チョコレートミント

  31歳最後の日、31でアイスクリームを食べた。選んだフレーバーはもちろんチョコレートミント。

  〝チョコミン党〟なんて言葉が作られるくらい、チョコレートミント好きが大勢いるようで、うれしくなってしまう。しかし、苦手という声も少なくない。「歯磨き粉の味がする」と言う人たちは恐らく、チョコレートミントよりも先にミント味の歯磨き粉を知っていたのだろう。わたしがチョコレートミントに出会ったのは、ミント味の歯磨き粉に出会うよりも前、幼稚園か、小学校低学年の頃だった。家族で出かけた大型スーパーで、偶々幼馴染に会った。フードコートのアイスクリーム屋の前で、彼女はどのアイスにしようかと悩んでいるところだった。「チョコレートミント」わたしの知らないその味を彼女が選び、わたしも真似して同じものを買ってもらった。おいしい!スーッとして、でもチョコレートが甘くて、不思議な感じだった。それ以来、わたしはずっとチョコレートミントの虜になっている。あの色もいい。いかにも冷んやりとしていそうで、それでいて優しい。

  アイスクリームの移動販売車が、近所を回っていた時期があった。夜に外出するというだけでもわくわくしたのに、アイスクリームを買ってもらえるなんて夢のような出来事だった。暫くして、その販売車はわたしの家から徒歩1〜2分の場所に常駐するようになった。買わなくても、あの白とピンクの可愛らしい車を見るだけでウキウキした気分になった。しかし、いつのまにかおじさんはいなくなり、あの車だけが虚しく残された。中学への登下校、どんどん錆びていく販売車の横を自転車で通り過ぎる。いつ撤去されたのかは覚えていないが、今はもうない。変わっていくもの。変わらないもの。今でもチョコレートミントが好きだということが、わたしはたまらなくうれしい。

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