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小さな後悔を抱えて

青森県五所川原市、十三湖のほとりを目指していた日。前日から水が補給できず、道中いくつか見つけた水道も使えなかった。水がないと食事を作ることができないし、何より喉が渇く。

目的地まで残り2キロほど、国道を歩いていると家の庭掃除をしているおばあさんがいた。会釈をすると微笑んでくれたので、挨拶をして声をかけた。「こんにちは。今旅をしていて、もしよかったらお水をいただけませんか?」

耳が遠く聞こえなかったようで、近くまで聞きに来てくれた。「耳が遠くて、ごめんね?」

水が欲しいことを伝えると、大丈夫ですよ。とペットボトルを受け取り、水を汲みに家に入って行った。

綺麗とは言えない玄関に、少し伸びた雑草。そしてたくさんの猫たち。少しするとおばあさんが水を持ってきてくれた。手には荷物下げていて、中にはカステラとゼリーが。

「カップ麺とかあげられたらよかったんだけど、明日買い物に行く予定で何もなかったの。ごめんね。」

とてもありがたくて、思わず握手をした。

すると、「こちらこそありがとう。独り身で、もう何年も人と会話していなかったから」

「もしよかったら庭にテントを張って、今日寝ても良いですか?」そんな言葉が頭をよぎった。

結局、そのままお礼を言って後にした。エゴなのはわかってるけど、だけど、言ってみるくらいはできたのかな。

戻ろうかな?いや、今から戻ってもな。

逃してはいけない瞬間がある。そんな小さな後悔を抱えて。

日本一周中に美味しいご飯を食べるお金に充てさせていただきます。