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若者のメタル離れの話

はじめまして。やぴーです。1980年生まれです。ちょうど1990年代が私の10代の全てということになりますね。もうこの時点で、タイトルを見た察しの良い読者様の中には「ああ、そういうことね」と気づいた方もいらっしゃるかもしれませんが、その話は一旦置いておきます。

今現在ヘヴィメタルが世界的に衰退していて、特に日本において著しいということは皆様御存知かと思います。「何故そうなったのか」という考察もたくさん読みましたし勉強になることばかりなのですが、いわゆる「メタル冬の時代」である1990年代、この時代にリアルタイムで10代であった私の世代の視点で語るものは、あまり見ません。しかしながらこの時代を10代の若者として生きたからこそ、後で振り返ったことも含めて「実はこうだったんだ」と言える話もあります。

まず、メタルが衰退した理由を探らなければなりません。が、これは世界的な潮流の事であれば一言で片付きます。ヒップホップ文化が黒人だけのものではなくなり、広く白人にも親しまれるようになったから。これに尽きるでしょう。白人のスーパースターであるエミネムが登場したのもやはり1990年代です。

例えばの話、私の父の時代は大学生のギャンブルといえば麻雀だったそうですが、私の時代では麻雀も嗜みはするけどギャンブルの主役は、昔に比べて射幸性がはるかに高くなったパチンコ・パチスロ、特にパチスロでした。時代によって違うものが主役になるということは、ままあることです。

日本のメタルシーンの前に、まず1990年代の若者にとってのメインストリームが何だったかを探る必要があります。音楽では、やはりまずJ-POPです。ドラマやTVアニメのタイアップでCDの売り上げを伸ばしたアーティストがオリコン上位を占めていました。ロックシーンもそうですが、まだ尾崎豊などフォーク世代の影響も残っていた頃です。昔の言葉でいうバンド小僧が最も注目していたのはV系とパンク。宝島社の「バンドやろうぜ!」という雑誌では毎号V系の特集が組まれ、V系アーティストモデルの楽器が広告のほとんどを占めていました。洋楽のメインストリームでは日本でも話題になったアーティストが聴かれていました。マライアキャリーやヴァン・ヘイレンのバラード、Mr.BIGのTo be with you、ニルヴァーナ、オアシスとかそのあたりです。そして完全に下火だったアイドル文化がモーニング娘。の登場によって再び花開いた時代でもあります。

音楽以外の文化でいうと、1995年には「新世紀エヴァンゲリオン」が放送され、その再放送枠が深夜帯だったこともあり「深夜アニメ」という文化が定着しました。このブームはすさまじく、それまでアニメを見なかった層までアニメを見るという習慣ができました。また、私達の世代における1990年代はゲーム業界においてもスーパーファミコン、セガサターン、プレイステーション、ドリームキャスト、ニンテンドー64とすさまじい勢いでテレビゲームが進化を遂げた時代でもあります。

なんだか関係ないような話が続きましたが、それでは本題です。「ヘヴィメタル」を聴いてる層って、どのような人々、今の言葉でいえばどのようなクラスタだと思いますか?私より年配のメタルヘッズの中にはプロレス好きが比較的多いと思うのですが、これがヒントです。

ヘヴィメタルという音楽は、身も蓋もない言い方をしてしまえば中二病的なカッコよさの世界です。他のジャンルの精神性、例えばパンクにおいては社会への反発、ヒップホップにおいてはマッチョイズムが必須ですが、ヘヴィメタルにおいてはカッコよければそれでいい。パンクやヒップホップの形を借りても、それが形だけであってもいい。本当の真剣勝負でなくエンターテイメントであってもいいし、宗教的だったりファンタジーだったりしてもいい。要するに陰キャなオタクが好むカッコいい音楽がヘヴィメタルである、ということです。囚われる思想がない、言わばファッションであるから色んな音楽を吸収して自在に進化していくという良い面も持っています。

かつて元メガデスのマーティ・フリードマンが「ヘヴィメタルは踊れない人たちのための音楽である」という発言をしたことがあります。踊れる人が聴いている音楽というのはつまりヒップホップやEDMのことであり、そういうムーブメントの外側にいる、自己否定的なはぐれ者のための音楽がヘヴィメタルであるという意味です。

今はいい年した大人がウルトラマンや戦隊ヒーローや仮面ライダーが好きだと言っても誰も咎めない時代ですが、昔はそうではありませんでした。昔はコソコソ楽しむものであって、アニメは子供が見るものという風潮だったし、堂々とオタクが楽しめる趣味といえばヘヴィメタルとプロレス、あとは何かを収集する趣味くらいだったでしょうか。私が10代だった頃は結婚適齢期を過ぎた成人男性がアイドルの追っかけをやってるなんて聞けば異常者みたいな扱いでしたが、今はおじさんが普通にアイドルの追っかけをやっている時代です。

オタクはヘヴィメタルなんて聴かなくてもやっていける時代になった、他の楽しみがいくらでもある時代になった。実はこれが日本においてヘヴィメタルが衰退した、日本特有の原因の一つだと思っています。具体的なバンドの名前なんか一つも出していませんが、結構な部分が説明できてしまうわけです。

続く…と、いいなあ

※続きました。次回、私の青春時代をざっくり振り返る話

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