人生の転機における学習の意味

 転機とは、「他の状態に転じるきっかけ」(デジタル大辞泉)を指す。人生の転機は、年齢による変化、家族や職場などの外的環境による変化などによって訪れ、それまでの状態ではいられない予感とともに始まり、他の状況に移行し終えるまでのプロセスのことを指すと思われる。
 私自身は、年齢の節目、転職や異動といった転機をこの10年近くで経験している。
 転職や異動の際は、それまで持っていた環境に紐づけられた知識や技術が新しい場面でも使用できるか試行錯誤され、新しい環境で学ぶことと既に持っている知識や技術の融合が起こった。
 転機は恒常性が失われる危機や不安の感覚を伴うため、その問題の解決のために、情報収集をしたり、社会のことを学んだり、新しい知識や技術を身につけたりといった学習活動のニーズが自然に高められる。放送大学への入学や、研修会への参加、書籍や人との出会いを積極的に求めた。そのことは、新しい環境へコミットしていく時の不安を軽減し、粘り強く課題に取り組む強さを育んでくれた。
 学習は単なる知的な学習だけではなく、経験学習や、人との出会いなど、成人学習で言われている広い意味で行われ、そのことは人生の転機において、その学習の質や種類に応じた新しいステージに移行するきっかけになると思われる。そのためには、そのような経験や出会いの機会に触れ、飛び込み、経験する、行動がそのような思いがけない未来につながっていくと思われる。
 学習活動によって、見識を深め、体験を重ね、人間関係を広げることで、言葉の世界を広げ、また考えを深め、掘り下げ、しっかりさせることで、人生の転機において、社会情勢や個人の状況において、例えば生き方を修正する、よりやりたかった仕事に近づく、より価値観に沿った望ましい生き方や働き方に移行する、人や仕事や環境に出会うことを可能にすると思われる。
 そのような人生の転機において意味を持つ学習活動は、単なる知的な学習ではなく、子どものころ何が好きで、思春期青年期に何に興味を持ち、没頭していたかというような人生を展望するような内省に基づく次元で行われ、また経験に根ざして探索され、掘り下げられる種類のものであると考えられる。また、社会的な相互作用の中で学ぶことも重要であると考えられる。
 また、人生の転機においては、心理的危機や不安、ストレスを感じる状況であるため、それに対処し、問題解決するように学習活動が展開され、そのこと自体が不安を緩和し、危機に対処するために役に立ち、その積み重ねが学習者の進路を導いていくこともあると思われる。

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