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投資家から見た億万長者の条件
アメリカの金融界でビスタのロバート・スミスを
ビリオネアに導いたビジネスの手法は、固定観念を超えたものだった。
マイアミにいたのは、
取引先のソフトウェア企業のCEOのみ数十名を集めて研修を行っていた。
彼が求める企業経営のあり方をCEOたちに叩き込むためだ。
プライベート・エクイティ(PE)投資会社は、
投資先企業を有機的な集団として扱うことはまずない。
それに、キャッシュを生み出す資産を担保に資金を調達することで発展してきたPE会社が、担保にできる有形資産がほとんどないという理由で、ソフトウェア企業には手を出してこなかった。
がしかし、スミスは、ソフトウェア企業だけに投資してきた。マイアミに集まった投資先企業のCEOの顔ぶれが、それを証明している。
例えば、
セキュリティソフト企業である「ピン・アイデンティティ」のアンドレ・デュランドCEOや、
学級管理ソフトウェア企業である「パワースクール」のハーディープ・グラティCEO。
マイアミに招集された彼らは、人工知能などの差し迫ったトピックについて意見交換が始まるのを待っている。
スミスは、投資先企業の経営を向上させるために、常勤コンサルタントを100人以上配置している。
「彼らは、ソフトウェア企業の経営の基本というものを教わったことがないのです」
ビスタのPEファンドは、リミテッド・パートナーに年間22%のリターンをもたらしている。
「ビスタには、こうしたソフトウェアが企業にとってある種の中枢神経系であることがよくわかっているのです」
スミスが迅速に投資を行う理由は簡単だ。
他のPE投資会社は基本的に、非効率的な企業を見つけ出して経営を改善するやり方に頼っている。
それに対してビスタは、経営状態のよい企業であっても、自分たちならその経営をさらに改善できると考えている。
「私たちは、他のだれもやっていないことをやっているんです」
目に留まったのはテキサス州ヒューストンにあったほとんど無名の企業。自動車の販売代理店向けのソフトウェアを専門にしていた「ユニバーサル・コンピュータ・システムズ」だった。
利益率は、スミスが担当していた他のどの企業よりも高かったが、オーナーたちがキャッシュを譲渡性預金につぎ込んでいることを知り、唖然としたのだ。
スミスはこの会社に、なぜ他の成熟したソフトウェア企業を買収し、自社の経営のベストプラクティスを活用しないのかと尋ねた。
するとオーナーたちは、そのプランはスミス自らに実行してほしいと要求してきた。そして、そのためにスミスがPEファンドを設立するなら、出資者として10億ドルのキャッシュを投資するという。
ソフトウェア契約は、先取特権より優れた担保だというのがスミスの考えだ。
「企業は、先取特権の利息よりもソフトウェアの保守料またはサブスクリプション料金(利用者はモノを買い取るのではなく、モノの利用権を借りて利用した期間に応じて料金を支払う方式。 )を先に支払います。つまり、私たちが最初に支払いを受けるのです。信用貸付としてどちらが優れているかは明白です。私たちのソフトウェアがなければ、企業は営業できないわけですから」
00年、収益性の高い取引を成功させていくうちに、アプライド・システムズという保険ソフトウェア企業の買収資金の貸し手が現れるに至った。
07年には、複数の公益事業向けソフトウェア企業を合併させた。後に電力技術や自動化技術を扱うABBにこの会社を売却した際には、10億ドル近い利益を手にした。
ビスタのエグジット(投資回収、収穫)は、平均すると買収後4.7年で起きる傾向にある。
これに対し、大手PE投資会社のブラックストーンのエグジットまでの期間は、平均5.7年だ。
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