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メディカルイラストレーションの様々な専門分野(絵を描くだけではないのです)

こんにちは!私、日本でメディカルイラストレーターとして活動しております、株式会社LAIMANのライアン杏莉です。

ここでは、メディカルイラストレーションという職業について私見も交えながらお話ししていこうと思います。

前回は「メディカルイラストレーターになるためには」についてお話しいたしました。

「メディカル」「イラスト」はどちらも莫大な職域・分野であり、細分化されています。「メディカルイラストレーション」の中でも、専門分野は人それぞれです。では、具体的にどういった専門分野があるのでしょう?

「メディカルイラストレーション 」は、「どういった目的で使うものか(領域・目的)」「何を使って制作物を作るか(制作媒体)」「何を使って制作物を見せるか(伝達媒体)」のそれぞれの組み合わせにより細分化されます。全ての組み合わせが存在する訳ではありませんので、いくつか具体例をお話ししていきます。

王道:教育目的の出版物

教科書、書籍、雑誌、パンフレット、ポスター等に代表される紙媒体は近代医療の伝達媒体としては一番前からあり、現在も確固たるニーズが存続しています。

紙媒体の例としては:
研究者の発表する論文に使う図、イラストレーション
病院で掲示、配布されるポスターやパンフレット
学校の教科書

などがあります。

イラストの内容としても、解剖学、細胞学、病理学、薬学、獣医学など多岐に渡ります。


未来の王道:WebやVR
紙媒体には手軽さという確固たる強みがあります。しかし、電子機器の画面を通すと見ている物が動いたり(アニメーション)自分で拡大・縮小・回転できたり(3DCG)伝達の質をグッとあげられる可能性が広がります。そのため、アプリやウェブサイトでの画面を通してみるメディカルイラストレーションの市場は今後どんどん広がって、主流となっていくでしょう。

VRにおいては、医療VRが発達しており、特に医学生や医師の教育に使われることが増えています。3次元的に複雑な体内組織の位置関係を理解したり、手術の手順をよりリアルに近い状態で練習するためには、VRが優れています。


他にも:コンサル&橋渡し、裁判、義足などの補装具などいろいろ
上記の紙媒体やweb媒体に共通する部分はあるものの、メディカルイラストレーターの活躍の場は他にもたくさんあります。

医療ミスや事故によるケガを巡る裁判に裁判員がいる場合は、グロテスクな写真や解釈しづらいレントゲンなどは使えません。そのため、海外では法律事務所がイラストレーターを雇い、損害の概要をうまく伝えるイラストやアニメーションを作ることがあります。このMedical Legal Illustrationという分野は、医療、アートのスキルに加えて法律の知識も必要なため、更にニッチな業界です。

また、事故や病気などで義足、義手、義眼をされている方の補装具を設計する際も、患者様本人に合った見た目にするために、メディカルイラストレーターが携わることもあります。

最後にもう一点、お話ししておきたい大切なことがあります。
それは、メディカルイラストレーションは他業種との連携が必須だ、ということです。例えば、イラスト一点を制作する場合でも、監修で医師の先生からアドバイスをいただいたり、医療教育のデジタル教材を作る場合はシステムエンジニアの方のバックエンドの設計をお願いしたりなど、他業種の技術者や有識者との連携はとても大切になります。他にも、自分で資料を作ろうとしている医師の先生や教職のお客様に「どのように見せたら伝わりやすいか」といったデザインのコンサルのお仕事もあります。また3DCGを作りたい医師の先生と、3Dモデラーの制作の間に立って指示出しをするような、「橋渡し」役としても活躍の場があります。

制作業というと机に向かってコツコツと作業するイメージがあるかもしれませんが、現実としてはプラスアルファでコミュニケーション・連携のスキルも、メディカルイラストレーターとして有用なスキルになります。2022年3月に開催された日本メディカルイラストレーション学会(JSMi)のテーマも「メディカルイラストレーションにおける多業種連携」だったように、このトピックだけでもブログ記事がいくつもかけてしまいます汗

さて、参考になりましたでしょうか?

またの機会に、メディカルイラストレーションの制作物の大まかな手順をご紹介していこうと思います。こういった業種に興味のある方にとって、少しでも参考になれば幸いです。


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