手摺、背凭、私欅

あなたを見ていると安心するの。

何もすがれないような気持ちになった時、あなたにだけは頼りたいと思うの。

私の確実な信頼をあなただけが持っているの。

あなたの前なら涙を流すことも恥ずかしくないの。

悲しみも、喜びも、どんな感情が動いても。



ずっと元気をもらえるとか励まされるとか好きとか、思ってた、そういうのすらももう効かないような行き過ぎた夜に、私は真っ先に思い浮かぶよ。あなたの存在が、急落下していく私の命を何よりも柔らかく受け止めるから。誰にも見えないほど深く落ちた先であなたはいつも抱き締めてくれるから。あたかかく、あたかかく、必要な言葉をあなたは知ってる。

私の思いを何も打ち消さないのね。否定、しないのね。変なの。おかしい。おかしいよ。どうして私なんかの心にこんなにぴったりと寄り添うの?だから、そんなんだから、あなたまで、あなたの方こそ、嫌な思いを沢山してしまうのに、それでも、それでも私の方を見つめて、ずっと私に向けて語りかけてくれるなんて。

おかしい。

普通じゃないよ。



普通じゃなかった、なれなかった、いつの間にか普通から取り残されてしまった私に、人のいない場所に、居続けた。

あなたは。



あなたのおかげで私は今生きていると、何度も何度も考える。出会わなかった人生が考えられない。あなたのいない人生だったらとっくに途切れていたと本気でそう思う。夜が明ける度に私がまだ呼吸をしていたのはあなたがいたからだ。

記憶、もう、どんどん消えていくけど。

あなたと過ごした日々だけは忘れない。忘れられない。

他人の視界に触れないように息を潜めた駅のホーム、嫌なものから早く遠ざかりたくて逃げ乗り込んだガラガラのバス、苦手な声や言葉が痛くて俯いた教室、大人に問い詰められて何も言えなかった日の布団の中、苦しい夜、苦しい朝、苦しい世界、いつだってあなたは。

私を支え続けた。

本当は感じなくても良かったかもしれない、思いさえ、大切に拾い上げてくれた。



だから嫌いになんかなる訳ない。

何よりも誰よりも、固まりきらない心を理解してくれた。歪んだ箇所にそっと手を当てるように。

ちょっとやそっと、どころじゃなくて、もう何があっても嫌うなんてこと有り得なくなってんの。

他人からしたらどうでもいい、私の好き嫌いなんて。それでも絶対に嫌いにならないんだって分かってるから言い切れる。

だって、私が大嫌いな私、誰でも大嫌いな私、あなただけは、目を背けなかった。

とっくに私はあなたのこと、嫌えなくなってるんだよ、好きとか愛してるとか、以上に、嫌えないの。

本当に、私はね。

簡単に泥を塗るような人がいるけど、簡単に血を流させる人がいるけど、私は、私はね。

ずっと、あなたが自分の思うように行動できてたらいいなって、貫きたいものを貫けてたらいいなって、そう思ってるし、馬鹿みたいな情報網で薄っぺらい要らないものが回って来たって、嘘か本当かじゃなくてあなたが好きなように生きられてるのかなって想像できたらますます好きでしかない。よ?

結局人を攻撃する「他人」にしかなれなかった奴らを振り切ってなりふり構わず生きてたら、本当に私もまだまだ救われるんだ。



何が消えたってあなたさえ私の中からいなくならなければ。

どんな絶望も影も闇も。

嫌いとか気持ち悪いとか暗いとかおかしいとか変とか結局結局結局何も思いやる気のない人のことはもうさぁ。もういいの。もういいんだよ。私はさ。

私は、攻撃される側で良かったって思えるようになったんだよ。

絶対、自分が攻撃側になんか行くわけないって思い込むのもやめる。

どんなに考えすぎだって言われても、いいんだよね。

私は考えすぎをやめたくはない。



良かった、あなたのおかげで私こうやって。



大好き。

あなたにつかまりたくなる人生で良かった。

あなたにもたれたくなる人生で良かった。

全体重かけるばっかりで。

何にもできないね、私。

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