はじめました。(副題:ゴマダラカミキリの朝)

とある朝。久々の「何もしなくていい」休日を過ごし、寝すぎて痛くなった腰を押さえながらベランダへ出た。7月。サッシに羽アリを運ぶ小さいクモがいた。それ用に買った椅子に腰掛けタバコに火をつける。昨日エアコン付けっぱなしで寝落ちしてしまい冷えすぎた身体を日本の夏の湿度が撫でた。

灰を落とす。右側に黒い塊が見えた。白い斑点のある硬そうなボディと長い触覚。
子供のころに昆虫博士を経て昆虫カメラマンになろうと志していた僕はそれが何かすぐに分かった。ゴマダラカミキリ。敵だ。その時期の80cmくらいの背丈しか無かった僕の5cmくらいの指をこいつは食いちぎったのだ。そのトラウマだけではないと思うが、それを機に僕は虫に対してのパーソナルスペースを広めに取ることになったのだから。くそが。

そんな敵が、油断していた僕の目の前に現れた。もう僕の背丈は倍以上ある。今ならこいつを叩き潰すことだってできる。嫌だから殺虫剤使いたいけど。
怖がりながら動かないでくれと凝視する僕はここで色々なことに気付く。朝とは言え日本の夏は暑い。温暖化も進んでいるらしい。ひとつめ、こいつはベランダの内側のフェンス、つまりは影にいるのだ。「だよな、暑いよな」と僕は思った。ふたつめ、思いの外小さい。そりゃ僕の背丈が2倍になっているのだ。そういやこいつは小さい。雑魚が。みっつめ、僕は煙草を吸っている。そしてこれから仕事に行く。そう、大人なんだ。

そう思うとこんな野郎に構ってあげる必要もないじゃないか。ちょうど煙草も短くなった。100均のゴミ箱みたいなスチールの灰皿に吸殻を捨てて、小心者の直らなかった僕は普段の0.7倍くらいのスピードで動き、1.1倍くらいのスピードで窓を閉めた。「お前、夜には帰っとけよ」と思いながら。


これがゴマダラカミキリ。

はじめまして

遅ればせながらご挨拶。宮崎出身、東京在住。好きな食べ物はパッタイで嫌いな食べ物は長ネギ。お仕事はコーヒー屋。ライフワークとして写真家。
日によって元気だったり元気じゃなかったり元気すぎたりする。元気寄りな日にやってみようとnoteを始めてみます。記録に近いかも。
そんな感じ。よろしくお願いいたす。

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