バーチャルで男性になりたい。
はじめまして。
VRoidメンズファッション専門店 Dust enのふじさきあくたです。
今回書くのは、バーチャルで「男性」になりたいふじさきの話。
バーチャルで生きる上でリアルの話なんていうのは無粋かもしれないけど、自分が今活動している事は全てここから始まっているのでぽつぽつと書いていきたいと思います。
ふじさきは、三人兄弟の一番上に生まれました。
2つ年下の弟が一人。7つ年下の弟がもう一人。
自分が生まれた二年後には、弟がすぐ近くに居たんですね。
一番最初に生まれた子で、初孫で、ちやほやされながら育った自分にとって大好きなお母さんやお父さん。おじいちゃんおばあちゃんの注目を浴びる弟は最大のライバルでした。
「絶対に!弟には!負けねぇ!!!」って(笑)
どうしてこんな性格に生まれたのかよくわからないんですけど、ものすごく負けず嫌いだったのを覚えています。
なにかというと「弟はできるのに…」と比べられる一番上。
「弟に優しくしてあげなさい」と言われる一番上。
大人になった今は二人の弟達とはそれなりに仲が良いですが、当時は「絶対負けねぇーーーうるせぇぇえーーーー!!!」って思っていました。
今となってはただの乱暴者で、自慢できることでは全くないんですけど…弟が歯向かってきたら物理で黙らせていました。
ちょっと目を離すと殴り合いの喧嘩に発展し、弟を泣かし、拗ねて押し入れに引きこもる自分はさぞかし両親の悩みの種だったでしょうね…。
そして物心ついた頃、仲良しになったのは近所に住んでいる4つくらい上のお兄ちゃん。
お兄ちゃんと、お兄ちゃんの友達と、弟と一緒に戦いごっこをしたり、近所を探検したり、チャリンコで町内を爆走しながらドロケイしたり、集まってテレビゲームをしたりしていました。
公園に行って虫取りをしたり、木登りをしたり、ちょっとした悪戯をして逃げ回ったりと、とても楽しい幼少期を過ごしていたんです。
小学校に上がると、世界は一変してしまいました。
いつものように弟と、近所の駄菓子屋に行ったんです。
そこには奥の部屋にアーケードゲームが置いてあって、男子の溜まり場になっていました。
近所のお兄ちゃんがゲームをしているのを横から見学しようと、入ろうとするとなぜか自分だけ止められるんですよ。
「あなたは女の子だからだめ。帰りなさい」
って。
学校で「うち、ミニ四駆のコースあるから持ってる奴は集合な!」って招集がかかって、自分で組み立てたミニ四駆を片手に友達の家に行くと。
「お前はだめだよ。だって女じゃん」
って、入れてもらえなかったり。
弟と同じように生きていた自分は、急に別の世界に放り出されてしまいました。
多分、その頃からです。スカートを一切履かなくなったのは。
お母さんが選んでくれた赤やピンクが入った服や、フリルがついていたり、かわいいキャラクターのついた服が大嫌いになったのは。
多分、子供なりの抵抗だったのでしょう。
「なんで同じように生きているだけなのに、自分だけちがうの?」って。
思春期の頃は、自分は「性同一障害」っていう病気(当時はまだ病気という扱いでした)なんじゃないか?って恐怖とか。
自分はこのままで居たいのに、どんどん別の方向に変わってしまう肉体とか。
カッコいいもの、強そうなもの、青やモノトーンやシルバーといった色。機械や車、カメラ、戦闘、ロボット、プラモデル、パソコン、ヤンキー漫画、ハードボイルド、煙草の仕草…。
自分が「好き」なものが「異常だ」と言われる悲しさ。
可愛くて、ふりふりで、やわらかくて、キラキラしたものを「好きになりなさい。女の子なんだから」と。
世間の目を気にしてそれに合わせて自分を変えなくてはならない辛さ。
ただ「自分」でありたいだけなのに、時には性的な目で見られ、強制的に
「女性」だと思わされるような出来事。
優しく、可愛くなんてなりたくない。強く、かっこよくなりたい。
世界から無意識の間に押し付けられる理想の女性像と、自分にとっての憧れのギャップ。
そういったものに、時にはぐちゃぐちゃになりながら、なんとか折り合いをつけて大人になりました。
結果的に、リアルの自分は肉体的な性別を変えることはなく、社会にある程度適応しながら(時には女性であること、そう見られることを受け入れながら)、プライベートや自分の時間は昔と変わらずに過ごすという道を選びました。
そして、時が過ぎ……2019年頃にVRの世界に足を踏み入れたのです。
「どんな体にも、見た目にもなれる」世界に。
しかし当時のVRは圧倒的に「女性になれる場所」で、自分の理想とは真逆だったんですよね。
理論上はどんな見た目にもなれるけれど、理想の身体を手にするにはかなりの努力(Unityとかblenderとか)をしなければならなかった。
そして「男性になる」為の先駆者やコミュニティを探すには、まだまだ情報が少なかった。
現実世界で山ほど「女の子になる」ことを否定し続けた自分にとって、「kawaiiが正義!」とされているVR界隈は茨の道でした。
あぁ、またなのかーーー……と。
2019年には自分で体を作れるVRoidでさえ、先にリリースされた女性VRoidより、男性VRoidの方が圧倒的に服の数が少なかった。
しかしどんなにその道が正しかろうと、生まれてから今の今まで抵抗に抵抗を続けてきた自分にとって、今更「可愛い女の子」になるという選択肢は無いのです。
今、道がないのなら、自分でその道を切り開くしかない。
自分で人柱になるしかない。
好きなもの、自分が良いと思ったものを恥ずかしげもなく、推していくしかない。そして同じ志の人に見つけてもらうしかない。
「誰か作ってくれないかなぁ」と待つのは簡単な事だけど。(疲れていると自分もそう思うこともありますが…)
そんな考えから学生時代からほとんど絵なんて描いた事がなかったふじさきはVRoidメンズファッション専門店を作りました。
【VRoidメンズファッション専門店 Dust en】
https://kzakt-fujisak.booth.pm/
もちろん、自分がこうして「男性になりたい」と思っているのと同じように、「女の子になりたい」と思っている人が沢山いるでしょうから、それについては否定はしませんし、素敵な事だと思います。
ただ現状、女の子になりたい人が女の子になるには土台が出来上がっていると思いますが、男の子になりたい人が男の子になるにはまだ少しハードルが高いのかなという気がしています。(2019年に比べれば大分楽になってきましたが)
もし自分と同じような境遇の人がもしいるとするならば。
「男性になりたいけどVRの身体がない」とか「体はあるけど、服が少ない」といった悩みを少しでも解決してあげられたらいいなと思っています。
好きを好きだと言っていい。
せめて仮想空間の中くらいは、ただの自分でありたいですね。
余談ですが、自分はVR空間よりも先にVRoidが先だったので茨の道突き進んでしまいましたけども、男性アバターを普及させようと頑張っている方が沢山いらっしゃいます。
VRCHAT内でも最近はよく男性アバターを見かける事があり、嬉しいです。
ひとりじゃないんだな。自分だけじゃないんだな。と。
どこかで迷っているはぐれバーチャルメンズが居たら、手を取って行きたいですね。
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