KIRINキャリア教育Day1.2
キリンと地域、社会との近さやビール造りへのこだわりを強く感じた二日間であった。
Day1 遠野市にて
一日目は全国随一の国産ホップの生産地である岩手県遠野市のホップ畑を訪問した。
私はホップについての知識が全くなく、なんとなく外国で生産されているというイメージを持っていた。そのため日本にいながら、しかも隣接する岩手県にホップ産地があることに驚いた。
また、実際に生えている状態を見ることができるこの機会はとても貴重なものだと感じた。
いざホップ畑へ!
ホップ圃場見学
畑に到着すると、目の前に広がっていたのは迫力のある鮮やかな緑が印象的なホップのグリーンカーテン。想像以上に背が高く、美しい緑が辺り一面に広がっていて圧倒された。空高く伸びたツルには、収穫を控えた鞠花がたわわに咲いていた。
実際にホップの鞠花を手に取らせていただいた。半分に割ってみるとホップの香り、苦味のもとである黄色いルプリンが顔をのぞかせていた。鼻に近づけるとさわやかでフルーティな柑橘系の香りが広がった。
ビールは茶色くて苦いものという印象だったが、こんなにフレッシュでさわやかな香りのホップが使われていることを知り、少しイメージが変わった。
これからはよりおいしく感じられそうだ。
直接農家さんから様々なお話を聞く中で、やはりホップ栽培は手作業も多く、広い敷地を管理するのは大変な時間と手間がかかることがわかった。
見学で特に印象に残ったのは、農家の方のお話に登場した「キリンが買ってくれる安心感」という言葉だ。
実は、キリンと遠野市の間では60年以上もホップ契約栽培の関係が続いているそうだ。キリンビールが遠野市のホップを使用することでホップ農家の方々の生活が保証され、新たな取り組みにつながっていることを体感できた。
地域農家と二人三脚でホップ栽培に取り組んできたという歴史からキリンの地元愛や、遠野市と築いてきた長年の関係、まさに円満夫婦のようでほっこりした気持ちになった。
BrewGood田村さんのお話
ホップ畑に別れを告げた後には、遠野市に根差した事業を行っている田村淳一さんを訪ねた。田村さんが代表を務めている「BrewGood」は、遠野市の魅力を広めていくためにプロジェクトのプロデュースを行っている会社である。
遠野市のホップとビールを軸にした地域課題の解決や地域産業の発展に関わるキリンの存在について知った。
遠野市のホップ農家やホップ栽培の歴史と現状、長年抱える大きな課題、「ホップの里からビールの里へ」をスローガンに掲げる遠野市が目指す未来のかたちについて語っていただいた。
冷害が多く、作物を育てるのが難しかった遠野市で適した作物を模索していた中で見つかったのがホップであった。しかし、ホップは未知なる作物とされていたという。そこで遠野市とキリンでタッグを組んでホップとビールを軸とした産業を確立させていった。
これらの事実を知り、驚きそして遠野市とキリンとの「近さ」を感じた。
企業とその契約農家はあくまでビジネス上の関係で、シビアなものというイメージを持っていた。しかし、遠野市とキリンとの関係は私がイメージしていたビジネスの関係よりもあたたかく近いものだという印象を受けた。
この関係はキリンのこだわりであるCSVの考え方に基づいていて、単純な善意でないということも個人的に納得ができた。
遠野に来るまで、遠野といえば、遠野物語のことしか知らず、来るのも初めてであった。来る途中で山や田んぼが広がる風景を見て、なんとなく高齢化が進む町というイメージを抱いていたが、実際にホップ産地を見学し田村さんのお話を聞いて、民話の里でありながら、ホップの産地という大きな可能性を秘めた素敵な町なのだと大きく考えが変わった。
世嬉の一酒造訪問
一日目の活動の締めくくりに世嬉の一酒造さんを訪ねた。この項目は今年から追加された新しい活動である。
大正7年創業の酒蔵で、岩手から世界に地域の特色を活かしつつ、「世の人々が嬉しくなる一番」の酒・商品・サービスを作り地域の発展に取り組んでいる会社である。
世嬉の一酒造の酒造りの技と、醸造士の経験と知識により生まれたクラフトビールブランド、「いわて蔵ビール」について学んだ。
ビールは麦芽(モルト)・ホップ・酵母・水を主な原材料としてつくられるが、使う原材料や製造工程によって様々な種類に分けられる。
「どんな組み合わせで」「どんな醸造方法で」つくるのかでビアスタイルは細分化される。
ビール造りにおける発酵には、上面発酵と下面発酵がある。
上面発酵で造られるビールを「エール」、下面発酵で造られるビールを「ラガー」という。私たちがよく目にする大手ビールメーカーのビールのほとんどが下面発酵によって造られている。
いわて蔵ビールは上面発酵によって造られている。下面発酵は酵母が沈んでいくことをいうが、上面発酵は麦汁の表面に浮き上がるのが特徴である。
実はエールビールの方が歴史が長く、古くから作られてきた製法である。ただ歴史が古い上面発酵よりも下面発酵のほうが19世紀以降に世界中で主流となった。
エールビールは芳醇で濃厚な味わいと飲み応えがある。そのスタイルは多岐に渡り、様々なビールの個性や多様性を楽しむことができる。クラフトビールではたくさんのエールビールが造られており、近年では再びエールの人気が高まっている。
見学していて、世嬉の一酒造ではヴァイツェンやスタウトなどの定番に加え、様々な季節限定ビールを次々とリリースしていることに驚いた。そのどれもが特徴的で、飲み手としては四季を通して飽きることなく愉しむことができるのがすごいと感じた。
いわて蔵ビールは、アメリカで開催される世界で最も権威あるビールのコンテスト「WORLD BEER CUP」でオリジナルビールである「三陸牡蠣のスタウト」がブロンズアワードを受賞しているなど、多くの国際大会で受賞し、高い評価を得ていることも納得する。
見学を終えた後に実際に飲み比べを行った。ヴァイツェン・ペールエール・レッドエール ・スタウトの4種の飲み比べを行った。色の違い、香りの違いを飲み比べることでさらにビールに対して興味を深めることができた。
Day2 仙台工場
実習で感じたキリンのこだわり
仙台工場での実習を通してキリンが持つビールに対するこだわりを強く感じることができた。
キリンが製造するすべてのビールの根底にあるのが、綿々と受け継がれる醸造哲学である。
キリンの醸造哲学は「生への畏敬」「Brewingの精神」「五感の重視」の3つから構成される。仙台工場では特に「Brewingの精神」を感じられた。
「Brewingの精神」とは何か説明する。
ビールの原料であるホップ・麦芽・水は自然の恵み。ビールの香味を決める酵母は微生物。これらはすべて生き物である。このように生き物を用いることからビール製造は気候や温度条件といった環境に大きな影響を受ける。
ほんのわずかでも条件が変われば、香味も外観も一気に変化してしまう。この微細な掛け合わせを理解し、人の味覚や嗜好に訴えかけるにはビール製造を単なる技術と捉えず、同時に芸術でもあると認識することが不可欠であるのだ。
これが「Brewingの精神」である。
実際、ビールを造ることを英語でBrewingという。Makingと間違える方もいるのではないか。
実は、私も今回の実習に参加するまでBrewingとMakingを区別できていなかった。
仙台工場では「Art Brewing not Making」という言葉が存在していて明確に区別されていた。
仙台工場のこの細部に至るまでの強い「こだわり」こそが良い作品を生み出し続ける原動力になっているのだと感じた。
キリンビール仙台工場は100年以上の長い歴史がある。100年以上にわたって繋いできたこだわりを持って、今後も成長し続けていく。
そんな仙台工場がこれこらどんな作品を生み出していくのか楽しみである。
さいごに
まず、二日間の活動を通じてお世話になったキリンの皆様、関係者の皆様全員に、改めてお礼申し上げます。
普段の学生生活では経験することができない貴重な体験をありがとうございました。
二日間という短い期間だったにも関わらず、キリンの地元愛やこだわりを強く感じ、CSVの考え方など本当に多くのことを学ぶことができた。
次の日にさっそく遠野のホップ畑で見学したホップIBUKIが使用されている、キリンの新商品「晴れ風」を買って両親と分かち合った。実際に飲んでみると、非常になめらかな口当たりとさわやかな香りを感じられた。また、商品の背景にある仙台工場や遠野のことを思い出すとより一層美味しく感じられた。
これから秋が深まり、今年の一番搾りとれたてホップが発売される。また今回のように両親と一緒に買って飲み、もう一度ホップの香りを楽しみたい。
Day3.4.5でキリンについてもっと学びより、ファンになれることを願っている。