『桜嵐記』宝塚大劇場千秋楽ライブ配信を観て

日刊スポーツの村上久美子さんの記名記事(6/28付 デジタル版)より。「珠城りょうは、きれい事ではない、飾りもない『実直な言葉』を発し続けた」という見出しがまず心に響く。
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(前略)
その集大成が、退団公演だ。芝居演出の上田久美子氏が珠城をイメージして「幹が太く大きく、まっすぐな木」という主人公像を描いた。上田氏とは、新人時代から縁があった。上田氏の宝塚バウホールデビュー作が、珠城のバウ初主演作「月雲の皇子」だった。
今作稽古時のインタビューで、珠城は「(上田先生には)節目、節目でお世話になっていて、一緒に挑戦してきたところもある。先生も『月組の皆さんはともに戦ってきた戦友みたいな印象がある』と、おっしゃってくださった」と顔をほころばせていた。
(後略)
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ごく若い頃からの抜擢、これは未来のトップスターともなれば他の方にもみられることなのだろうと思う。珠城さんの引力のすごいところは、初主演の公演で、やはりバウデビューの上田先生と巡り合わせたことなのではないか(それより前にいくつかの新人公演の演出で関わってはいるのだろうけれど)。上田先生は、もちろん他組にも脚本を書き演出をつけているけれど、珠城さんと組んだ時の役のあて方の的確さたるや。そして、その役に応える珠城さんの芝居の才能よ。いわゆるあて書きというより、上田先生がその時の珠城さんにギリギリの挑戦を用意し、それをクリアするに至って珠城さんは役なのか珠城さんなのかわからないくらい観ている我々に感情移入させる現象が起きる!奇跡のタッグ。どちらにとってもきっと人生に必要な者同士。「月組は戦友」という上田先生の言葉を知り、演者と演出家、珠城さんと上田先生の関係に思いを馳せる。人との出会いでさらに光り輝くのが珠城さんらしいなあとも。

千秋楽のライブ配信で見た四條畷の戦の場面。正時(鳳月杏さん)が大田百佑(英かおとさん)にトドメをさした後、朱色の戦装束の正行(珠城さん)が一人で舞台奥から現れた時、珠城さんがまさに真っ直ぐ聳え立つ大樹に見えた。最初からスターオーラに包まれて見えた珠城さんではあるが、本作で周りに纏うオーラがあまりに大きく、眩いばかりに美しくて、まさに今、一人の主演男役スターが完成したのだとあらためて思ったのである。ここからまたさらに東京公演に向けて成長していくのであれば、それはもうこの世のものには思えぬ輝きを放つのであろう。

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