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Trivia : 素朴な最大グループゲーム

これはアブストラクトゲーム Advent Calendar 2023の6日目の記事です

最近考えたゲームを紹介します。例によって検証は不十分です。
(Ludiiには組んだがAIは役に立たなかった)


ルール

コンポーネント

  • 任意のサイズの正方形ボード
    (一辺9~13くらいがちょうどいい気がします。)

  • 十分な量の白、黒、赤の駒
    (それぞれマス数の1/3程度で、例えば一辺9の場合は白27、黒28、赤26個ちょうどが使用されます。)

  • プレイヤー2人
    (各々が白、黒を担当します。)

用語

  • グループ
    同じ色の駒が縦横に隣接してひとつながりになっているとき、それらは一つのグループを形成しています。あるグループを形成している駒全体の数をそのグループのサイズと呼びます。

ゲームプレイ

  1. まず、白のプレイヤーは白の駒を1個任意の空きマスに配置します。 
    以降、プレイヤーは交互に手番を行います。

  2. プレイヤーは自身の手番で自色の駒を2個と赤の駒を1個任意の空きマスに配置します。配置は必須で、ボードが完全に埋まった場合に限りその時点で手番を終了します。

  3. ボードが完全に埋まったらゲーム終了です。
    (途中で勝敗が明らかに思えた場合はそこで終了しても構いません。)

勝利条件

  1. 自色で最も大きいサイズのグループのサイズを比較します。
    サイズがより大きい色のプレイヤーが勝利します。

  2. 同数だった場合は次に大きいサイズのグループを比較します。
    (同じサイズの異なるグループがあった場合はそれを選びます。)

  3. 以降、決着がつくまでこの処理を繰り返します。自色のすべてのグループが処理に使われ、選ぶことのできるグループが無くなった場合は敗北となります。
    (後述しますが、引き分けは原則起こりません。)


終局例。
黒のプレイヤーが最大サイズ7のグループを3個持っている。
対して白はサイズ7のグループが1個しかないので黒の勝利。

このゲームは何?

最大グループカスケード

このゲームの勝利条件は「最大グループカスケード(largest group cascading)」と呼ばれているもので、この条件の特長として引き分けが起こりにくいことがあります。特に、引き分けは両者に同じサイズのグループが同じ数だけあることを意味するので、その場合両者がボードに置いた駒数は一致します。したがって駒数が異なる場合は引き分けは起こりません。

この特徴から最大グループカスケードを用いたゲームはマス数が奇数であることが多いのですが、Triviaでは中立駒を余分に置くことでどのサイズでも終了時に駒数が異なるようにすることができます。
証明:
平方数を3で割った余りは0または1であることが知られているので,初手の1駒を置いた時の残りのマス数を3で割った余りは2または0です。したがって、最後のプレイヤーは2または3個の駒を置くことができるので、自色の駒を2個置くことができます。

陣地を削るゲーム

最大グループカスケードの短所は中央に駒を置く手やただ自身の最大グループを成長させる手がほとんどの場合非常に良い手となってしまうので一方的で単調な展開になってしまうことです。それに対処するために最大グループの形成にリスクを持たせたり相手に駒を置き換えさせることでグループを作りにくくするゲームなどが考えられてきました。

が、そのことを逆手に取り、むしろ相手の最大グループの形成を阻害することを目的としたゲームというのはそれほど考えられていないように思いました。Triviaはそれの単純な実装例だといえるでしょう。

素朴な手としては相手のグループを取り囲むように赤駒を置いたり、あるいは相手の駒によって分断された「陣地」をさらに赤駒で分断してしまうことで将来的な最大グループのサイズを抑え込むことなどができます。自身のグループを成長させずに自色の駒も相手の陣地に置いてしまう「番狂わせ」もできるかもしれません。

元々ヘックスボードから検討を始めたゲームですが、この性質をより強く出すためにグリッドの接続を切りやすい正方形ボードに変更しています。

懸念点

バランス

先手後手の優位性に関しては(前述の通り差が付きやすいゲームなので重要なのですが)よくわかりません。偶数サイズと奇数サイズの両方でバランスがとれていることはありえないと思うので最終的にはどちらかのサイズのみが選ばれることになるでしょう。

自由度

少なくとも序盤は前述のセオリー通りに駒を置くことが良い手で、その時点で差が付くと挽回は難しいのでおそらく手の選択肢はほとんどありません。慣れるまではかなり鋭いゲームになると思います。

ゲームデータ

Ludemeファイルを置いておきます。

関連ゲーム

Strands

最大グループカスケードのゲームはすでにいくつか紹介しましたが、Strands(2022)はその中でも特に成功を収めたゲームでしょう。(2022年BEST COMBINATORIAL 2-PLAYER GAME受賞作で、ボードゲームアリーナでプレイできます。)

このゲームは「周囲に近いほど多くの駒を置ける」ことによって中央の優位性を薄くし、「同時に置けないマスの組み合わせがある」ことによってマス同士の接続の強さを不均一にすることによって短所を克服しています。

個人的な印象としては周囲に置いた駒を中央で接続させるコネクションゲームの要素が強いように感じますが、中央のグループを両側から挟み込むような戦略もあるようなのでTriviaと関連する点もあるかもしれません。

(最大グループ方面でなく、中立コマを大量に配置するシステムに関連するゲームについても知りたかったのですがあまり見つかりませんでした。)

(12/7 追記)

Collector

Kanare_Abstract氏が言及したCollector(2002)はグループゲームの中でも非常に古いもののようですが、中立駒を使います。具体的には自駒と中立駒を隣接するように配置するというルールのようで、つまり中立駒はあまり能動的に配置できず、とにかく邪魔な駒という扱いに近くなっているように見えます。(もう少し観察できたら追記します)


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