エルムステークスコース論

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エルムS(札幌・ダート・1700m)

コースデータ

・右回り
・スタートから1コーナーまで 240m
・最終直線 264m
・高低差 0.9m
・直線坂 平坦

特徴

・スタンド前直線の途中がスタート地点
・一周を通してほぼ平坦なコースだが、2コーナー途中から向こう正面の終わりまでの長い区間で僅かに上り続ける
・1,2コーナー、3,4コーナー共にローカルにしては緩やかな弧を描いており、コーナリングは容易

このコースを使用するOP以上の競争

G3
エルムS(3上)


コース考察

○外枠優勢

  札幌ダート1700m・補正込み枠順別1着割合(2018年~・1勝クラス以上・14頭)
札幌ダート1700m・補正込み枠順別馬券内割合(2018年~・1勝クラス以上・14頭)

 札幌ダート1700mのコース上の特性は、同じ週に行われる重賞・レパードSの舞台である新潟ダート1800mと全くの対極に位置している。
 つまり右回りでスタートしてすぐ1コーナーを迎え、さらにコーナー角も緩やかで全体的に丸みを帯びた形状であるという特性を有している。

 であるならば、本来は内で立ち回りやすくなるのが自然であるはずだが、実際はそうはなっておらず、新潟ダート1800mと同様に内不利・外有利になっている。
 ダート自体が本質的に外有利なことが多いと言ってしまえばそれまでだが、少しだけ掘り下げて考えてみたいところ。

 まずスタートから1コーナーまでの距離が短いのは上述の通りで、札幌は東京を除いた中央9場の1700m・1800mダートの中で最も短い(東京は1700m・1800mダートが存在しない)。
 基本的にスタートから1コーナーまでの距離が短いと、外枠の馬が内に寄せづらくなり序盤に外々を走らされるため、内枠有利を生み出しやすい要素になり得る。これは札幌と同じくスタート直後の直線が300m以下の京都でも同様の傾向が出ている(ただし京都は根本的に内枠有利を作りやすい形状をしているのだが)。

 しかし、この要素を有していながら内枠の馬は苦戦傾向にあるというのが実情。ということは、他の要素が内枠の馬の台頭を妨げているということになる。
 その要素として考えられるのが、緩いコーナー角と丸みを帯びた形状である。
 以下次のデータと併せて考えていきたい。

○後方一気はほぼ不可能

札幌ダート1700m・全頭脚質分布(2018年~・1勝クラス以上・14頭)
札幌ダート1700m・馬券内脚質分布(2018年~・1勝クラス以上・14頭)
内側の円が馬券内・外側の円が総数

 札幌競馬場は芝・ダートともに最終直線が短く、後ろの方から勝ち負けするためには早めに動いていく必要がある。
 緩いコーナー角はそれを明確に実現可能にしている。つまり、コーナーで速度を緩める必要がなく、強気に動かしていける。
 また、場合によってはかなり早い段階から動かしていくことになり、それがデータ上先行とカウンティングされている場合もある。

 それにしても極端な結果だが、この先行群の中には他のコースと比べて異常に多い捲り勢が含まれている。
 今回先行群全体の頭数が274頭だが、そのうち2コーナーを7番手以下で通過したのは55頭と約2割を占める。これらが全て4コーナー通過を4番手以内に済ませ(=道中で上がっていき)先行としてカウントされているため、このような歪な結果となっている。
 また、ここで気にしてほしいのは、この途中で上がっていった捲り先行群の成績が【11-13-7-24】と異常に高いこと。

 捲りを打つためには、当然ながら前が塞がっていないということが絶対条件になる。
 基本的に内から捲ることが難しいのは、内には他の馬も集まるためであり、捲るためには外から動いていくのが基本となる。

 つまり、札幌ダート1700mの本質は、向こう正面から4コーナーを抜けるまでに勝てるポジショニングに付けられるかという部分に集約されており、その実現性を高めやすいのが上述の外枠、ということになる。

 新潟ダート1800mは構造上内枠では戦いづらくなる要素が大きかったがために内枠が不利になっていたが、札幌ダート1700mでは構造上外の方が戦いやすい要素が揃ってしまっているため、結果外枠の成績がいいということである。

 ただ、外を回しても十分勝負になるということは、裏を返せば出走馬の多くが能力をフルに発揮させやすいということでもある。
 そういう捉え方をするならば、札幌ダート1700mは馬の地力を推し量るのに適したコースの一つであるといえるだろう。

参考タイム

なお、馬場状態や頭数等を一切考慮していない平均値である。


過去のエルムステークスラップ推移

 道中の3.5F区間は僅かながら上り勾配となっている区間で、緩いとはいえコーナリングをすることもありそこで若干ペースが緩む。
 それ以降は基本的に平坦で、早めに動いていきたいというコースの特性もあってペースはじわじわと上がっていく。
 最終1Fだけがくっとラップが落ちるのも、全体的に前のめりなレースになる分であろう。

 古馬のダートOPというレベルの高くなりやすい条件であることや、平坦な札幌コースであること、さらに早めに動いていかなければいけないという事情が合わさり、明確にスローペースに落ち着く展開にはならない。
 これが逃げ馬の不利や捲り先行勢の上位進出をアシストしている部分も少なからずあるだろう。

 タイム的には、単純な平均値だけで言えば3勝クラスのそれと比べて約1秒早くなる。
 元々トリッキーな部分が少なく地力勝負の志向が強いコースであり、時期的にも先々を見据えた馬が割と使いやすい条件であるため、条件戦と時計差は出やすい。

 なお、上位に来る馬はデータ上先行が圧倒的に多い。
 本当に最初から最後まで前を張り続けた馬はそう多くないのだが。


まとめ

 コース的には癖はあるものの、どちらかと言えば実力馬が順当に勝ち負けしやすい形態をしている。
 長くいい脚を使うことができるという適性は求められるものの、小手先の巧さだけでどうにかなるコースでもない。

 エルムSという重賞を考える際にも基本的には同じで、ロンスパ適性を持った能力の高い馬を狙いたい。
 できれば東京や阪神といった、札幌同様実力主義志向の強いコースで勝っている馬をピックしたいところ。


文責:もじゃ

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