21色の涙

涙の理由を説明できない。

何で泣いているのか、言葉で人に伝わるよう説明できるのなら、泣いていないからだ。

言葉では完結できないから涙が溢れてしまう。

だけど、言葉は見えないが涙は見える。

視覚化されて、初めて人はその異常に気が付くのかもしれない。



「涙に色があったら 人はもっと優しくなる」

という歌詞がとても好きで、気に入っている。

ちゃんとした知識は持っていないが、いつかどこかで、涙は透明な血液だ、と言われているのを聞いた。

もし涙に色があったら。

例えば、それが赤色だとして。

泣いてしまえば、それは流血沙汰、ということになるだろうか。

怪我と同じように、血が滲んで、放置しておく訳にはいかない。

それは止める必要があるし、止めるには誰かの力がいるかもしれない。

涙を拭けば手が赤く汚れ、服に零せば赤に染まってしまう。

一大事だ。

その原因がもし、誰かの心ない言動だとすれば、怪我をさせられたのと同義になるだろう。

色がないから、涙を流すことは身体を怪我するよりも軽く思われるのかもしれない。

でも、生活していれば、生きていれば、無意識に人に怪我をさせないよう振る舞うのが普通だ。

それが身体的なことだけじゃなくて、精神的なことでも同じくらい当たり前の優しさがあれば…



私の大好きなアイドルは、よく泣いていた。

何か目標を達成した時、どうしようか不安な時。

プレッシャーを感じた時、自信を失った時。

他のメンバーが報われた時、他のメンバーが大好き過ぎる時。

曲に対して真剣に向き合って、自分の考えを言葉にした時。

伝えたいのに、言葉にできなかった時。

自分の弱さを認めた時。

パフォーマンスで限界など考えず、ただひたすらに気持ちを込めた時。

何でもない、どうってことないような何かが、何故か心の奥深くに刺さってしまった時。

誰かに優しさをもらった時。

一人の涙が次々にうつってしまうこともよくあった。

きっと、繊細で、微かな起伏でも一つ一つを丁寧に感じ取ってしまうような人達なのだろう。

感情に敏感で、だけど言葉や表情にはなかなか出さなくて。

それでもいっぱいいっぱいになってしまうと、涙として溢れ出してしまう。

器用よりは、不器用だと言われるような人が多いと思う。

誤解もされやすいかもしれない。

内部なんて何一つ分からないけど、でも、きっと内側には、人一倍高い温度と濃度を持った感情がぎゅっと詰まっている気がするのだ。

そんなメンバーが集まったからこそ、唯一無二のものを作り上げられたと、そう思うのだ。

自分一人ではアウトプットができなかったそんな感情たちに、少しでも行き場が与えられたのかな、と。



これは私の考え方だが、アイドルグループのメンバーは固定の方が好きで、選抜や増員や卒業などといった制度は正直全く好きじゃない(メンバーに対してではなく、あくまで制度が)。

だから、一期生と呼ばれる21人には、特別な価値を見出している部分がある。

一人一人が宝物みたいに大切で輝いていて、だけどどこか危うくてすぐに壊れてしまいそうな。

誰もがメンバーに対して優し過ぎて、時々ぎこちなくなってしまう時もあって。

でも、カメラじゃなくメンバーに対して向ける表情で、本当に心を許せているように思えた。

それこそ感受性の強い人間が集まっていたから、外からでは分からない深い部分で共鳴しあっていたのかもしれない。

でも分からなくて良いのだろう。

他の誰かに分からせるために繋げた絆ではないから。



どういう気持ちなのか、自分でも説明できないな。

とにかくぼーっとしてしまって、ただただ彼女たちへの思いがぐるぐる回るばかり。

これからもうここには立たなくなってしまうメンバーのことも、これからも立ち続けるメンバーのことも、既にもう行ってしまったメンバーのことも。

彼女たちが流した涙も。

大好きだ。

どうか誰一人、自分を責めないでほしい。

他人への思いやりが強すぎるあまりに、平気で自己を犠牲にするような人達だと思うから。

いつの間にか、透明な涙が溢れないうちに。



本当にありがとう。

心から、尊敬しています。

欅の画数分。

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