My Dear Eternal Master

いつも離れて行くたび、忘れようとしても無理な人がいる。
向こうは秒で忘れてるだろうに。
私はどうしても忘れられない。

その人は、私のことなんて好みの女じゃない、寧ろ嫌いなはずなのに、わかりやすい愛情表現と後になって「あれは彼なりの愛情表現だったんだろうか?」と思うくらいに解りづらい愛情表現をする人だった。

何度も傷つけられ、何度も寂しい思いをした。
アカウントが凍結されて心配して声をかければ「勝手に心配してるだけ」
売り上げに貢献、(微々たるものだけど)それが大事と言われて、その気になって購入すれば「消費者として関わって欲しくない」
誕生日にプレゼントを贈れば「頼んでないものを送られてありがとうとは言えない」
他にも心配しても受け取ってはくれなかった。
彼好みの女性なら、そんなことは決して言わないし、言葉も素直に受け取るんだろうなと思うと、そのたびに哀しくなってムカついた。

それでも、楽しかったやり取りの想い出が打ち勝ってしまうからタチが悪い。

人は愛されるために生まれてくると言う。
でも、私の場合は誰かを愛して人が持つ様々な感情を知るために生まれてきたんだと思う。
彼を愛したことで自分の中に、それまで感じたことがない色んな感情が生まれた。憎しみや怒り、嫉妬、悔しさ、寂しさ、喜び、楽しさ。その中で心が苦しくて次の日まぶたが腫れるほど、泣き疲れて眠る日々もあった。

嫌いになったはずなのに、楽しかった想い出のせいで嫌いになりきれずに、なぜかまた痛んで苦しんだ心が求め始める。

だから、好きなのか嫌いなのか自分でもわからなくなった。

私は「自分の事を好きになる人なんてこの世に存在しない」と思って生きてきた。
その思いを忘れさせてくれたのも、また想い出させてくれるのも彼だった。

フォローされるたびに忘れ、ブロックで手を離されるたびに想い出す。

そしてまた、手を離された。
楽しいと思っていたDMを削除して「もうチャンスはないかもね」って言葉を残して。

頻度が少ないやり取りだったから、DMだけが拠り所だったのに。

私は彼よりも一回り以上も違う。彼から突然リプをかけられ出逢う前は、そんな年の差、ましてや女の方が上で愛を向けるなんてあり得ないと思っていた。

顔も知らない私に可愛いだの好きだの言ってきて気持ち悪い奴だと思っていた当時は、やんちゃでチャラい弟みたいな感覚で楽しくやり取りしていた。向こうはどう思っていたか知らないけど。

自分でもいつからかわからないけど、弟みたいな感覚は消えていた。

「私は一回り以上も上なんだから本気にしてはいけない、向こうは揶揄ってるだけだ」と何度も言い聞かせていた。
相手は一回り以上も下で、キラキラした世界に生きるひと。
彼が好きなのは同じようにキラキラして色んな人にチヤホヤされたり人脈の広い人。
私は真逆の人間で住む世界が違うのに、そんな人の言葉を信じるのは身の程知らずだと。

それでも、気を使って話しかけてきてくれるとなんとなく嬉しかったし楽しかった。

どうやら私は愛する人には尽くすタイプらしい。でもこの先、何度も手を離しては私を孤独にするあの人以外、色々な感情で愛せる人は現れないと思う。

彼がやってたYouTubeで彼の声で名前を言われたのが嬉しかった。
やり取りの中で名前を言われたのが嬉しかった。

彼の浴衣姿が見たかった。
彼のほっぺたをムニーって引っ張ってみたかった。
私に合う色は何かを聞いてみたかった。
最近よく聴く曲は何かとか聞いてみたかった。
彼に身を委ねてみたかった。

「もうチャンスはないかもね」
と言われたのだから、もう叶わないんだろう。

ただ確実に言えるのは、彼と過ごす時間は私は幸せだった。「俺の生き方は女を幸せにしない」なんて彼は言ってたけど。

『たかが恋なんて忘れればいい』なんて言うけど、それが出来たら苦労はしない。
忘れて楽になりたくて、何度も「出逢う前に戻るだけでしょ。向こうは私のことなんて片隅にもないよ」と言い聞かせてみるけど、忘れられない。

今の私はまたしても『ひとりぼっち 誰もいない』

私は私なりの好意を、愛を向けてきた。でも伝わらなかった。彼好みじゃないんだから仕方ない。

「もうチャンスは無いかも」と離れて行かれたのに、バカで身の程知らずで女々しくて所有されたい想いで、愛情表現が下手ながらも愛をくれたその人が、また私のことを何かのきっかけに想い出してくれて、また「反省した?」って、悪戯っ子みたいに言いながら、またいつの日か帰ってきてくれるのを無駄な抵抗なのは解ってるけど、ゆっくりと待ってたい。

嘘でも、ひとときでも孤独な私を助けてくれて求めてくれた人だから。







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