行徳百景(2)駅前のパチンコ屋
今から3年前、上京初日。
京都駅から電車を乗り継ぎ、
これからの東京ライフ(千葉やけど)に妄想を抱きながら、行徳駅におりたった。
目に飛び込んできた最初の印象をかっさらっていったのが、大きなパチンコ屋だ。
あ、そう言う感じか〜
と思った。
それから数ヶ月。
パチンコ屋の裏にある怪しげな小窓の意味を知った。
そして、A型のじーさんに親しみを覚え始めていた。
A型のじーさんとは、パチンコ屋前の大量の放置自転車を取り締まるわけでもなく、きっちり綺麗に並べ続けているじーさんのこと。
そのじーさんは暑い夏の日も、寒い冬の日もストーブを焚いてまで、常駐していた。
特にやることがない時は、安っぽいパイプ椅子に座って、小説を読んでいた。
彼は絶対にA型。すごく綺麗に自転車を並べていた。
ちなみに、行徳には割と多めの放置自転車パトロールスタッフ?がいる。割と多いからか、暇を持て余してゴミ拾いを始めるスタッフを見かけたこともあるし、そのじーさんと話しているところを見たこともある。
なぜか放置自転車のスタッフは、そのじーさんが守ってる自転車には手をつけなかった。
コロナになってからA型のじいさんを見る頻度が少なくなっていた。
それでもたまには見かけては、おっと思っていた。
そして、今日。
大量にきちんと整頓されて置かれた放置自転車が道からまるっと消えていた。
あれ?と思ってじーさんがいつもいるパイプ椅子を探した。
そこには、
ストーブも、パイプ椅子も、もうなかった。
A型のじーさんが引退した。
あと数ヶ月の私の小さな楽しみが
減ってしまった。
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