本感想「言葉が思いつかない人のための語彙トレ55」/近藤勝重氏

 ここ最近は自分の住んでいる場所でも新型コロナウイルスの感染が広がっているのでなかなか外出も出来ず家にいる日々が続いています。気分転換に買い物や旅行を自由にできていたことがどれほど幸福だったのかと懐かしくなりますがここは我慢のところと思いおとなしくしているしかないですね。幸い家にいてやりたいことはたくさんあるのに、簡単に出来る外出などに時間を使ってなかなかそのほかの事が出来ていなかったので自分の中のタスクを確認してうまく時間を使えるようにもしなければと考えています。

 そんな家の中でやりたい事が読書。前述の通り家にいる事が多く、気づけばダラダラとスマホをいじってしまうので、これはいかんと図書館に行ってどさっと色々なジャンルで本を借りてきました。自分で買う本はお金を出すのでどうしても趣味や興味のある事に偏りますが借りる場合はそういう事を気にしなくて済むので手あたり次第に気になった本を読めて凄く良い。読書数も減っているのでこのコロナ禍の時代こそ読書ですよ。

 という事で今回は「言葉が思いつかない人のための語彙トレ55」です。自分自身もそうですが、ネットの中もTV等にしても最近の語彙力の低下って結構危機的なのではないかと思います。これは少し前から言われている事でもありますし、本書の中でも触れられていますが近年は「エモい」や「ヤバい」という1つの単語に複数意味を持たせた言葉が多いことで、語彙力の低下が著しいとの事。SNSなど文字数制限のあるものやLINEなどでのチャットツールはレスポンス重視という部分もあるのでそのような傾向になりやすいとは思いますが、それをそのまま日常生活すべてに落とし込んでしまうと確かに言葉が通じないという状況には陥りそうですね。

 語彙力はそんなに簡単に身につかないだろうと思っていましたが、この本の第2章、語彙を増やすためには「読む・書く・歌う」の3つが重要と説いています。

 本書の中の記載を抜粋しますがまず「読むだけで上達するのが文章」は本を読んでいる人は納得できるのではないでしょうか?本を読むという事は実は結構大変で、小説であれば文字だけが並んでいる中から登場人物を把握し、物語を把握し、そこで何が起こっているかを理解しなければいけない。もちろん理解するためには文章に書かれている言葉はどういう意味を持つかを理解しなければいけなくて・・・と、とても頭を使う作業です。しかし、だからこそ「文章・文字から理解する」ために頭を使う事で自然と表現や言葉が頭に残ることは自分自身も経験があるので、まず語彙力を高めたい人は文章を読め、はとても理に適っていると思います。

 そして「書く」こと。自分もこのnoteはアウトプットのために始めたのでこうして文章を書いていますが、読むことと同様に書くこともとても大変です。「自分の考えを自分の知っている言葉でまったく知らない誰かに届ける」これがどんなに難しいことか。それこそ知っている言葉が少なければ同じ表現しかできません。本書にもありましたが同じ言葉や表現は繰り返すとくどいんですよね。ネットの普及でアニメの考察、小説やドラマのレビュー、個人の小説など色々な文章を目にする事が出来る世の中になったことで、凄く上手な文章を書く人をたくさん見かける事が出来るようになりました。アウトプットによる自分の記憶への定着と、文章力の強化のために出来る限りこうして文章を書くようにしていますが・・・まだまだ自分はその方達の域には到達できていませんね。

 最後に「歌う」こと。歌も最初の「読む」と一緒で、歌詞を覚えてその意味を理解していないとやっぱり上手に歌えない気がします。(もちろん意味を考えずに歌詞だけ覚えれば歌うだけは出来ますがやっぱり歌に共感するには意味を知ってなんぼでしょう)本書の中では70年代フォークの歌詞などが挙げられていますね。個人的には前回の感想でも書いた「ヨルシカ」の曲を聴くたび、日本語はこんなにも色々な表現が出来るんだと感心と感動をしています。前回感想を書いた「春泥棒」はMVを見ていただければわかりますが全面的に「桜」が出てくるにもかかわらず、歌詞の中には1回も「桜」の単語は出てきません。「花吹雪」や「花見」という表現で桜が散っていく情景を表現できるのは流石の一言。他の曲も日本文学や歌人の作品から着想を得ているような歌詞は日本語という言語が持つ素晴らしさを再確認できます。ヨルシカに限らずどんな歌でも歌詞が与える影響は大きいのでやっぱり歌うからにはちゃんと理解して歌った方が作品を作ってくれた人もうれしいのではないかなと思ってみたりします。

本書はこの3つの他にも語彙を広げる方法(思考的なものも含む)がありますので、日本語をもっと楽しみたいという方は一度お目通しくださいませ。

自分も仕事柄ある程度文章は書きますし、人と会話をする機会も多いので言葉には気を付けているつもりですがやっぱり言葉を知っているにこしたことはないと日々実感しています。途中でも書きましたが、上手な文章を書く人は、その組み立て方もさることながら表現の方法が上手いんですよね。

 最後に本書の中にあった1文を自分なりに言い換えて自分の感想(というかまとめ?)としたいと思います。

「決して難しい言葉を使う人が文章が上手いのではなく、自分の知っている言葉を用いて難しいことを易しく表現出来るのが文章の上手い人なのだ」


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