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読書感想文 2021

2021.01
『草枕』
-夏目 漱石-

昔、友人におすすめされたのを思い出して、読んでみた。こちらも昨年の『雪国』と同じく冒頭のフレーズが有名な作品。

考えれば外道に堕ちる。動くと危ない。出来るならば鼻から呼吸もしたくない。畳から根の生えた植物のようにじっとして二週間ばかり暮して見たい。

草枕

2021.02
『デザインの知恵 情報デザインから社会のかたちづくりへ』
-須永 剛司-

デザインが社会にどう関わっていくのか、という部分について実際のプロジェクトをもとに語られており、非常に分かりやすい。

おおかたの人は、デザイナーが行っている表現は頭の中で考えたことを外に出していると思うだろう。しかし実際は多くの場合、そうではない。デザイナーは頭の中で考えるよりも表現する行為を優先する。そして自分が表現した結果のなかに考えることのきっかけを見いだし、また、表現する行為のなかで考えている。

デザインの知恵 情報デザインから社会のかたちづくりへ

2021.05
『モラルの起源―実験社会科学からの問い』
-亀田 達也-

学部時代の倫理学を思い出しながら読んでいた。その講義の中では、「効用」と基準に倫理学について勉強した。一方本書では、実験社会科学の名の通り、マクロ的な視点から見出される倫理について論じられている。

2021.06
『妄想する頭 思考する手』
-暦本 純一-

UI研究の分野で非常に有名な先生の本。研究の発想とは、どのようにして生まれるのか。

2021.06
『人体 失敗の進化史』
-遠藤 秀紀-

あらゆる動物の身体というものは、原初の生物のパーツに、生き残りのために改造を重ねたものである。そしてそれは決して最適化という意味ではないこと。肉体的な進化という現象について、非常に楽しく学べる一冊。

2021.07
『私という運命について』
-白石 一文-

巻末の書評にもある通り、白石一文さんの作品のなかでは、とっつきやすいというか、物語性が強いというか。「僕のなかの壊れていない部分」がジーンと感じ入ってしまう作品だとすると、こちらは力強く生きていく力を貰える作品。

2021.07
『生物と無生物のあいだ』
-福岡 伸一-

これまた生物学関連の書籍で有名な一冊。福岡先生の文章が非常に読みやすく、なるほど名著だと感じた。

2021.07
『下町ロケット』
-池井戸 潤-

池井戸作品らしい緊迫感あふれる面白いストーリーだった。

2021.08
『象は鼻が長い』
-三上 章-

言語学に関する本は初めてだった。お察しの通り、私もゆる言語学ラジオに影響を受けてこの本を買った人間の一人である。ただ想像以上に面白かった。国語や英語の授業のなかでも品詞分類がすごく好きだった自分としては、この沼に深くハマってしまいそうでとてもこわい。

2021.08
『人間の本性―人間とはいったい何か』
-Alfred Adler、長谷川 早苗-

ユングと来たら次はアドラー。キーワードは「権力への志向」。

この女性の一生は、二番手を演じたくない、いつも優越していたい、非難されて立場を失いたくない、自分のいる小さな輪の中心でいつづけたいというとんでもない衝動に貫かれているのです。

人間の本性

2021.09
『斜陽』
-太宰 治-

Wikipediaによると、この作品の影響で「斜陽」という言葉に「没落」の意味が加わったとか。影響力がとんでもなさすぎる。

2021.10
『死すべき定め―死にゆく人に何ができるか』
-アトゥール・ガワンデ-

終末期医療。平均寿命が伸び、と同時に健康寿命との差分をどう生きるのかという問題が強くなってきた日本において、大いに示唆に富む本だと思う。

言い換えると、最期について自分の嗜好を主治医と十分な話し合いをした患者は、そうしなかった患者よりも平穏に死を迎え、状況をコントロールでき、遺族にも苦痛を起こさない可能性がはるかに高いのだ。

死すべき定め―死にゆく人に何ができるか

昔、仲間がこんなことを言っていた、とウィルソンは言う。「人は自分には自律を求めるのに、大切な人には安全を求める」。これは虚弱になった人にとって主要な問題であり、矛盾である。「大切な人に対して、私たちがしてやりたいと望むことの大半は、自分にされたなら、自己の領分を侵すものとして断固として拒否するようなことだわ」

死すべき定め―死にゆく人に何ができるか

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