分籍手続きは無意味ってホント?

ちゃっかり分籍済みの、法律ネタのいまいさんです。

よく毒親持ちライフハックの中で「分籍するのがよい」「いや、何の意味もないからしなくてよい」などの話が出てきます。
住民票の交付制限などに比べて、数ある毒親持ちライフハックの中でも評価が割れる分籍手続き。果たして意味はあるのか?私は「一定の効果はある」と考えています。今回はそれについて説明します。

「分籍手続き自体は無意味」は本当

まず最初に言ってしまうと、分籍手続き自体は、ほとんど何の意味も持ちません。これは本当です。

生まれた子は通常、親の戸籍に書かれます。
ごくまれな例外を除き、一度も結婚したことがない独身の方は、養親も含め誰かの戸籍の中に「長男」「次女」などの続柄で自分の名前が書かれている形です。ここで親のどちらか一方など、いちばん上に書かれている人を「筆頭者」と言います。

分籍手続きとは、自分を筆頭者にした、自分だけの戸籍をつくる手続きです。

しかし、戸籍は作ったら前のが完全に消滅して二度と戻らないというような仕組みではなく、常に過去のものが辿れるようになっています。遺産相続などの時には、その人が生まれてから亡くなるまでの全部の戸籍を集めたりするのです。
そうやってたどることができるように、前の戸籍がどこで、そこからいつ、どういう理由で異動してきたかも書かれます。

したがって、分籍手続きをしても、あなたの両親が誰なのかは今の戸籍からたどることで知ることができますし、国の定める親族間での扶養義務も消えません。
自分が生活保護を申請するような場合は、虐待やDVの事実があれば、扶養照会という親への連絡を止められる可能性はあります。
しかし、たとえばあなたが(考えたくないですが)分籍後、急に亡くなったりした場合、あれやこれやの手続きの中でやがては必ず親にたどりつくものと考えてください。
また、親が困窮して生活保護の申請をしたりしたら、通常は連絡が来て「扶養をしてもらえないか」と言われる可能性があることも、知っておいてください。

こうした意味では、確かに分籍手続きには意味がありません。
親との縁を切れるわけでも、他人に親子関係がバレなくなるわけでもないのです。

無意味だからこそ意味がある

私は分籍手続きは無意味だからこそ、毒親持ちが取るべきライフハックだと思っています。

繰り返しますが、分籍手続き自体には、これという意味はありません。
それはひとつには、裏を返せば、いくらでも言い抜けられるということです。

もちろんキレそうな親にはバレないのがいちばんではありますが、親も自分の戸籍謄本が必要になることがあります…たとえばパスポートの申請だったりもそうですし、親戚の誰かが亡くなった時にその遺産について事務を行う人が取ったりして、目に入るかもしれません。そんなとき、もしあなたが親の戸籍から出て行って(除籍といいます)いれば、「どういう理由で除籍になったのか」が書かれているのが見えてしまいます。
そんなとき、分籍であれば、「ちょっと興味があったから」「自分も大人になったと実感してみたかったから」などなど、言いようはいくらでもあります。

そしてこれがポイントですが、どんなに毒親が怒り狂い、あなたが形だけ何度謝ったとしても、いったん分籍すると、二度と元に戻すことはできません(厳密には不正であれば戻せる規定がありますが、まずあり得ません)。

勝手に結婚したら「離婚させられる」(離婚すると、通常は元の戸籍に戻る)、勝手に養子縁組したら「離縁させられる」(同上)などのリスクがありますが、分籍だけは「一瞬だけ勝手にやらかせば絶対的に意思を貫ける」手続きなのです。

もうこの時点で毒親持ち的には嬉しいのですが、実は続きがあります。ちょっと小手先のワザを使いましょう。

※分籍の時点で日本じゅうどこでも好きなところを指定できますが、このあとの手続きを行う場合は、この時点ではあまり深く考えなくて大丈夫です。ここで終了する方は、遠くに飛ばしておくことをおすすめします。

われわれは何をしても自由だ

先ほど、「結婚したら離婚させられる、養子縁組すれば離縁させられるリスクがある」と書きました。このリスクは、たとえ家を出て一人暮らしをしたあとでも、戸籍が同じである限りつきまとうリスクです。つまり、もし分籍せずに結婚したら親の戸籍に「結婚によって出て行きました」と書かれるので、結婚したことがバレるのです。
しかもその際、自分が戸籍を異動して相手の戸籍に入ったとしても次の戸籍がどこに飛ばされたのかが書かれるので、その相手の氏名や本籍地までがいっぺんにバレるのです。いや~~~~めんどくさい。波乱の予感しかしない。たとえバレるにしても、せめて小出しにしてほしい。

一方、分籍してしまえば、分籍後は何をしても、分籍後の戸籍にしか載りません。
ということは、親がわざわざ「分籍後の子の戸籍謄本」を手にしない限り、そのあと何が起こったのかは知ることができないのです。
とはいえ、ここで分籍後の戸籍に「婚姻」とか載っていたら、元の木阿弥ですね。結婚するために分籍か!駆け落ちか!と思われるのが目に見えます。怖い怖い。

ということで、です。
いいですか。特に粘着質の親をお持ちの方は、分籍したあと、適当な時期に転籍してください。
適当な時期というのは、「分籍をしたことが親にバレたあとで、結婚や養子縁組をする前」とかです。分籍後の戸籍をいったん親が見て(少なくともしばらくは)諦めたあとで、本番をやる前に移動するのです。

転籍というのは、これまた無意味な手続きで、「本籍地を別のところに変えます」という手続きです。日本じゅうどこにでも飛ばせますから、できるだけ自分とまったく無関係で、想像もつかないようなところに飛ばしましょう。

あなたが失踪した場合、戸籍の附票というものに住民票上の住所が記載されるので、同じ戸籍にいる限り、基本的に住所がバレます。
分籍orそのあとの転籍によって飛ばしたあと、「戸籍の附票と住民票の交付制限」をかけることで、住民票を移動しても親が見られないようにできます。この手続きには住んでいるところの警察署や役所に話すことが必要になるので、「戸籍 制限 住んでいるところの名前」で相談先を検索してください。

また、附票を制限しても戸籍本体は見られるので、その本籍地から住んでいるところを類推するという手口があるのですが、とんでもないところに飛ばしておくことでそれを回避できます。

このくらいしておけば、少なくとも本籍地を知るだけで親の戸籍→分籍後の戸籍→転籍後の戸籍まで辿らなくてはならなくなり、諦める親も多くなると思います。わざわざ定期的にその謄本を取り寄せて結婚や養子縁組をしていないか確認まではしないことも多いのでは。

それでもそのあとに婚姻したりすればその旨が記載されるので、どうしようもなく粘着質な親にはたどられてしまいます。
そういう方は婚姻のとき、気をつけてください。
・相手を自分の苗字にする場合、相手の元の本籍地が記載されてしまうので、できれば相手にもいったん分籍してもらい、縁もゆかりもない地に飛ばしてから入れてください。
・自分が相手の苗字になる場合、相手が分籍済みでなければ結婚の時に新しい戸籍を作ることができます。これまた無関係の地を指定してください。

遠いところに戸籍を飛ばすと謄本の請求が郵送などで手間がかかるようになりますが、身の安全のためと思えば大した問題ではありません。手近に置くと危険なことも多いです。

戸籍や住居を移動したときは、附票と住民票の制限も再度の手続きが必要になる可能性がありますので、しっかり確認してください。

毒親からの戸籍上の逃亡に終わりはない

ぶっちゃけて言いますと、ここまでやっても本当に粘着質な親は追跡してくるでしょうし、正直に言って、絶対完全に逃げ切れる方法も、逃亡の終わりもありません。終わりは相手方が亡くなったときですし、それまでに親族が亡くなったりすれば辿られてくるかもしれません。

分籍すれば、あとは結婚、離婚、養子縁組、何でもありです。
ありですが、どうかその都度、本籍地はなるべく遠くに飛ばしてください。自分だけでなく相手の本籍地から類推される危険にも、十分に注意してください。まあ、いくら分籍転籍したところで、本籍地を辿ることはできてしまうのですが。それにしても、いきなり相手の実家の住所が見えちゃったりしたら危険すぎますからね。
それから、戸籍の附票と住民票の制限を忘れないように。

また、親子の縁は切れないなりに、もし親族の相続などで何らかの方法で連絡があったような場合、自分の側も弁護士などを立てて絶対に直接連絡しないようにするなど、ある程度距離を取る方法もあります。この場合は主に弁護士の管轄です。

反対に自分に万が一のことがあった場合のことは、法律上で結婚していればその相手の方が第一になりますが、そうでない場合(事実婚や同性パートナー、その他結婚によらない形の絆など)、任意後見契約や遺言、死後事務委任契約などの方法で、親との関わりを最小限にすることもできます。このような相談は行政書士、司法書士が得意分野です。逃げたあとの生活が落ち着き、将来のことを考えられるようになったら、こうしたことも考えてみてください。

まとめ

・分籍は無意味だからこそ意味がある
・分籍しても追跡されそうなら転籍を
・本籍地から居場所を推測されないように、無関係なところに飛ばそう
・戸籍の附票と住民票には、見られないように制限をかけられる。自治体名で検索し、相談すること
・結婚や養子縁組の時は、相手の本籍地にも気をつける
・逃亡の終わりは相手方の終わりのみ

私は親とはむしろ程々の付き合いを残すことで安全を保てているので、今のところ交付制限まではかけていません。が、分籍し転籍し、その後も色々と動かしているので、向こうが危険なほど粘着してきたらいつでも引っ越し、制限をかける相談に入れます。

本籍地の移動がひとつ増えれば、親が今の戸籍にたどり着くまでの請求の手間もひとつ増えます。親の方が私の現在の戸籍にたどり着くのは大変で、けっこうな時間稼ぎになれるはずです。先に分籍しておけば、こういう安心感を得ることも可能です。ご参考までに。

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