Contraposition : 最大グループゲームの「対偶」
もう一つの素朴なグループゲームです。完全なオリジナルとは言い難いですが、名前を付ける意義はあると思います。
ルール
コンポーネント
任意のサイズのヘックスグリッド正六角形ボード
(一辺5がおすすめです。)十分な量の白、黒の駒
(それぞれマス数の半分、バリアントを採用する場合は2/3程度です。)プレイヤー2人
(各々が白、黒を担当します。)
用語
グループ
同じ色の駒が隣接してひとつながりになっているとき、それらは一つのグループを形成しています。あるグループを形成している駒全体の数をそのグループのサイズと呼びます。
ゲームプレイ
まず、白のプレイヤーは白の駒を1個中央以外の空きマスに配置します。
以降、プレイヤーは交互に自色の駒を1個任意の空きマスに配置します。ボードが完全に埋まったらゲーム終了です。
勝利条件
最もサイズが小さいグループを確認し、各プレイヤーはそれと等しいサイズの各色のグループの数(これは0個である場合があります)を数えます。
個数がより少ないプレイヤーの勝利です。同数だった場合は次に小さいグループのサイズで同様の判定を行います。
以降、決着がつくまでこの処理を繰り返します。引き分けは起こりません。
これは以下の条件と等価です。
自色で最も小さいサイズのグループのサイズを比較します。
サイズがより小さい色のプレイヤーが敗北します。同数だった場合は次に小さいサイズのグループを比較します。
(同じサイズの異なるグループがあった場合はそれを選びます。)以降、決着がつくまでこの処理を繰り返します。自色のすべてのグループが処理に使われ、選ぶことのできるグループが無くなった場合は勝利となります。引き分けは起こりません。
バリアント : 12?プロトコル
バリアントとして、ゲームプレイの方法を以下のように変更しても構いません。
まず、白のプレイヤーは白の駒を1個任意の空きマスに配置します。
以降、プレイヤーは交互に自色の駒を1または2個任意の空きマスに配置します。
ボードが完全に埋まったらゲーム終了です。
このゲームは何?
Minimizeバリアント
まず、最初に言っておかなければならない点は、このゲームの勝利条件はMinimize(2014)のミゼール(勝利と敗北を反転させたゲーム)であるということです。
さらに、Minimizeは相手の駒を置くことができるので本質的には「相手の駒のみ置くことのできるMinimizeのバリアント」とみなすことができます。サイズが小さいグループを作るには自身と相手両方の駒の配置が重要となるので相手の駒を置くのは自然な発想で、したがって一見するとMinimizeのほうが真に優れたゲームに思えるかもしれません。
ボードを埋めるゲーム
が、実際には片方の色しか配置できないContrapositionでも小さいグループの数をある程度コントロールすることができます。
重要なのはこのゲームはボードが埋まることによってのみゲームが終了すること、したがって全てのマスにはいずれ駒が配置されることにあります。
これはつまり、あるマスに決して駒を置かないようにすれば、そのマスには相手が駒を置くか、あるいは他のマスが全て埋まるようにできるということです。したがって、自身の駒に完全に囲まれた「眼」を複数作っておけばそのいずれかに相手の駒を置くことを強制することができ、したがって相手の小さいグループの数を増やすことができます。Contrapositionは自身の小さいグループを相対的に減らすゲームであるのでそのような手が有効となります。
そして、相手がそれに対抗する手段は、相手も眼を作り、グループ数を相殺させることしかありません。これによってこのゲームはできるだけ多くの眼を作るという陣取り要素を含んだものとなり、十分ゲーム性を持ったものであることが確認できます。
先手有利の相殺
また、Minimizeは先手有利を緩和するためにいわゆる12*プロトコルを用いていますが、Contrapositionの基本ルールにはそれがありません。
これは、基本ルールでは先手が最後に配置するためです。例えば、後手がサイズ1の眼を1個だけ作り、それを埋めなければ先手にサイズ1のグループを作らせることができます。しかし、先手がサイズ1の眼を1個だけ作った場合は後手はそこを埋めないようにすることで先手自身が埋めることになり、後手のサイズ1のグループを作らせることはできません。作らせるためには眼を2個作る必要があります。
これによって先手の優位性は大幅に緩和されていて、追加のバランス調整は不要であると考えています。
12?プロトコル
バリアントの配置ルール(名称はオリジナルです)は通常の12*プロトコルとは異なり、駒を1個だけ置くことを許可します。
先述の通り眼をいくつか作った後はできるだけそこを埋めたくないので、終盤には1個だけ置くという行為が意味を持ちます。
さらに、駒の個数を変動させると、それによって最後に駒を置くプレイヤーが変動します。特に、タイミングを計ればいわゆるカウントゲームの要領で片方のプレイヤーはそうでないプレイヤーが最後に駒を置くことを強制させることができます。これによって有利なプレーヤーが勝利を確定させたり不利なプレイヤーがサイズ1のグループ数をタイに持ち込んだりできるかもしれません。
もちろん、序盤は12*プロトコルと同様であるので先手有利は緩和されています。この配置システムはボードを完全に埋める他のいくつかのルールでも有効であると考えています。
懸念点
タイブレークの予測
上述の通り、サイズ1のグループの数はある程度制御できます。
が、より大きいサイズのグループに関してはよくわかりません。
サイズ1のグループの制御に手いっぱい(それを最優先にしないと負けてしまうので)で、それ以上は全く勝敗の予測が付かないゲームになってしまうかもしれません。
基本的に最大グループカスケードよりも勝敗に関わる駒の数が少なく、にもかかわらずボードが完全に埋まるまで勝敗が決まらないのであれば退屈なゲームになってしまうでしょう。
配置システム
12?プロトコルはこれはこれで興味深く、初手の配置制限(ミラー戦略防止)も不要なので悪くないですが、ゲームプレイは通常の配置システムで十分なような気もします。最も大きな違いは、2マスを同時に埋めることができるのでサイズ2の眼を作ることがあまり有効でなくなってしまうことでしょう。一方で眼自体は作りやすくなっているのでそれほど問題ではないのかもしれませんが。
ゲームデータ
得点は同サイズのグループを相手より多く作った最小のグループのサイズ(存在しない場合はInfinity、Ludiiでは1000000000で定義されているようです)です。これが大きいプレイヤーが勝利となります。
AIはMC-GRAVEが強いです。これの動きを見ればある程度戦略がわかるでしょう。
関連ゲーム
Yoin
Contrapositionのように自駒を1個任意の場所に置くだけで成立する陣取り系ゲームは意外と例が少ないのですが、その一つにYoin(2021)があります。
ややわかりにくいルールなのですが、本質的には
自色のグループの数が少ないプレイヤーが勝利
同数ならばより小さいグループをより多く作ったほうが勝利(Minimizeと等価)
という勝利条件と等価です。
このゲームも相手のグループを制御することが良い戦略となり、具体的には自グループでボードを分割し、それでできた「自陣」をさらに分割することで相手グループになりうる領域を増やすことが基本方針となります。
自陣内の相手のグループが多い、または大きい(小さいグループのほうが優位であることに注意)ことは自陣が大きいことをある程度表しているので、このゲームは陣取りの要素をより強く持っています。
フォーラムでの議論を見ると、このゲームも当初は相手の駒も配置できるようなものであったようです。上記のような考察が有効であった例と言えるでしょう。