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【LAPRAS CAREER流】ITエンジニアの職務経歴書の書き方(目的編)

はじめに

LAPRAS株式会社の渡辺 多加史です. 2015年から人材紹介会社にてITエンジニアの方々の転職支援に従事し, 2018年からIT業界向けのエグゼクティブサーチに取り組んできました. 現在は, 機械学習を活用してより善い選択肢を提示するエンジニアの方向け職業紹介サービス, 「LAPRAS CAREER」の事業責任者をしています.

まずは, このnoteを手に取っていただきありがとうございます!!

これはLAPRAS Advent Calendar 2021の9日目の記事です. 今回は, ITエンジニアの方に向けて, 職務経歴書の書き方について書いてみました. 前編にあたる目的編と, 後編にあたる作成編の2部構成でお届けします.

ぜひ, お時間のある時に読んでいただけたら嬉しいです.

誰のための文章か

差し迫った転職活動や将来を見据えた準備として, 職務経歴書を書くことになったITエンジニアの方々を想定しています.

特に, 「職務経歴書の書き方がわからない…!!」, 「ひとまず書いたけど, どうブラッシュアップしたらいいのかわからない…!!」という悩みをお持ちの方に宛てて書きました.

何のための文章か

【LAPRAS CAREER流】ITエンジニアの職務経歴書の書き方は, 前編と後編を通して, 職務経歴書の書き方を構造的に理解しようとするものです。職務経歴書の書き方を構造的に理解するには, 以下の要素を抑える必要があると考えます.

  • 職務経歴書は, どのような読者を想定すべきか

  • 想定される読者に対して, 何を書くべきか

  • 書くべき事柄を, どのように書くべきか

なお, この文章では特に断りのない限り, 「読者」を「採用担当者」の意で用います.

サマリー (忙しい人向けに30秒で要約)

  1. 職務経歴書の目的:読者である採用担当者に向けて「期待する価値を安定的に提供できる人材であると納得させること」が職務経歴書の目的となる. 納得してもらうために, 「経験と強み」, 「転職理由(衛生要因)」, 「やりたいこと(モチベーション)」の3つを保証として職務経歴書を構成する.

  2. 職務経歴書の読まれ方:職務経歴書は2通りの読まれ方が想定される. 一つは, 端的かつ明確な基準でスキャニングされるパターンであり, もう一つは経験の詳細まで目を通し, ハードスキルだけでなくソフトスキルも読み取られるパターンである.

それでは, 本題に入っていきましょう!!

職務経歴書を書くのは難しい…??

「何を書けばいい??」, 「どれだけ詳細に書けばいい??」
こうした疑問を感じた方は少なくないはず.

LAPRAS CAREERは, より良いキャリアを目指すLAPRASユーザーの皆様に向けたエージェントサービスです. サービスを提供する中で, 多くのお客様から「(職務経歴書が)うまく書けないから見て欲しい」とのお声を頂戴してきました.

職務経歴書がうまく書けない原因はなんでしょうか? 裏を返せば, 何が明らかになれば職務経歴書がうまく書けるのでしょうか?

そもそも, 職務経歴書は読者である採用担当者の方々に読まれる文章です. 採用担当者という読者を具体的に想定できれば, 彼らのニーズに合致した内容を, 彼らが好む読み方に合わせて提供することができそうです.

ですが, 言うは易く行うは難し. 日ごろから採用担当の方々とお話しする機会でもなければ, ニーズや職務経歴書の読まれ方など知りようがありません. 故に, 以下のような迷いが生じると考えます.

読者のニーズが不明なので…

  • どのような項目に即して書いたらいいのか分からない

  • どの経験やスキルを取り上げるべきか分からない

職務経歴書の読まれ方が不明なので…

  • 全体のレイアウト, 各項目の配置(順番)はどうしたらいいか分からない

  • 職務経歴の詳細はどの粒度で書くべきか分からない

今回の目的編では, 読者のニーズと職務経歴書の読まれ方について解説することで,「 どのような読者を想定し, 何を書くべきか」がクリアになることを目指します.

読者のニーズを知る

採用活動における合否判定の観点を知れば, 職務経歴書に何を書くべきか見えてくるはず.

職務経歴書に何を書くべきかを知るために, まずは, あなたの職務経歴書の読者である採用担当者が取り組んでいる, 採用活動の目的を紐解いていきたいと思います.
採用活動の目的を知ることで, 読者が目的を達成するために必要とする要素(=ニーズ)が理解でき, ニーズが理解できれば, 職務経歴書に何を書くべきかが明らかになるからです.

採用活動の目的とは

採用活動の目的についてはさまざまな表現があり得ますが, ここでは「組織や事業に対して, 期待する価値を安定的に提供してくれる人材を採用すること」と定義します.

もちろん, この定義に対して異論や反論はあるかと思いますので, より良いものがあればぜひご指摘、ご提案いただけると嬉しいです…!!

ここで「期待する価値」とは, 採用した人材に役割や業務を全うしてもらうことで創出してほしい有形無形の良い結果のことです.

また「安定的に」とは, 採用後にモチベーションの下落に伴うパフォーマンスの低下や, 短期の離職が発生せず, 価値の提供が続くことを指します.

この定義においては, 採用した人材が提供する価値が大きいほど, またその価値が長期にわたって安定して提供されるほど, その採用を成功と呼ぶことができます. 

それであれば, 応募先の企業から期待される価値を, 安定して提供できることを証明すれば, 転職活動はうまくいくはずです.

採用活動の目標を達成するために, 採用選考を行う

さて, 応募してくれた方が, 期待する価値を安定的に提供してくれる人材かどうかを見極めるために, 企業は採用選考を行うものとしました.
採用選考の目的に即して考えると, 採用担当者は書類選考や面接を通し, 概して以下3つの観点からスクリーニングすることになります.

①期待する価値を創出するために必要なスキルを保有しているか

  • ハードスキル

    • 経験した開発環境, プロジェクトの内容とプロジェクト内での立場, 創出した成果など

  • ソフトスキル

    • レジリエンス, リーダーシップ, 調整力, 内省力など

②短期離職の恐れがないか

  • 各社の転職理由

    • モチベーションを下げる要因(=衛生要因)が社内にあるか

③長期にわたって価値を発揮していただけるか

  • やりたいことが明確であるか

    • これまで経験してきたことと, 今後やりたいことに一貫性がみられるか

  • 候補者のやりたいことは自分たちの会社で実現できるか

以上の内容を鑑みると, 

  1. 期待されている価値を創出するのに十分なスキルがあるよ!

  2. 入社後すぐにモチベーションが下がる恐れはないよ!

  3. あなたの会社でやりたいことを実現できるからモチベーションを維持して活躍するよ!

ということが伝われば, 選考を突破できるということです.これを採用選考の中で説得力を持たせて伝えることが鍵となります.

採用選考では, まず職務経歴書を基にスクリーニングがなされる

採用選考の中で何を伝えるべきかが分かってきました. ここからは採用選考における職務経歴書の扱いを見ていきます.

一般的に採用選考は, 以下の流れで進みます.

  1. (カジュアル面談)

  2. 書類選考

  3. 選考面接(複数回)

  4. オファー面談

最初の選考プロセスにあたるのが書類選考であり, その目的は, 応募してくれた候補者を特定の基準でフィルタリングし, マッチしていると思われる方を面接に進めることです.
くどい様ですが, マッチしているとは期待する価値を安定的に提供してくれる人材であるということです.

書類選考では, 職務経歴書を元に採用基準に合致するか否かが判断されます. 書類選考でのスクリーニングの方法は企業ごとに異りますが, 以下の2パターンに集約できると考えます.

パターン① 端的で明確な書類選考基準でスクリーニングする

一番ポピュラーなスクリーニング手法です. こうした企業では, 採用の役割を担う人事の方々が書類選考で大まかにスクリーニングを行い, 明らかにフィットしない方はお見送りとさせていただきます. その際, 「Webサービス開発2年以上」といった端的で明確な基準で合否を判定します. 次いで, 基準を満たした候補者の方を, 今度は面接官であるエンジニアの方が面接を通して合否判定します.

パターン② 職務経歴書の全文から多くの情報を汲み取りスクリーニングする

職務経歴書全文を舐めるように読み込み, 書類選考時点で厳密にスクリーニングする企業もあります. パターン①とは異なり, 端的で明確な基準の有無以上に, 多くの情報を職務経歴書から掬い上げ, ハードスキルだけでなく, ソフトスキルまで理解します.
こうした企業では, 書類選考から見える候補者像と面接でお会いする候補者像の誤差が少ないケースが多く, 過去私が担当したクライアントには, 書類選考合格後のオファー提示率が64%という企業様がありました.

このように, 職務経歴書は応募する企業ごとにその扱われ方が異なるものの, スクリーニングを通過すべくして通過する職務経歴書を作ることが重要であることに変わりはありません. いずれの読まれ方においても, 読者に以下の点を理解してもらうことが重要です.

  1. 期待されている価値を創出するのに十分なスキルがあるよ!

  2. 入社後すぐにモチベーションが下がる恐れはないよ!

  3. あなたの会社でやりたいことを実現できるからモチベーションを維持して活躍するよ!

次に, それぞれのパターンで想定される職務経歴書の読まれ方を見てみることで, 伝えたいことをどのように伝えるのが良いか考えていきます. 

職務経歴書の読まれ方を知る

読者によって職務経歴書の読み方が異なります. そのパターンを見てみましょう.

パターン① 端的かつ明確な基準でスクリーニングする

読者としては, エンジニアではない採用担当の方などが該当するかと思います. 多くの場合, 複数の条件を基準に設けてスクリーニングを行い, 端的な選考基準を満たす記載の有無を職務経歴書の中で探します.

以下は基準の一例です. 

  • 「Rails + Reactでの開発経験2年以上」

  • 「Railsでの開発経験2年以上」 or 「Laravel, Djangoなど用いた開発3年以上」

  • 「静的型付け言語での開発経験 + 5名以上のメンバーをリードした経験」

この読み方(スキャニング)に対しては, 職務経歴書の冒頭1ページ目に, 分かりやすく, 読者が求める経験を記載する方法が有効と思われます.

パターン② 職務経歴書の全文から多くの情報を汲み取りスクリーニングする読者

元エンジニアであるなどして技術のわかる採用担当の方,  または採用に強みを持つCTOやVPoEの方ですと, 職務経歴書から相当な情報を汲み取ることが可能となります. 具体的には以下の観点から職務経歴書を読み込み, 情報を取得します.  

  • 求めるハードスキルに照らし合わせて職務経験を詳細に確認

    • プロジェクトの難易度や, その達成に必要な技術力を想像する

    • GitHubや技術ブログの内容から技術レベルを推し量る

  • 求めるソフトスキルに照らし合わせて職務経歴書を詳細に確認

    • 各プロジェクト内での立ち位置や働きぶりを想像する

    • 文章の書きぶりからお人柄をイメージする

こうした全文を舐めるように熟読する読者に対しては, 相手の求めるスキルが発揮された経験をいくつか取り上げ, それらについて職務内容の詳細を記載する書き方が有効と考えられます.

このように, 読者によって職務経歴書の読まれ方が異なりますが, いずれの読者に対しても, 期待する以上の価値を安定的に提供できる人材であることを文章で納得させることが職務経歴書の目的であることに変わりはありません.

目的編のまとめ

ここまでお付き合いいただいてありがとうの気持ちです!!

目的編のまとめとして, この文章を通してお伝えしたかったことをまとめます.

採用の目的は 期待する以上の価値を安定的に提供してくれる人材を採用することであり, スクリーニングのために採用選考を行う. そして, 職務経歴書を用いたスクリニーング手法は大まかに2通り想定される.

一つは端的かつ明確な基準で, シンプルに必須事項に該当する内容があればOK(なければNG)という手法であり, 職務経歴書の冒頭に分かりやすく, 読者が求める経験を記載する方法が有効である.

もう一つは, 職務経歴書からハードスキルだけでなくソフトスキルも読み取り, 書類選考時点でより厳密に合否判断を下すパターンである. こうした読者に対しては, 相手の求めるスキルに即した経験をいくつか取り上げ, それらについて詳細に記載する書き方が有効である.

続く作成編では, 両方の読者のニーズに満たした上で, 期待する以上の価値を安定的に提供できる人材であることを文章で納得させられる職務経歴書の構成を考えていきたいと思います.

結びにかえて

最後に, いちエージェントとしてのつぶやきを.

我々エージェントとしても, サポートしているお客様がご興味をお持ちくださった企業から書類選考でお見送りとなってしまうのは辛いです. お見送りを通知するメールの作成は, 7年間エージェントの仕事をしていても慣れるものではありません.

その一方で, 強みや志向を言語化し, 読者のニーズを理解すれば, かなりの確率で書類選考を突破できると考えています.

手前味噌ですが, 過去3ヶ月(本年9~11月)にLAPRAS CAREERのサポートを受けてくださったLAPRASユーザーの皆様の書類選考通過率は84.4%でした. 前提として「お客様が素晴らしい」ということはありますが, それでも, 安易に「受かる」企業ばかりにご応募いただくのではなく, 最善のマッチングを目指して, チャレンジングな挑戦(応募)をしていただいた上での結果だと自負しています.

故に曰く、彼を知りて己れを知れば、百戦して殆うからず。
彼を知らずして己れを知れば、一勝一負す。
彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆うし。

p.52『新訂 孫子』(金谷 治 訳注 岩波書店)
*改行は引用者による

作成編はこれから書きます…!! 用意できておらずにすみません…!!
もし「作成編も気になる」と思っていただけた方がいらしたら, ぜひ”♡”いただけると記事を書く励みになります…!! 

また, LAPRAS CAREERでは独自に作成した雛形を用いて書類選考合格に向けた校正のサポートを差し上げています. ご興味のある方は, ぜひお気軽にLAPRAS CAREERをお尋ねください!!

ご一読いただき, ありがとうございました!!
明日以降もLAPRAS Advent Calendar 2021をお楽しみに!!


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