haco/5枚の写真から語る『斜面マンション』都市のラス・メニーナス【第20回】
2020年から「路上観察の現在地を探る」として、いろいろな方をお招きして、その方が見ているものの魅力、また、どうしてそういう視点に至ったかなどを、片手袋研究家の石井公二と編集者・都市鑑賞者の磯部祥行がお聞きしてきたトークイベント『都市のラス・メニーナス』。主としてYouTubeで配信してきた。「ラス・メニーナス」とは、17世紀にベラスケスによって描かれた、見る人によってさまざまな解釈を生じさせる絵画。街も、人によって、まったく異なる見え方をしているはずだ。
現在、平井オープンボックスを会場として、毎月1回開催中。その第20回が2023年9月24日(日)に『秀和レジデンス図鑑』の共著者であり、「街の気になる形」をお菓子にする作家であるhacoさんをお招きして開催された。
hacoさんの活動は多岐にわたるが、『秀和レジデンス図鑑』の共著者であることからわかるとおり、建築鑑賞家でもある。そんなhacoさんがずっと好きなのが、段々畑のような形で斜面に展開する「斜面マンション」だ。この呼び方は、hacoさんがいつしか言い出したものだ。
その斜面マンションの写真を5枚選んで語っていただく…はずが、膨大な写真が届いた。選びきれなかったそうで、しかも再撮影で枚数が増えた…。そこで「5テーマ」を設定しつつ、ここでは数えずにレポートする。まずは代表的な三つの斜面マンションを紹介しつつ、ディテールを語る。
早速の1枚目は、神奈川県横浜市の「ルネ上星川」。相鉄線からも見える、目立つマンションだ。階段状になっているので各部屋ともに眺望も日当たりも抜群、戸建てが連結したような感覚。ただし垂直のエレベーターはないので斜行エレベーターがないと、下から階段を登り続けることになる。
神奈川県川崎市の多摩フラワーマンション(右奥)とハイツ向ヶ丘遊園(左手前)。どちらも黄色が差し色に使われていて、リゾートマンションのよう。ここはhacoさんが初めて「斜面マンション」を意識したところ。
丘陵の上部からアプローチできるものもある。この多摩フラワーマンションは、上の道路から見たら3階建てにしか見えない。
hacoさんはこの斜面マンションが好きすぎて、このトークイベントに合わせて片道30分かけて自転車で訪問、走行動画まで撮影。もちろん会場で公開。その熱意に会場からは大きな称賛が湧き起こる。
静岡県熱海市の熱海パサニアクラブ。28階建てという大規模なリゾートレジデンス。各戸の煙突のようなものはなんだろう? という疑問が発生、観覧していたマンション鑑賞仲間のマニアパレル・バドンさんから「ここ、暖炉があるんですよ」。かつてはゲストが宿泊できる部屋もあったよう。
次いで、いろんな斜面マンションを、いろんな角度で見て行く。斜面マンションは階段を持っていて、そこに各部屋の玄関が面している。なので、自然とご近所づきあいも生じる。こんな広い階段、公共空間のようだけれども関係者以外は入れないのが残念~。
上から階段部分を。植栽があり、公園にしか見えない。とてもぜいたくな空間。
バルコニーの植栽がもはや森。「斜面の魔術師」と呼ばれた建築家・井出共治の手になるもの。
真正面からというか斜めからというか。どうですか。
写真を見て楽しみながら、斜面マンションの建築史や、アニメに登場した斜面マンションと藤子不二雄A先生の関係など、数々の考察を披露。そして最後に「GoogleMapsを使った斜面マンションの探し方」。hacoさんは丹念に毎日のように探していた時期があったそう。見つけては訪問し、調べ、記録していた。長年のその成果が凝縮された今回の『都市のラス・メニーナス』、冒頭25分ほどの動画は下記よりご覧ください。
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アーカイブはこちらから
(1)YouTubeにて冒頭の約25分を公開しています。
(2)配信すべてを有料にて観覧いただけます。
5枚の写真から語る『斜面マンション』都市のラス・メニーナス【第20回】
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