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エッセイ - 松島温泉(さくら市)の覚え書き

さくら市の松島温泉 乙女の湯という温泉に入っていた。

それはいいのだが、俺は温泉に入っている間、暇なので、だいたい何かしょうもない考え事をしている。
だいたいそれらのことは出た後に忘れてしまうことばかりなのだが、今俺はそれを覚えているうちに書き残しておこうと思った。
iPad Proを手に入れたからだ。俺は温泉の休憩室で今、これを書いている。
iPad Proはすごい。最新のやつはどこも売り切れで、旧式の一世代前のやつしか買えなかったのだけど。でも、iPad Proはすごい便利だ。
Appleはすごい。時代は今、GAFAだ。

とにかく俺は温泉に入っていた。
さくら市の松島温泉は、源泉掛け流しだ。源泉掛け流しの温泉が、俺の身体を癒す。

そこでふと、あることに気がついた。
源泉掛け流しの温泉には、源泉の湧出口がある。
源泉掛け流しの湧出口から出たばかりの新鮮で汚れのないお湯を、新鮮なまま全身に浴びるには、どの位置に立つのが最も効果的なのか?
つまり、温泉の浴槽の中で、お湯の循環率が最も高い場所はどこか、てことである。

その時、俺はこのような位置に立っていた。俺の他にお客さんは一人。そのお客さんのいる位置の対岸、対になるように温泉で寛いでいた。

湧出口から近く、その湯は新鮮なものを常に享受できるようになっていると思いたいが、湧出口のお湯が出る方向は俺に向かっていない。奥に向けて流れている。横脇にいる男たちのことなど、湧出口は見向きもしていない。

それでは湧出口の目の前を陣取って源泉を浴びることが最も効果的だと考えられるが、これはレギュレーション違反である。
その場に同乗した人は怒るだろう。赤の他人が、源泉掛け流しの源泉湧出口を独占しているようでは、せっかくの源泉も他人の肌を一回経由したものになってしまう。そこまで考えるかはともかく、何せあまりいい思いはしない。

それでは湧出口から向き合った、湯の出る方向の突き当たりに位置すれば、湯の流れる力により実は一番新鮮な源泉を享受できるのではないか。
浴槽の真ん中に立つことで、堂々と、広いパーソナルスペースを確保できるのも魅力的である。
しかし、距離的な問題がある。いくら湯の出る方向に対応しているとはいえ、湧出口の位置は遠くなってしまう。浴槽のうちのどこに立てば最も新鮮なお湯を浴びることができるのか、結局のところ、これに対する最適解は存在しない。

それに、源泉掛け流しの温泉は全国にある。その浴槽の作りも様々で、100の浴槽に100通りの最適解が存在するだろう。1つの温泉を極めて、最も効果的な立ち位置が分かったとしても、それが他の浴槽に通じるかはわからないのだ。

では、湧出口から流れる温泉の、お湯の流れる方向を知るすべはないのか。頭の中で実験を考えてみることにした。

あまり頭を使ってないので、あと俺はバカなので、咄嗟に思い浮かぶのは、源泉の湧出口から流動性の高い色のついた液体を流すことである。色のついた液体の流れる方向をみることで、何処に新鮮なお湯が行くのか、その場で直ぐに視認することができる。
問題は、汚いということ。源泉掛け流しの温泉に異物を混入させるのは言語道断、この実験を許してくれる温泉も存在しないだろう。(浴槽が汚れてしまうから)

じゃあということで、スーパーボールのような軽い水に浮かぶものを大量に入れるということも考えてみる。
これは全国の温泉でもよくやられていたりする。スーパーボールもあるが、アヒルちゃんだったり、温泉はいろんなものを浴槽に浮かばせたがる。
実験の後にボールなどを回収すればよいわけで、実験の倫理的な問題は解消できるが、問題はこれが信頼に足るデータになるかということだ。例えばの話だが、スーパーボールは意外と重い。水の流れを正しく理解するには、やはり液体の方が信頼できるだろう。

何せこういう実験をやってみて、源泉掛け流しの湧出口からでる源泉の流れを知ってみたいが、何れにせよ、あまり現実的な解決方法ではない。
そこで、Apple lensである。

Appleレンズ。俺もよく知らないが、Apple社が開発している色んな機能のついた眼鏡のことである。
眼鏡と連動した視覚情報から、様々な機能を眼鏡によって操作できるようになる。ドラゴンボールのスカウターみたいに、視界に電子情報を重ね合わせることができるのだ。多分。よく知らんけど多分そういうやつだ。
これこそAR技術の賜物ってやつだろう。色んなアプリが開発されると思う。

Appleレンズがもし発売されたら、水の流れを視認するアプリみたいなものを開発して、色んな温泉の湧出口のお湯の流れを知りたい。
ボタン1つで、お湯の流れが分かるようになる。これはすごい発明だ。

しかし、それは現実的には不可能な話だろう。
Appleレンズにもしカメラ機能などがついていたとしたら、Appleレンズをつけて温泉に入ること、それそのものが盗撮行為とみなされる。
これはもしAppleレンズのようなものが発売されるとしたら、絶対に社会問題として浮き彫りになるものだ。Apple社も対応を迫られる。例えば生活の為にAppleレンズがどうしても必要な人がAppleレンズをつけて温泉に入るというシチュエーションがあったとしても、Apple社は温泉など限られた場所でのみの機能制限を設けることができるだろう。位置情報サービスなどを応用すれば、それも可能なはずだ。

そうするとなると、「源泉掛け流しの温泉で、浴槽の何処に立てば湧出口から流れる源泉を最も効果的に享受できるのか」という下らない目的の為にAppleレンズの専用アプリを開発する人がいて、またApple社も温泉地でそのアプリの使用を容認してくれるとは到底思えない。俺はアプリの開発技術がないのでアプリの開発すら他人任せである。

温泉をより楽しむための攻略方法、色んな思考を巡らせてみたが、なかなか一筋縄ではいかなそうである。そういうことを考えてたら後から大量の人が浴槽に入ってきて浴槽がめっちゃ密集地帯になってきたからそのまま温泉出たのだった(その後露天風呂に入った)
落ちはない。終わり

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