「硝子玉」個人ED

任務終了後…
天衒は一人?いや、一匹で事件のあった家に、嘗て家のあった場所にやって来た。
SIDの事件処理によって既に何もなくなってしまった
土地に寂しそうに花を一つ、植えながら語り掛ける。

「改めて、ありがとうございました。儂等の最初の業血鬼が貴方で本当に良かった。力に、業に全てを犯された魔獣ではなく理想を追い求め苦しんだ賢者であることに感謝いたします。儂はもうそうそう変わることはありませんが、あの子らはまだまだ若い…これから一つ一つ知り、学んでいってくれるでしょう。
じゃがしかし、貴方の世界がギヤマンとはまた随分と皮肉なモノですねぇ。
見通しが良く、誰も彼もが幸せな濁りの無い透明な世界なのに、
その世界の外とは透明でも決して相容れぬ隔たりがある世界。
貴方の生涯を知る事は出来ませぬが、その瞳に映らぬ隔たりに絶望したのでしょう。
儂も貴方の気持ちは知りえませぬが隔たりには苦労したのでねぇ…
これはいかんいかん。ついつい長話をしてしまいました。年を取ると一段と話が長くなってしまうのが悪癖でしてね。ではそろそろ帰りますね。儂等が貴方の来世までに少しだけでも世界を良くしていきますんで、見といてください…」
そう言って天衒はゆっくりと帰っていく。
後に残るは何もなくなった土地に彼の残した花が一つ。風にたなびく『百合水仙』がそこに残るだけであった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?