君が、ここに、いなくても

君が

子供たちと日本へ帰国して

2週間

帰国するまでの1ヶ月、色々なことが在りすぎて

何から伝えていいか分からないけれど

君から貰った手紙を

今も何度も読み返しているよ

君は

世界中で今も続いている不確実な日々を

不慣れな異国の空間で過ごして

とても疲れてしまったよね

それから、僕が想い描いた道筋を進めなくなって

挫けそうなことばかりで

僕の運の無さと無力を自分でも怨めしく想うけれど

君はきっとそれ以上に絶望してしまっていたよね

それでも、僕は希望だけは忘れないように

それだけを胸に

できることをやってきた

2021年はきっと

少しはいいことがあるって

でも、今も収束の兆しが見通せない

長引くパンデミックの所為で

年明けから感情的で

交差しては、また離れていくような口論ばかりが続くなか

突然に君がくれた手紙

君のあたたかくも勇敢な言葉と決断に

僕は涙を零しながら、感謝とともに読んでいました

だから、僕も決して感情的にならぬように

でも正直な気持ちをしたためて

返答の手紙を送った夜

君のいつものやさしい笑顔が久しぶりに見られて

心から嬉しかったよ

その後、子供たちを交えた家族会議を開いて

ふたりで、家族で、納得して

4月の年度始めの始業に間に合うように

君は子供たちを連れて日本へ帰国することを決断したね

そして、僕の方は

後々の人生で

「あの時、最後までやっていれば良かった」とグチグチ悔やまないように

ここに残って、夢の結末を確と見届けることにした

娘と一緒に「がんばって」と言ってくれて

息子も「はい」とだけ頷いてくれて

僕の気持ちを尊重してくれたね

本当に、ありがとう

そして、今

君と子供たちが傍にいなくなって

頭を撃ち抜かれたように、分かったことがあるんだ

家族でよく歩いたレマン湖までの散歩道を独りで歩いて

蒼く透明の湖水がやさしく波打つ音と

それを照らす夕陽のオレンジと

雄大なアルプスの嶺峰の放物線を

独りで眺めていたら

僕が君にきちんと伝えられていなかったことが

分かったんだ

僕の一番の夢は

君と子供たちと、家族でここで生きていきたい

だから、ここでキャリアを創る必要があるんだ

競争の激しい #ローザンヌ のリクルートの所為で

がむしゃらになり過ぎて

きちんと伝えられなくて、ごめんなさい

迷惑と不安ばかりかけてしまって、申し訳ない

だけど、僕はいつだって自分のことじゃなくて

家族のことを一番に考えているよ

君が、ここに、いなくても

描いたストーリーが動き出したら

この場所へ戻ってくることを

「Reconsider_再検討」してくれるって

その答えには、笑ったよ

でも、とても君らしいから

リセットして、日本で待っていて

どんな結果になろうとも

最終章の最後の一行が決まったら

必ず迎えにいくから