パイオニア STARVIS対応2カメラドライブレコーダー「VREC-DZ700DLC」の実機レビュー
本機については2020年4月のテストで改めて最新機種との比較を行った為、最新の内容はLaBoon!!の方に引っ越しました。
https://car-accessory-news.com/vrec-dz700dlc/
旧コンテンツはしばらくnoteに無料公開しておきます。
セット内容とデザイン
「VREC-DZ700DLC」のセット内容については以下の通りとなります。
①フロントカメラ筐体
②リアカメラ
③カメラ接続ケーブル(9m)
④3芯電源ケーブル
⑤AV出力ケーブル
⑥RCA変換ケーブル
⑦16GBのmicroSDカード
⑧取扱説明書
フロントカメラ筐体
フロントカメラ筐体は最近増えている板状マウントと液晶部分に円筒型のレンズ部分が組み合わさった形状でオリジナリティが強く、スタイリッシュであると感じました。
サイズ感が伝わりにくいですが、そこまでコンパクトではありません。
操作系のボタンは正面下の方に4つです。
本体右側にはmicroSDカードスロット
右側にはリセットボタン
上側には左からAV出力端子、電源端子、miniUSBタイプのリアカメラ端子が装備されています。
リアカメラ
リアカメラはminiUSB接続のコンパクトタイプです。
ケーブル類
カメラ接続ケーブルは9mのロングタイプで両側はストレートのminiUSB端子。
電源ケーブルは他の製品と全く互換性のないタイプ
車両側との接続は常時、ACC、アースの3芯となっています。
テレビやカーナビなどに映像を出力するアナログケーブルも付属しています。
車内への取付けについて
今回は初期型リーフのミラー裏にフロント筐体を設置しました。(スマートミラー「X1 Pro」に交換しています)
リアカメラについては天地の反転機能はなく、端子が右ハンドル車の運転席側に向いてしまいます。
普通車ならヒューズボックスは助手席側にある事が多いので、日本向けのモデルの割にローカライズがイマイチな感じです。
また、この製品はフロント筐体のデザインが独特で、レンズ部分を車両センター付近にセットし易いのは良いですが、色々おかしなところもあります。
通常ならレンズをセンター付近に配置すると筐体ルームミラー裏に隠れますが、本体は助手席側に寄ってしまいます。
この製品は日本向け(つまり右ハンドル向け)のデザインではないですね。
普通に取り付けるとmicroSDカードスロットも助手席側に来てしまいますし、運転席側からの操作性が最悪です。
本来ならこのように鏡に映したようなバーツ配置にするべきだったと感じます。
日本ではなく中国市場を見据えてのデザインなのでしょうか?
しかも液晶部分が完全にフロントガラスと平行になるので、液晶の視認性も最悪です。(WiFiで全てカバーできれば許せますが)
インターフェイスと操作感について
エンジンONから録画開始までの時間は2カメラドラレコとしてはやや遅めの10秒程度です。
液晶さえ見やすい位置にあるならば、インターフェイスは分かり易くボタンも押し易いので操作性は良好ですが
いかんせん下から画面を覗き込むのに一苦労です。
従って本体液晶での動画の再生はやらない方が良いでしょう。多分首が痛くなります。
パイオニアとしてはこう言った場所への取り付けを想定しているのでしょうが…
フロントガラスの上部には日除けのドットが入っている車も多く、そう言った車の場合にはルームミラー裏に取り付けざるを得ません。
助手席側のミラー裏に取り付けて液晶を覗き込むと首がもげそうになります。
やはり左ハンドル用のデザインですね。
WiFiアプリについて
WiFi通信に関しては、電源ONで自動的に通信ポートがアクティブになりますので接続の手間はそれほど掛かりません。
ただし、WiFiアプリはメニュー項目が限定されており、ほぼライブビューの確認と動画の再生しか出来ません。
本体の画面が見にくいので、せめてWiFiアプリで全ての設定を変更出来るようにして欲しかったですね。
今後の改善に期待したいところです。
動画の再生についてはmicroSDカード内のファイルを直接ストリーミング再生する事が出来ず、フルサイズの90MB/分のファイルをスマホに一度ダウンロードしなければなりません。
1分の動画をダウンロードするのに1分30秒掛かりましたので、普通の人ならストレスを感じるでしょう。
これはスマホサイズの圧縮動画をストリーミング再生できるようにして欲しいところですね。
ドライブレコーダーとしての画質について
①コムテック「ZDR-015」
②ユピテル「SN-TW80d」
③ユピテル「DRY-TW9100d」
④セイワ「PDR800FR」
⑤コムテック「ZDR026」
⑥ケンウッド「DRV-MR740」
⑦セルスター「CSD-790FHG」
比較ポイントは以下の5項目です。
①録画視野角
②ナンバー読み取り精度
③トンネル出口での白飛び耐性
④夜間のナンバー読み取り精度
⑤夜間の明るさ
「VREC-DZ700DLC」と「ZDR-015」の画質比較
「VREC-DZ700DLC」と「SN-TW80」「DRY-TW9100d」「PDR800FR」の画質比較
「VREC-DZ700DLC」と「ZDR026」「DRV-NR740」「CSD-790FHG」の画質比較
録画視野角について
「VREC-DZ700DLC」の録画視野角は仕様表ではフロント水平130°、リア水平112°となっていますが、実測値はフロント水平128°、リア水平113°程度、前後合わせて241°となります。
【フロント】
【リア】
8機種を視野角が広い順に並べるとこのようになります。
①「SN-TW80d」~水平127°+127°=254°
②「DRY-TW9100d」~水平117°+127°=244°
③「VREC-DZ700DLC」~水平128°+113°=241°
④「ZDR-015」~水平113°+119°=232°
⑤「ZDR026」~水平112°+112°=224°
⑥「CSD-790FHG」~水平116°+105°=221°
⑦「PDR800FR」~水平107°+105°=212°
⑧「DRV-MR740」~水平100°+100°=200°
視野角の広さはユピテルの2モデルに次いで3位ですが、画質の特性から考えてもガチで競合するモデルはユピテルの2つになります。
ナンバー読み取り精度について
昼間のナンバー読み取り精度はフルハイビジョンクラスの中では前後ともに比較的高い部類に含まれますが、ここで比較しているモデルはSONYのExmorセンサーを搭載しているものが多いので、単純に視野角の狭い方が精度が高く、広い方が低いと言う傾向が見られます。
※「ZDR026」は前後「2560×1440」
【フロント】
【リア】
トンネル出口での白飛び耐性について
STARVISセンサーは昼間の白飛びに弱いのが弱点ですが、「VREC-DZ700DLC」は特に白飛び対策は講じられていないようで、トンネル出口ではフロントカメラの白飛びが最も強めに出ます。
【フロント】
同じSTARVISモデルの中でも「VREC-DZ700DLC」が最も白潰れに弱くなっています。
一方でリアにはHDR補正が掛かっているような画質の特徴が見られ、白飛びはまずまず抑えられています。
【リア】
夜間のナンバー読み取り精度について
夜間の先行車のナンバープレートにヘッドライトが強く反射した状態でのナンバー認識は、STARVISモデルが最も苦手とする項目ですが、昼間の白飛びと同様に「VREC-DZ700DLC」は真っ白になり、読み取り不可です。
この中では最も弱い光が当たっただけでも読み取り不可になります。
【フロント】
リアについてはフロントと比べると後続車両のヘッドライトが比較的絞られています。
【リア】
夜間の明るさについて
夜間の明るさについては、市街地においては前後ともに申し分なく、特にフロントカメラに関してはSTARVISモデルの中でも単独でNo.1となっています。
【フロント】
【リア】
ただし、フロントカメラに関しては対向車のヘッドライトの絞りがほとんど効かず、状況が確認しにくくなる事があります。
これは細かい事を何も考えずにとりあえずISO感度を上げまくった結果の様に見受けられますが、このおかげで夜間の暗い部分の認識能力は高いものの、対向車のヘッドライトの広がりで視界が悪くなる為、全体の評価は下がります。
リアはフロントよりは絞られている感じなので(HDRっぽい?)フロントのこの絞られなさっぷりは謎仕様です。
【リア】
街灯が少ない場所でヘッドライトのみでの走行時の視界は非常に良好です。
【フロント】
【リア】
暗視能力についてはフロントはSTARVISモデルとしてもまずまず明るめ、リア関しては街灯が少ない場所でブレーキを踏んでいない状態でも、ポジションの光だけでかなり明るく映っています。
【フロント】
【リア】
ドライブレコーダーとしての画質のまとめ
色々と比較し過ぎて分かりにくくなっていると思いますが、結論としては「VREC-DZ700DLC」のフロントカメラは露出(ISO感度)を上げ過ぎており、HDR補正も入れていない事から
①昼間の白飛びはまだ許せるものの、夜間の対向車のヘッドライトの光が広がり過ぎて視界が悪化
②先行車のナンバープレートにヘッドライトの光が当たり始めると、最も早い段階でナンバー読み取りが不能になる
と言う2つの大きな問題点を抱えています。
一方でリアカメラの調整についてはこの8モデルの中で最も優れており、そこそこ絞りが効いている上に明るく映っています。
フロントカメラもユピテルの「SN-TW80d」と同等以上の絞りが効かせてあれば、少なくとも走行時の状況証拠を捉えると言う目的ではNo.1のモデルになる可能性があっただけに残念です。
※今後のファームアップデートで調整されるようであれば良いが
LED信号の見え方について
「VREC-DZ700DLC」のフレームレートは前後ともに27.5fpsですので、東日本・西日本の何れにおいてもLED信号は高速点滅して映ります。
※西日本エリアでは未テスト
駐車監視の仕様と運用について
「VREC-DZ700DLC」の駐車監視の仕様は、内蔵バッテリーによる40分間の衝撃検知録画です。
通常の衝撃検知録画は衝撃後の起動&録画ですが、本機の場合には内部メモリに一定時間の録画データを保存しながら、衝撃があった場合にのみ前後20秒のデータをmicroSDカードに保存しますので、衝撃前の録画データも残ります。
※駐車監視の衝撃感度を最高にしているとドアの開閉で反応した
この駐車監視モードとは別に「セキュリティモード」が存在し、これをONにしておくと衝撃検知から3秒後に60秒間の録画を行います。
こちらは車のバッテリーを使用して待機と録画を行いますが、頻繁に衝撃が加わらない状態であればそれほどバッテリーに負荷は掛からないでしょう。
外部電源「UPS400」を使用した駐車監視について
「VREC-DZ700DLC」の駐車監視は付属の3芯ケーブルのACC系統の入力が遮断される事で開始されますが、「UPS400/500」、またはMIGHTYCELLと以下のような接続とする事で駐車中も走行中の常時録画モードを継続させる事が出来ました。
【UPS400/500との接続方法】
【MIGHTYCELLとの接続方法】
「UPS400」での録画可能時間は6時間でしたので、他のバッテリーでの駆動予測時間は以下の表の通りになります。
なお、駐車監視をしない場合には本体の電源ボタン長押し→「はい」を選択でシャットダウン、再起動は電源ボタンの長押しの操作が必要です。
※「UPS400/500」にはバッテリー側のスイッチもありますが、スイッチをOFFにして電源を落としたところ、駐車監視モードの設定をOFFにした状態にも関わらず、何故か内蔵バッテリーによる駐車監視モードに入ってしまいました。ACCのみをOFFにするとシャットダウンしますが、常時電源とACCの両方を落とすと強制的に駐車監視モードに入ってしまうようです。
動画ファイルの再生方法について
動画の再生については以下の4つの方法が選択可能です。
ドラレコ液晶での再生について
液晶の向きの問題で首が痛くなりますのでやめた方が良いです。
スマホアプリでの再生について
スマホアプリでの再生についてはmicroSDカード内のファイルを直接ストリーミング再生する事が出来ず、フルサイズの90MB/分のファイルをスマホに一度ダウンロードしなければなりません。
1分の動画をダウンロードするのに1分30秒掛かりましたので、普通の人ならストレスを感じるでしょう。
PC専用ビュワーでの再生について
PCの専用ビュワーはこちらの「PC汎用ビュワーでの再生については、こちらの「Driving Viewer」を使用します。
ソフトウェアの説明では②と⑥の枠でメイン・サブの同期再生が可能なような事が書かれています。
ただし、私の環境では②と⑥の片方しかアクティブにならない為、前後の同期再生は出来ませんでした。
このビュワーで可能な操作や表示は以下の通りです。
①地図への走行軌跡の表示
②速度の表示
③Gセンサーグラフの表示
④1/8~2倍速の間での再生速度調整
⑤200/400/800%の部分拡大
PC汎用ビュワーでの再生について
PC汎用ビュワーでの再生については、Windows 10のメディアプレイヤー、OSにデフォルトで搭載されている「フォト」「映画&テレビ」での再生も可能でした。
仕様外のmicroSDでの録画・再生状況
「VREC-DZ700DLC」は128GBまでのmicroSDカードの使用をサポートしていますが、128GBのカードを使用した際の連続常時録画時間はFHDの解像度では7時間20分となっています。
「VREC-DZ700DLC」は128GBまでのmicroSDカードの使用をサポートしていますが、以下のカードで特に問題なく使用が可能でした。
■ サムスン256GB U3
地デジへのノイズの影響について
地デジへのノイズの影響のテストは、初期型リーフの純正EVナビで行いました。
ギリギリでフルセグが映る場所での電源のON/OFFの操作で、アンテナの数に変化はありませんでした。
※地デジへの影響は車種やカーナビの種類、アンテナの位置で異なる場合があります。
不具合の発生とファームアップデート
なお、「VREC-DZ700DLC」のテストを開始した当初はやたらと録画ファイルのクラッシュや再起動が発生していたのでmicroSDカードの異常と相性の問題を疑ったのですが、どうやらこれはソフトウェアのデバッグが不完全だったようで、後日ファームウェアでの修正が行われています。
■ ドライブレコーダー「VREC-DZ700DLC/VREC-DZ700DSC」をご愛用のお客様へ
こちらのファームウェアを入れる事で再起動とファイルクラッシュのバグは今のところ発生しなくなっています。
amazonの評価などを見ているとかなり基本動作系のエラーが発生しているようですが、とりあえず手元の個体ではファームアップデート後には安定した動作となっています。
「VREC-DZ700DLC」の総評
「VREC-DZ700DLC」の評価をまとめると以下の通りとなります。
画質について
①録画視野角は水平128°+113°=241°と非常に広い部類であり、夜間も明るく映る為、事故の際の状況証拠には強い素養はあるが、夜間の露出が高過ぎて対向車のヘッドライトの絞りが効かなすぎると言う問題点がある
②ナンバー認識精度は前後ともに安定して高いが、夜間の先行車にヘッドライトが当たった状態は極端に苦手
③前後ともにSTARVISらしい明るさなので、外部バッテリーの使用前提での駐車監視の証拠能力は高い
デザインと操作性について
①デザイン的にはスタイリッシュで高級感があるものの、どう見ても左ハンドル車に向いた作りとなっており、液晶の視認性が最悪
②電源ONと当時にWiFiがアクティブになるのは便利だが、アプリが貧弱で全ての操作がスマホで完結しない為、液晶での操作性の悪さをカバー出来ていない
競合モデル
広角STARVISと言う観点で「VREC-DZ700DLC」と最も特性が似ているのがユピテルの「SN-TW80d」ですが、リアカメラの出来は「VREC-DZ700DLC」の方が良く、フロントが同等であれば西日本LED信号の同期問題を解決している「VREC-DZ700DLC」を推しているところでした。
リアスモーク車には特におすすめのような気がするんですが…。
ただ、現状のファームウェアでは夜間の対向車のヘッドライトが広がり過ぎる為、手放しでおすすめできる状態ではありません。
直す気があるなら簡単に直せそうな部分ですので、今後のファームアップデートに期待したいところです。
一方で外部バッテリーを使用しての夜間を含めた長時間の駐車監視を検討している場合には、セイワの「PDR800FR」が競合モデルになりますが、「PDR800FR」の駐車監視ナイトビジョンがアクティブになっている状態では「PDR800FR」の方が明るく、使い勝手も良い為、「PDR800FR」をおすすめしたいところです。
「VREC-DZ700DLC」と「PDR800FR」の駐車監視ナイトビジョン明るさ比較
または明るさでは落ちますが、昼間の駐車監視が中心であれば解像度が高い「ZDR026」ですね。
※「VREC-DZ700DLC」のここをこう言う風に改善して貰えれば買うよ!と言う要望があれば、パイオニアの広報経由でユーザー要望を伝えておきますので(ファームウェアで直せるような部分)、コメントにでも書き込んで頂けると幸いです。
私個人的には以下のポイントは改善すべきと考えています。
①スマホのストリーミング再生の実装(サイズダウンデータ)
②スマホアプリで全ての設定と操作を可能に
③フロントカメラの露出とシャッタースピードの調整で過度な白飛びを改善
④PCビュワーでの前後同期再生、または安定性の向上
(ドライブレコーダー専門家 鈴木朝臣)
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