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『OKIB』小生、居酒屋の親父です。25の頃から商売をしていまして、最近は立ち喰いそば屋を営んでいます。

小生しょうせい、居酒屋の親父です。25の頃から商売をしていまして、最近は立ち喰いそば屋を営んでいます。

店の近くの高校の学生さんたちがよく来てくれてまして、その中にキラッと光る奴がいたんです。ただそいつはとんでもなく生意気で横柄おうへいなもんでしてね。ただ見どころがありまして、それは素直だ、ということです。いろいろと話をしていると、こいつは恵まれた環境で育ったもんだからこういう子になったんだなと思っていました。その子は何人か仲間を連れてきて、どの子も裕福な家庭の子供だというのは見ていてわかりました。

これまでの経験で、あぁこの子をうまく育てられたらなぁと思っていたら、ふと、OKIBという言葉が思い浮かんでました。「これから出世したいならOKIBだ」とその子に言いましたら、きょとんとした顔をしていました。

OKIB。

これは、おこらない、威張いばらないを、今流行の頭文字で表した言葉なんです。彼が高校を卒業してしばらく経ちますが、時たま会って話をすると、未だにOKIB、あの言葉が頭に残って仕方がないと言っています。

かようにいろいろな経験をしてきた人というのは、いろいろなイメージが浮かぶものでして、それでイメージを伝えて答えてあげたんだけれども、そうしたものができる人間が本当に少なくなりました。

私も若い頃、元気がよかったもんでゴールデン街とかでしばしば先輩たちに言葉で張り飛ばされるような経験をしましたもんです。その人たちは見抜いてるんですね、若造の気持ちも、野心も、すべてをね。若造の口がいくら達者でも、経験値を積んだ先輩たちは、修羅場狂気しゅらばきょうきを繰り返したからこそ出てくる一言を返してくるんです。

じゃあそれはどんな言葉だったのかというのは年のせいか忘れてしまいましたが、それは強烈な素晴らしいアッパーカットだったということは覚えているんです。明日のジョーのようにその場に崩れ落ちて、ダウンさせられるような一言が数多くありました。

今はそういう人たちが本当にいなくなってしまったので、今後をうれう親父なのであります。

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