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佐藤天彦九段マスク不着用負け事件について

 日本将棋連盟が2022年1月26日に定めた「臨時対局規定」は以下の通り。

 現状のコロナ禍に鑑み、本連盟会員規程第8条第1項の対局規程として、本来の対局規定に加えて、臨時に、
以下のとおり定める。
 第1条 対局者は、対局中は、一時的な場合を除き、マスク(原則として不織布)を着用しなければならない。
 但し、健康上やむを得ない理由があり、かつ、予め届け出て、常務会の承認を得た場合は、この限りではない。
 第2条 対局者は、対局場所たる建物内においては、対局以外の場合においても、できるかぎりマスクを着用しなければならない。
 第3条 対局者が第1条の規定に反したときは、対局規定第3章第8条冒頭各号の違反行為に準じる反則負けとする。
 但し、この反則負けには、同条第1項及び第3項は適用しない。
 第4条 前条の反則負けの判定は立会人が行い、立会人がいない対局においては、
 対局規定第3章第9条第4項の順序に従い、立会人の任を代行するものが行う。この判定に不服がある対局者は、
 対局規定第3章第8条第6項に準じて、判定後1週間以内に、その内容を常務会に提訴することができる。
 第5条 対局者が第2条の規定に反したときは、会員規程第8条第1項、第9項に基づき懲戒を行うことがある。

永瀬拓矢王座は勝負の鬼である

永瀬拓矢王座 対 佐藤天彦九段の順位戦A級戦において、佐藤天彦九段がマスク不着用により負けになった。

永瀬拓矢王座は残り時間30分の自分の手番で席を離れ、立会人を探し、連絡を受けて将棋会館に戻った鈴木九段に佐藤天彦九段のマスク不着用は反則なのではないか、とアピールし、その後 佐藤康光会長と協議に結果、佐藤天彦九段の反則負けの裁定が下ったという。

この対局は朝日新聞のYouTubeチャンネルで生中継されており、コメント欄は騒然。両対局者は駒をそのままに将棋会館を後にし、記録係が駒を片付けたという。

「注意」「警告」があっても良かった?

立会人から「注意」「警告」(いわゆるイエローカード)が出ても良かったのでは、みたいな意見が出ていますが、意味が不明ですね。
ルールによる裁定をしようとするのに、ルールにない行為はするべきではない。

たぶん永瀬王座は「一発レッド」を望んだ

将棋対局における反則負けは大変な事態であり、想像で申し訳ないけれど、鈴木九段も佐藤康光会長も、「警告」でいったん間を置きたい、と検討したのではないかと思う。
おそらく、永瀬王座は上記に「勝手にルールを作るな」的な論法で、規定通り一発レッドを出してください、と訴えたのではないでしょうか。

「反則負け」以外で良かったなら、取りうる手段はあった

棋士同士は対局中に基本的に会話はしませんし、盤外戦術として話しかけるのはおそらくマナー違反であるはずですが。
もし永瀬王座が反則負けまでは望んでいなかったのだとしたら、対局の結果を左右する問題でもあるので、対局中の自分の手番で佐藤天彦九段に、「佐藤さん、マスクしてもらえますか。マスクしないなら、立会人に反則のアピールに行かせてもらいますよ」と言えば良かった。おそらく、佐藤天彦九段もそれに応じてマスクをし、対局は続いたでしょう。

佐藤天彦九段は提訴する?

規定によれば、対局から1週間以内に提訴できる、ということですが、提訴したとしても再対局とはならないのではないかと思います。
「一発レッド」の規定を変えて欲しい、という要望は出すかもしれませんね。連盟も、ルールとして一発レッドは改定するかもしれません。
競技である限りはルールは尊重すべきなので、恣意的運用がされる「隙」はできるだけ狭めておくべきでしょうね。

棋士たちの反応

特にどの対局とは言及していませんが、佐々木大地七段は裁定に納得がいかない様子です。(なお、永瀬拓矢王座vs佐藤天彦九段の対局終了時刻は0時6分)

マスコミによる報道

藤井聡太竜王が絡まないニュースだけにどうかな、というのはありましたが、報道ステーションで取り上げられていました。キャプションに「疑問の声も」という文言がありましたが、特にその反応が画面に出ることはありませんでしたね。
まだこれから、「ワイドナショー」「サンデー・ジャポン」や週明けのニュースやワイドショーなどで取り上げられるか、注目されるところですね。

二人の次局

永瀬王座の次局は10月31日(月) 王将リーグの羽生善治九段戦。
佐藤天彦九段の次局は11月3日(木・祝) 棋王戦決勝Tの藤井聡太竜王戦。

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