解糖系
解糖系は細胞質で1分子のグルコースから2分子のピルビン酸が生成される過程をいいます。
グルコースからピルビン酸への過程は以下になります。
グルコース
グルコース-6-リン酸
フルクトース-6-リン酸
フルクトース-1,6-ビスリン酸
グリセルアルデヒド-3-リン酸+ジヒドロキシアセトンリン酸
1-3-ビスホスホグリセリン酸
3-ホスホグリセリン酸
2-ホスホグリセリン酸
ホスホエノールピルビン酸
ピルビン酸
解糖系準備期
まず、グルコースからグルコース-6-リン酸の生成には、一般的にはヘキソキナーゼという酵素とMgatp2-(ATP4-とMg2+)が必要になります。
肝臓のグルコキナーゼ(ヘキソキナーゼⅣ)はグルコース濃度が高くなると触媒し始めます。
ATP(C10H16N5O13P3)が加水分解されADPとリン酸(H3PO4)が出来ます。
C10H16N5O13P3+H2O→
C10H15N5O10P2+H3PO4
取れたリン酸がグルコースの6位の水素に結合し、グルコース-6-リン酸(C6H13O9P)が出来ます。
C6H12O6+H3PO4→C6H13O9P+H2O
このリン酸化が直ちに起こるのは、グルコースが細胞外に拡散してしまうのを防ぐためです。
リン酸化により電荷が導入されるので、グルコース-6-リン酸は容易に細胞膜を通過することができません。
細胞内のグルコース濃度は細胞外より低濃度に保たれてます。
これは細胞外へのグルコースの流出を防ぎ、細胞内への膜輸送を促進するためです。
グルコース-6-リン酸からフルクトース-6-リン酸の生成には、グルコース-6-リン酸イソメラーゼという酵素と、Mg2+が必要です。
グルコース-6-リン酸イソメラーゼは、グルコース-6-リン酸のαアノマー(α-D-グルコピラノース-6-リン酸)に優先的に結合し環を開けたあと、アルドースからケトースへと転換させます。
C6H13O9Pの分子式は変わりません。
フルクトース-6-リン酸からフルクトース1,6-ビスリン酸の生成には、ホスホフルクトキナーゼとMgatp2-(ATP4-とMg2+)が必要です。
ここでもATPからリン酸が加水分解され、フルクトース-6-リン酸の1位の水素に結合し、フルクトース-1,6-ビスリン酸(C6H14O12P2)が出来ます。
C6H13O9P+H3PO4→C6H14O12P2+H2O
フルクトース、マンノースなどのヘキソースはフルクトース-6-リン酸になることで解糖系
に入れるようになります。
解糖系のすべての基質がこの反応から合流します。
フルクトース-1,6-ビスリン酸は、アルドラーゼという酵素によって炭素の3番4番の結合が切れ、グリセルアルデヒド-3-リン酸とジヒドロキシアセトンリン酸に分かれます。
C6H14O12P2→C3H7O6P+C3H7O6P
分子式はどちらも同じです。
ジヒドロキシアセトンリン酸はそのままでは解糖系を進めないので、トリオースリン酸イソメラーゼという酵素によりグリセルアルデヒド-3-リン酸(C3H7O6P)に変えられます。
C3H7O6P→C3H7O6P
解糖系報酬期
グリセルアルデヒド-3-リン酸から1,3-ビスホスホグリセリン酸の生成には、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼという酵素とリン酸とNAD+が必要です。
グリセルアルデヒド-3-リン酸が酸化し水素が抜けNAD+がNADH+H+になり、リン酸が付き1,3-ビスホスホグリセリン酸(C3H8O10P2)が出来ます。
C3H7O6P+H3PO4→C3H8O10P2+2H
1,3-ビスホスホグリセリン酸から3-ホスホグリセリン酸の生成には、ホスホグリセリン酸キナーゼという酵素とADPとMg2+が必要になります。
1,3-ビスホスホグリセリン酸から加水分解によりリン酸が取れてADPに渡され、ADPがATPになります。
リン酸が取れた1,3-ビスホスホグリセリン酸は、3-ホスホグリセリン酸(C3H7O7P)となります。
C3H8O10P2−H3PO4+H2O→C3H7O7P
3-ホスホグリセリン酸から2-ホスホグリセリン酸の生成には、ホスホグリセリン酸ムターゼ
という酵素とMg2+が必要になります。
3番目の炭素に付いていたリン酸を2番目の炭素に移動して2-ホスホグリセリン酸(C3H7O7P)が出来ます。
動物の場合、触媒反応を開始するためには中間体の2,3-ビスホスホグリセリン酸が常に少量細胞内に蓄えられていなくてはなりません。
C3H7O7P→C3H7O7P
2-ホスホグリセリン酸からホスホエノールピルビン酸の生成には、エノラーゼ(ホスホピルビン酸ヒドラターゼ)という酵素と、2つのMg2+が必要になります。
ホスホピルビン酸ヒドラターゼにより、炭素の2番目からHと3番目からOHを引き抜き脱水し、ホスホエノールピルビン酸(C3H5O6P)が出来ます。
C3H7O7P−H2O→C3H5O6P
ホスホエノールピルビン酸からピルビン酸の生成には、ピルビン酸キナーゼという酵素とADP、そして、K+、Mg2+かMn2+が必要になります。
ホスホエノールピルビン酸が加水分解されリン酸が取れてADPがATPになります。
ホスホエノールピルビン酸はリン酸が取れてピルビン酸(C3H4O3)になります。
C3H5O6P+H2O→C3H4O3+H3PO4
解糖系においては、2ATPを使い4ATPを回収します。
以上が、解糖系になります。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?