法律事務所、どこで開業するか

弁護士が独立する際に最も重要な選択の一つとして開業地があります。

私の中のこの選択に関する回答としては、「できる限り都会」というのがあります。

ぶっちゃけていえば、独占業務である弁護士業ではよほどの過疎地でない限りどこでも食えないことはないと思うのですが、数ある制約の中、より都心のA都市とそれよりは田舎のB都市と選べるなら、迷わずA都市で開業すべきだと思います。

私自身は、地方区分内の中では一番都心で開業しました。ホームページを作った、弁護士ドットコムの有料会員くらいでは電話もなかなかならない、弁護士会の法律相談担当や裁判所がらみの仕事(後見、管財、管理人)の割り当ても少ない地域ですが、カネなし、コネなしで即独しました。

当時は特別戦略があったわけではなかったですが、結果的に都心で開業してよかったです。

まず、実感として都会から地方の仕事は取れるが逆は無理というのがあります。

地方のお客さんが都会の弁護士に依頼をすることはあっても、都会のお客さんがあえて地方の弁護士に依頼するということはまずありません。

地方のお客さんと都会のお客さん、どちらも狙える都会で開業した方が圧倒的に有利です。地方の仕事でその地方にいるのが必須なのは、国選や役所系の公共事業、裁判所関係の仕事くらいです。裁判所関係の仕事ですらも管財事件の大きい案件なんかは他県の都会にまわってきたりします。

職住近接的に地方で開業する必要がないなら、都会で開業しない理由がありません。

次に、地方は人間関係による制約が多いというのがあります。

地方の単位会では実質的に会務は義務ですし、公共事業的仕事からは逃れられません。やらないということもできるのでしょうが、白い目で見られて現実的には無理なようです。このような愚痴を地方の弁護士からは多々聞きます。

こういったしがらみのため、地方ではほとんど全分野の案件を扱わざるを得ないようです。そうすると特定の分野に経営資源を集中することができず、強みを作ることが難しいように感じます。

地方で独立した知人弁護士などは、やたらと人間関係を気にするようになって悪い意味で保守的になっていくように感じます。その結果、その地方での共通の知人である良筋紹介者からの案件なんかも、私の方に回ってくることが多くなりました。

既にそうなってしまっていますが、今後もWEB会議の普及等により、ますます都会の弁護士が地方のうまみのある案件を持って行ってしまうという傾向は強まると思います。

地方の弁護士が会務や公共事業の負担を負って、都会の弁護士に対抗していくのは理不尽な勝負であり、勝ち目はありません。

統計上の人口対弁護士比率や事件比率などを見て開業地を選べばそこそこ成功できた時代はもう終わりつつあります。



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