今年のJ1についてシーズン前に思うこと「改革は一年にしてならず」

気づけばJ1の開幕まで1カ月となった。
今年のJ1はどうなるのだろうか……とぼんやり考えていた時に、興味深い記事があった。

G大阪の強化方針が変化…初のスペイン人監督にチュニジア代表FW 中口雅史強化部長に聞く : スポーツ報知 (hochi.news)

その中から特に気になった点を引用してみよう。

上記記事より引用

中口さんはガンバの強化部だから、まず第一にガンバ目線での反省点を述べられているのだろう。そして、反省するにあたっての比較対象は当然に川崎フロンターレと横浜Fマリノスだと思われる。

2017年~2022年のJ1は、端的に言えば「王者・川崎フロンターレと、川崎への挑戦者たち」との構図だった。そして、挑戦者の中から頭角を現し、2度王者に輝き、既に川崎への挑戦者ではなく新王者となったのはマリノスである。
筆者は川崎ファンでもマリノスファンでもないので事実と異なる可能性はあるとの前提で、両チームに共通している事実が一つある。「改革を始めて5~6年目にJ1優勝している」である。

川崎は2012年4月の風間監督就任、その後鬼木監督により2017年にJ1優勝を果たした。一方マリノスは2014年にCFG加入、2015年のモンバエルツ監督就任、その後ポステコグルー監督により2019年にJ1優勝を果たした。当時の記憶を思い起こすと、風間さんもモンバエルツさんも就任当初は多くの既存ファンからかなり否定的に言われていた。もちろん勝点・順位がイマイチなら批判されるのがプロスポーツクラブ監督の常であるが、それ以上に否定的に言及されるのは、それまでの各クラブの文脈からして「何かが違う」からだ。
既存ファンは「それまでのクラブ」が好きだから既存ファンなのであり、良くも悪くも変化・改革に対し抵抗感を覚える方も多い。単純な戦績以上に批判の声があったのは「何かが変わる」ことに対しての抵抗感ではなかっただろうか。

最近の、お若いファンの方には意外かもしれないが、2000年代の川崎は「縦に早い・高速ロングカウンター」を武器にするサッカークラブだった。そこから風間八宏に舵を切ったのはかなりものすごい方向転換である。それを実現したのはクラブの強い意志・実行力無しでは有り得なかったと思う。風間さんから鬼木さんに変わっても、川崎は「基本技術をベースにした、ボールを早く動かすサッカー」との部分を芯としているように思うし、それに合った選手を主にユース・大学から獲得することで戦力を整備してきた。
一方マリノス、モンバエルツさん以前がどういうサッカーだったのか正直あんま覚えてないのだが、基本的には「引いた堅い守備と天才司令塔(中村俊輔だったり奥大介だったり山瀬功治だったり)」というのがクラブカラーだったように思う(ごめんなさい違ってるかもです)。そこから2014年にCFGグループ加入し「欧州の新しい戦術を取り入れ、ボールを持つことでゲームをコントロールするサッカー」を志向し、それに合った監督・選手を獲得することで戦力を整備してきた。

川崎とマリノスほどの実行力でもって改革を断行し戦力整備して、ようやく「5~6年目に優勝できる」のがJ1の現状ということだ。クラシカルな体制やサッカーに拘泥していては現状維持すら覚束ない。
ガンバとして「どこを変えるべきなのか」を検討し、「強化部の成長・強化」の必要があると判断したのは、近年のJ1の、象徴的なことのように思う。

さて2023年のJ1優勝戦線はどうなるだろうか。

個人的には「川崎の黄金時代は一旦終わり」と感じている。川崎は過去6シーズンで4回優勝、内2回はぶっちぎり優勝と言ってもいい「歴史に残る強さの偉大なチーム」だったわけで、いくらなんでもそこまでの強さを維持し続けるのは無理だと思うからだ(J1の歴史上、そこまで長期で強くあり続けたチームは存在しない)。
川崎はユース卒・大卒の若者を上手く戦力化したことで黄金時代を築き上げたと思う。そもそもユース卒・大卒でその世代で有力な選手を集められている(それだけ上手くユースもトップチームも運営できている)のだろうが、日本代表レギュラークラス(三笘、田中、守田、等)の選手をこれだけツモれたのは、良い運営をしているとの前提で、流石に「幸運」と言うべきではないだろうか。去年や今年の新卒選手も同世代で有力だし、レンタル修行から戻る宮代なんかもいるが、谷口も移籍してしまったことだし、2021年(特に前半)の戦力には足りないのではないか。
また、近年の川崎は他所から移籍獲得した選手をイマイチ上手く戦力化できていない印象があるので(何故そうなのかは知りませんが)、新卒での戦力供給がうっかりコケると一気に戦力ダウンになる可能性があるのではないだろうか。

一方のマリノス、合いそうな選手を獲って試してダメなら出すサイクルが完成されたように見えるので、2023年も上位は堅いと思うのだが、優勝できるかはMVP選出の岩田の穴埋めをキッチリやれるかどうかではないか。ただ、「他所から取ってくればいい」スタイルは穴埋めに長けているはずなので、普通に埋めてくるような気はしている。

纏めると、今年のJ1優勝戦線の見どころとしては「マリノスが去年同様に強いか」「川崎が戦力ダウンをどの程度食い止めてマリノスに挑戦するか」かなと思う。

ところでグランパスは

風間ヤッヒー改革がリセットされたんだろうと思うと、改革元年としては2020シーズンのマッシモはん時代になるのだろうか。それとも長谷川健太さんの2022シーズンが元年なのか。いずれにせよ、黄金時代川崎と王者マリノスですら、優勝という成果を出すのに4~5年かけて戦力を整備したわけで、グランパスもまだまだ戦力整備の途上にあると思われる。そこから現実的に考えると、2023シーズンも「降格さえしなければ戦力整備に時間を費やすべき」ということになるのだろう。
戦力整備にはまず良い強化部が必要だし、強化部の関係各所とのパイプが必要になる。監督が変われば使われる選手も多少変わるのは仕方ないとして、ならば監督に選択肢を与えてあげられるような戦力=選手層が実現されることを願ってやまない。
ぶっちゃけシュヴィルツォクが元気にフル稼働してたら2022シーズンも最低ACL争いくらいはしていたように思うので、今年はユンカーに元気に頑張っていただいて勝点をそれなりに積んでファンの気分を良くしつつ、主に和泉から若人へ「敢闘精神を注入」してもらって、気づけばシーズン当初と終盤とで良い意味でビックリするくらいレギュラーが変わっていることに期待したい。
個人的には、降格・昇格を共にした和泉と武田と一緒にJ1優勝できたら嬉しいし、何より彼らが報われるような気がする。そうすると遅くとも再来シーズンくらいには優勝しておきたいところだ。そのためには豊田も吉田ハも貴田もさっさと戦力化してくれないと困る。使えば伸びるとは限らないが使っておかないと使えなくなるのが若手選手というやつなので、せっかく藤井という戦力化事例もできたことだし、マジで長谷川健太監督には何とか上手いことやっていただきたい、というのがグランパスの今シーズンかなと思う。


あと、モドリッチを諦めない。

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