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メディカルイラストの必要性:論文紹介シリーズ第二弾

こんにちは!私、日本でメディカルイラストレーターとして活動しております、株式会社LAIMANのライアン杏莉です。

ここでは、メディカルイラストレーションという職業について私見も交えながらお話ししていこうと思います。

今回は「メディカルイラストの必要性」の論文紹介シリーズ第二弾です!
第一弾では、「なぜ図解や挿絵が活字だけよりも学習に有効か」、車のエンジンの仕組みや童話を使って比較した論文を紹介いたしました。

第二弾は、イラストが医療や教育の現場においていかに有効かを実証した論文を紹介していきたいと思います。

1996年に米国Delp博士が行った実験では図説やイラストのある患者説明資料(パンフレットなど)がいかに治療に効果的か、顕著な結果が出ています。
この調査では、裂傷(切り傷)の治療に緊急病棟に来院した患者234名に対して、半数には活字のみ、残り半数には下記のようなイラストと活字のある、アフターケアの説明を書いた紙面が配られました。退院三日後に、紙面に書いてあるケアに従っているか調査したところ、活字のみのグループは54%、イラスト+活字のグループは77%の患者が指示に従っていたことがわかりました。また、活字のみのグループは、そもそも紙面を読んでいなかったり、正しい情報を覚えていなかったりと、他の指標においても歴然とした差がつきました。このように、親しみある正確なイラストは、患者教育において有効であることが分かります。

<実験で使われた、切り傷のアフターケアについての患者説明資料>

また、イラストと一口に言っても、イラストを見る人の知識量に合わせて情報量を調整する必要があります。「いかに詳細に描くか」の塩梅を見極めることも、メディカルイラストレーターとして必要なスキルです。
例えば、2006年の米国Butcher博士の研究では、用途によってはシンプルなイラストの方が理解を助けるということがわかりました。循環器の仕組みの理解度が低い大学生76人を対象に調査した実験で、①活字のみ②活字+シンプルなイラスト③活字+より詳細なイラストに分け、体循環と肺循環の仕組みを学習させたところ、②活字+シンプルなイラストのグループが一番理解度が上がるという結果になりました。この研究で分かったこととしては、文字だけよりもイラストがある方が理解を助けるのはもちろんのこと、さらに、用途に応じたイラストのデザインをすることが必要であるということです。


<実際に使われたシンプルなイラストとより詳細なイラスト>


<「シンプル」なイラストが、学習前と学習後の理解度が一番上がる>

イラストには、不要な情報を省略して、伝えたい情報の質を上げるという写真や映像にはできない強みがあるのです。

さて、「メディカルイラストの必要性:論文紹介シリーズ第二弾」参考になりましたでしょうか?次回のブログ記事では、今回お話しした「医療、教育現場でのイラストの重要性」から更にアニメーション、3D、VRなどの他媒体においてもメディカルイラストレーションの有効性を実証する論文を紹介していきたいと思います。ぜひお楽しみに!

参考文献:

Delp, C., & Jones, J. (1996). Communicating information to patients: the use of cartoon illustrations to improve comprehension of instructions. Academic emergency medicine : official journal of the Society for Academic Emergency Medicine, 3(3), 264–270. https://doi.org/10.1111/j.1553-2712.1996.tb03431.x

Butcher, Kirsten. (2006). Learning from text with diagrams: Promoting mental model development and inference generation. Journal of Educational Psychology, 98, 182-197. Journal of Educational Psychology. 98. 182-197. 10.1037/0022-0663.98.1.182. 


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