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やさしい手ほどき~On Elegance②  エレガンスの危機?

昨夜は久しぶりに日本のドラマを視聴しました。ネットフリックスの「新聞記者」です。初回から、ズブズブと政治のタブーに切り込んでいて、興奮してしまいました。日本もこういうドラマが作れるのですね。そのことにほっとしています。主演の米倉涼子さんの抑えめな演技も悪くない。それに、いいお顔になられましたね。美しいだけでなく迫力があって。

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こちらの画像は https://spice.eplus.jp/articles/297665/imagesより。「Netflixシリーズ『新聞記者』 Netflixにて全世界同時独占配信中」

間違い探し

一方で、本筋とは無関係な部分で、「これが今の日本か」と驚いてしまったことがあります。フランス人夫と息子達と共に視聴しましたが、彼らにも衝撃だったようで、質問多し。

「この髪型はどうして?」
「なんでこの人(男性)、口紅つけているの?」
「スーツが変だよね?」
「ズボンが短くない?」
「なんで部屋の中でボネ(スキー帽)被っているの?」

感じ悪いですよね、ごめんなさい。悪気はないのです。フランス人の視点だと、こういう疑問が出てしまうというのを出羽守としてはお知らせしたくて。どういう疑問かというと、

髪型ーー若い男性記者の頭、前髪が長くてもっさりとしたスタイル。顔が殆ど見えません。
フランスの一流新聞社の会社員はきりっと短髪で、こういうカジュアルなヘアスタイルはしていない、と思います。
ミュージシャンやクリエーターといった自由業の方なら「ええ、ええ、どうぞご自由に」と思いますが、社会的に地位が高い人などにも面会する職業の人が、こういうヘアスタイルというのはいかがなものでしょう。

ついでに、ユースケ・サンタマリアさん(わたし、この方大好き♡)が演じる経済界大物の髪型も、前髪長くてカーリーヘア風。これも、フランス社会の経済界重鎮の方のヘアスタイルとしてはあり得ないと思う。

念のため……これはスタイリストの方を責めているのではありません。実際に日本ではこういうヘアスタイルが会社・社会で許容されていて、スタイリストの方は、ただ単に現代の日本を再現されたまでのこと、というのは重々理解しています。


口紅ーー新聞配達するような若い男性が早朝からこんな苺のような唇をしていることへの違和感。日本のドラマでは男優もここまで目立つメイクも普通なのかも知れないけれど、男性のメイクは極めてレア(メイクしているとわかるようなメイク)なフランスからすると、「なんで、この人口紅塗っているの? 」と疑問が湧いてしまうのです。

スーツが変ーー国家公務員たちのスーツ、あれはジャージー素材なのでしょうか。一見ツィード風とも言えるけれど。いずれにせよ、ジャージーやツィード素材のスーツは役所やオフィスで着るものではありません。とにかくカットもカジュアルですし……。あと、昨今でもスーツの下にVネックのセーターとかベストを着るのですね? 1950年代かと思いました。役所内はそんなに寒いのでしょうか。

フランスでも、ビジネスルックのドレスダウンが進んでいますが、スーツで決めなくてはならないときは、寒くてもジャケットの下はワイシャツだけ。寒い季節は、スーツの上に、きれいな色の薄手のマフラー(参考画像のリンク)を巻き、テーラードコートのようなものを羽織るというスタイルです。カジュアルでOKな日は、ネクタイはせず、ワイシャツの上にスポーティブなセーターを着て、いざとなったらピシッとしたスタイルに変身できるような格好をします。靴はもちろん皮の紐靴でね。

ズボンが短いーー男性のスーツのズボンの丈が1,2センチ短すぎると思います。革靴を履いたとき、かかとの部分(底を含め)が半分くらい隠れる長さが妥当ではないでしょうか。

室内での着帽ーー帽子がファッションなのは分かりますが、基本的に、男性は室内では脱帽すべき。女性はまた別ルールがあります。
人気のニット帽などはその位置づけが微妙ですしフランスでもそこら辺は柔軟になってきましたが 女王陛下に会うとき(いつ?)や、教会に入場したら、「男性は脱帽すべき」ということは知っておいた方がいいかも。

その他、わが家の男子たちは見逃していましたが、わたしは、主婦役の寺島しのぶさんの自宅での装いに戸惑いを感じました。庶民っぽさを演出しているのでしょうが、膝下丈のスカートに、足首丈の白いソックスという組み合わせでした。
これ、わたしも日本に住んでいた頃はよく見ていたので気に留めていませんでしたが、欧米での生活が長くなった目で見ると、「スカート+肌色の足+ソックス」というのは子どもの服装であって、大人の女性の格好としてはちぐはぐに感じます。
フランスでは、家でのスタイルは、ジーンズなどのパンツルックが多いかな。冬場はソックスも履きますけど、ソックスは白ではなくて、トップスの色に合わせたり、遊んだり、と色・柄にも拘っている人多いかも。
年輩の方やコンサバな方は寒くともスカートを纏いますが、そういう方は足元は靴下ではなくタイツ、それも装いに合わせたカラータイツです

……と、「やさしい手ほどき」と謳っておきながら、辛口なわたし。悪しからずお許しを。
これはわたしがこの十年余り、気になっていたことなのです。日本のファッション・センスが揺らいでいる気がしてならない。バランスが悪かったり、TPOが間違っていたり、主張が分からない格好だったり。
「フランスはフランス人の着こなしがあり、日本には日本人の着こなし方があるんだからいいじゃないですか」
という声も聞こえてきますが、うーむ。洋服は西洋で生まれ進化したものですから、それを我流に着こなすにしても、やはり守るべきベースラインがあると思います。
それに、せっかく装うのなら、エレガントでありたいではないですか。たとえそれが仕事のためであろうと、家にいるための装いであろうと。
できるだけエレガントに、どんな日もエレガントにしたくないですか?

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ちょっとしたコツさえ掴めば、着こなしはぐーんと良くなるもの、ぐーんと楽しくなるもの。
次回は、そんなお話しをしたいと思います。

では引き続き、Stay safeで頑張りましょうね。
à bientôt!


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