝20倍のジャンダルムが勝ったが、それ以外の年は3番人気以内の馬がずっと1着を取り続けており、そこは流石に能力差の大きく出るG1レースといったところであった。
一方で短距離らしいのは3着まで全て順当に決まるわけではないというところで、紐荒れというか紛れの余地は十分に残されている。
特に今年は高松宮記念を勝ったファストフォースは既にターフを去り、軽斤を活かせるはずの3歳勢も元気がなくまさかのサマースプリント3歳無冠。さらにそのサマースプリントシリーズも人気通り順当に勝ったのが函館スプリントSのキミワクイーン・キーンランドCのナムラクレアくらいで、全体的に荒れたレースが多かった。
こうなってくると短距離路線の現状をうまく把握しきれない、混沌とした状況であることは間違いなく、ここの整理をうまくできた人が馬券を取れるといっても過言ではないのがスプリント路線の現在地である。
非常に難解なレースになることは疑いないが、「こういうレースほど予想しがいがある」という諸兄らは是非頑張っていただきたい。
文責:もじゃ