壊れた器

思えば私は、自分の事が嫌いで飛び降りたのだった。一昨年、家族関係の悪化に伴ってそれまでの私が崩れ落ちるようにして何も出来なくなっていった。毎晩首を吊っては失敗し、情けなくて泣きながら眠り、夕方まで布団から出られない。真面目だけが取り柄だったのに、学業関連の締め切りも守れず連絡もできなくなった。最期ぐらい綺麗なものを見たいと思って、飛び降りる1ヶ月前に友人と地元の美術館に行って、それ以降は私の記憶はあまりない。ただ、大学の担当教員が親切にしてくれたことははっきりと覚えている。私の現状を見て精神科受診を勧めてくれたこと、大学に来て作業をするよう誘ってくれたこと。私はそれに応えたかったのだが、作業は進まず希死念慮は膨らむばかりで自殺企図もやめられなかった。精神科では「今が頑張りどころだから」と薬の処方だけ受けて帰宅となった。
医療を頼っても人に優しくされても私は立ち直ることができなかった、その事実が重く、私の背中を押した。鍵の開いた窓から見える世界は孤独だった。

彼は私を見付けてくれて、救ってくれた。あの日どうしようも無く焦がれた誰かに、私をこの世に引き止めてくれる存在に、彼はなってくれた。

私が死んだら、私が死んだら、こんなに頑張って居たんだねって泣いてくれますか。わたし、大好きな人の子どもに生まれたいな。無条件に愛されたいよ、安心して、腕の中で眠りたい。それだけ。
(2023/07/22 2:29)

大好きな人の腕の中で眠る、それ以上の幸福はないと信じている。毎晩彼と話しながら、私はぬくもりに満ちている。はずなのに。どうしようもなく死にたくなって、彼を傷付けている。彼がくれる言葉も愛情も私からこぼれ落ちて身体が冷えていく。今朝目覚めて一番に、またひとりになるんだと思った。それは誰が強制したわけでも決定したわけでもないけれど、私の中に巣食って確固たる信念になった。誰のぬくもりも享受してはいけないと思った。誰のぬくもりも優しさも活かせず前に進めない私は誰の傍にも居てはいけないと。ひとりで死ぬべきだった

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